READY TO RACEを標榜してきたKTMから、小排気量の公道向けオフロードバイクが新たにリリース。同社が得意とする競技用エンデューロモデルとのコンセプトの違いは明確だ
KTMにとっての新しいカテゴリー
ひと口に「オフロードバイク」と言うがその中身は二分される。まず、市場的にも売れ線となる公道走行向けのトレールバイク(ホンダCRF250LやカワサキKLX230)がある。そして、競技志向のコアなユーザー層向けにホンダCRF250RやヤマハYZ250FXといったレーサーモデルがある、といった認識で間違いないだろう。そんな中、オフロードバイク界の巨人KTMは、これまでかたくなにトレールモデルと呼ばれるカテゴリーのバイクを発売してこなかった。小排気量のオフロードバイクは競技用のモトクロッサーか、エンデューロマシンのみ。これは本場欧州でも珍しいことで、Betaやシェルコなども4スト125のA1免許向けトレールバイクをガンガン売りさばいている。
今回、満を持して登場したのが、KTM初の小排気量オフロードバイク390 ENDURO Rと125 ENDURO Rである(海外発表)。DUKEシリーズ同様にLC4cエンジンを搭載していることからも、いかに公道に適したモデルかがみてとれる。なお、一応KTMからは690 ENDURO Rという大排気量オフロードマシンが発売されているのだが、こちらはビッグオフと言って差し支えないだろう。つまり、今回の390と125は実質的にKTM初のトレールバイク、と言えるんじゃないだろうか。
KTM
125 ENDURO R
さて実車を見てみると、DUKEシリーズ譲りのGen 3プラットフォームをベースに開発された2ピーススチールトレリスフレームは、オフロード走行に最適化された専用設計とのこと。フロントは21インチ、リアは18インチと本格的な足回りを備えている。サスペンションにはお決まりのWP APEXが奢られているが、KTMのバイクには似つかわしくないタンデムステップが改めて「これはトレールバイクなんだ」と思わせてくれる。
前述したLC4cエンジンはシリンダーヘッドをオフロード向けに軽量化するこだわりようで、エアボックスやギヤまわりもオフロードに最適化した専用パーツを開発。電子制御も充実しているため、オフロードモードとストリートモードで特性を切り替えることができる。この辺は競技用エンデュランサーとはっきり違う点だろう。オフロードモードはトラクションしやすいというのではなく、よりスライドさせやすく、フロントを上げやすいアグレッシブなモードとのことで、このあたりは実にKTMらしい。ABSを任意でカットできるところも、オフに明るいKTMらしい機能である。
ストリートファイターのDUKEをベースとしたフレームだけあって、その姿から少し重量感があるのは否めない。Off1では期待を込めてトレールバイクと表現してみたものの、どちらかというとカワサキKLX230LとスズキV-STROM SXの中間くらいのセグメントなのでは無いかと推察する。軽量スリムなKLX230ならややこしい山道でも入っていく気にはなるけれど、V-STROM SXではできないことはないけれど気が進まない。反面、KLX230で高速を使って1000kmを越えるツーリングに出かけるのは正直億劫に感じるが、V-STROM SXなら楽勝だ。新しい390/125 ENDURO Rはその中間的な存在として、どちらのシチュエーションでも使いやすいバイクになるのではないか。
シュラウドなど樹脂パーツの面積が大きく、オフロードで転倒しまくって傷ついたとしても、そこまで気にはならないかもしれないなと個人的には感じた。ロードゆずりのシャシーということもあり、フルサイズの車格より少し小さめかつ重心も低いため、いごったり引きずったりしても、実はそこまで辛くはないのではないかと思った。ごつめのスキッドプレートに守られてはいるものの、ダウンマフラーはできればアップマフラーのオプションを用意してもらいたいところだ。
なお、KTMらしくPR向けのライディングカットは思い切りコアなオフロードイメージ。ハードエンデューロの世界チャンピオンであるマニュアル・リッテンビヒラーがこれでもかとアクションを決めまくっている。ストリートを所狭しと駆け回るエキサイティングなイメージで売り出すDUKEと同じ手法だが、同じことができるかどうかは、もちろん腕次第だ。