2026年のダカールラリーにチャレンジを宣言している藤原慎也は、そのトレーニングとしてアフリカエコレースに参戦。休息日にインタビューを試みた

画像: 藤原慎也アフリカの“ダカール”へ Part2 「もはや、慎也は完走目的のライダーじゃない」

待ち望んでいた“苦戦”

昨年のモロッコラリーでは、藤原慎也のテクニックやスピードがラリーに適応してきたことで、好成績を上げることができた。ラリーライダーほぼ全員を襲った食中毒を除けば、うまくコトが運びすぎていた感すらある。藤原はレース後に「国際ラリーで活躍してきた先輩方の持つ、野性的な勘を身につけたい。そのためには、もっとラリーに揉まれ、もっとトラブルを乗り越える必要があると思います。アフリカエコレース(AER)では、トラブルが起きた方が嬉しい」と語った。

もちろん意識したことではないのだが、このAERで藤原は多くのトラブルに見舞われている。そもそもスタート地点に発つ前から、自前で準備していたGASGASの新車に乗ることがかなわず、イタリアのチームソラリスにバイクもサポートもお世話になることになった。レンタルしたバイクは、見た感じ2年落ちくらいだろうか。単に2年落ちの中古バイクというのではなく、ラリーに使い回された車体だ。「フレームも使い込まれていて、車体が撚れるのがわかる。事前にやるだけのことはやったけど、かなりしんどいレースになりました」と藤原は言う。

画像1: 待ち望んでいた“苦戦”

ステージ1では、オイル系のトラブルに見舞われた兄を待つため、深夜2時半までビバークに帰れなかった。さらに、不可解なペナルティを受けるなど、トラブル続きのレース展開となっている。藤原は、シートポケットに家族からもらったお守りを貼っていたのだが、チェックポイントのおじさんが、そこにハンコを押してしまったのだそうだ。「お守りにハンコを押されて、『うわっ!』って反応したら、『これでOKだから』って言われて。『いやいや、おかしいでしょ』って言っていたら『ゴー、ゴー!』って現地語でまくし立てられたんで、出発したんですが……」これが元になって、ペナルティがついているようで、現在解決に向け奔走しているとのことだ。

ステージ3ではハイサイドで転倒、意識を失うアクシデントに見舞われた。「コース上で気を失っていたので誰も助けてくれなかったんですが、僕が意識を取り戻してバイクを起こそうとした頃に、ソラリスの速いメンバーが来て、『大丈夫か?』と聞いてくれました」。そのライダーはすぐに走り去ってしまったというが、「その人たちは僕の20分から30分後ぐらいの後ろだったんです。それぐらい差をつけて走っていたんです」と藤原は語る。つまり、藤原は20〜30分間、意識を失ったままコース上に横たわっていたことになる。「転倒した場所が砂地で良かったです。ダートだったらヤバかったと思います」

難しいナビゲーションにも苦戦を強いられている。「ステージ4は7番手スタートで、前走者の跡がついていないのでミスコースしやすいんです」トップグループのライダーから「お前のほうが速いから前に行け」と言われたものの、ナビゲーションが難しいため断念し、一緒に走っていたという。挙げ句の果てには、件のレンタルバイクが前半早くも悲鳴を上げた。「ステアリングダンパーの不調でチャタリングがひどく、リアサスペンションも減衰が効かなくなってしまった。戻り側のオイルの通路が詰まっていたようです。スピードを出さないで走れば楽だと思いがちですが、実際はそんなことは無くて、ギャップを拾ってしまったり使うべき集中力が違ったりと、かえって疲れましたよ」と藤原。

画像2: 待ち望んでいた“苦戦”

ただし「速いライダーに追いつき、彼らと同じペースで走れたことで、自分の体力の残量を把握する感覚が掴めた。ペースを落としていても、以前より速いスピードで走れていると感じました。ステージ2と3は無理に飛ばさずに、疲れない程度に走っていたのが良かったのだと思います。自分の中では無理に飛ばしているつもりはなかったんですけど、順調に疲れない程度に走っていて良かったです」と、この短く長いラリーのうちに、様々な成長をしている模様だ。

シングルフィニッシュを連発、実力は思っていた以上に上がっていた

度重なるトラブルに見舞われながらも、藤原は目覚ましい速さを見せる。ステージ1ではペナルティがつかなければ5位。ステージ4では、55番手スタートながら40人以上を抜き去り、7位の快挙。「みんなから『めちゃくちゃ速い』と言われました。ソラリスのチームメイトからも『ルーキークラスで優勝できる』と褒められましたよ」と藤原。

画像1: シングルフィニッシュを連発、実力は思っていた以上に上がっていた

藤原の活躍に、マネージャーの杉村晋吾氏(日本人唯一のAER完走者)も驚いているようだ。「慎也の成長スピードは想像以上だ。ダカールラリーには完走だけを目的に出場するライダーが多いが、藤原はそのレベルを超えている」と杉村氏。ダカールラリーを見据え、アフリカエコレースではあえてトラブルを経験させる狙いがあったが、藤原の成長はそれを上回るものだった。「色々な経験をしてほしいと思っていた。ナビゲーションの難しさ、転倒の危険性、疲れないマシンの作り方の重要性など、多くのことを学んでいるようだ」と杉村氏は評価する。ダカールラリーに向け、チーム体制の見直しも検討中だという。「慎也には、ダカールを走ってきた日本人の先輩達を超えるポテンシャルがあると感じている。世界のレベルが上がっているので、状況は昔とは違う。慎也はもうファクトリーライダーのセカンドグループぐらいの実力を持っているはず」

藤原自身もダカールラリーへの意識は変化している。「とことこ走って無事に完走できればいいという状況では無くなってきていると思いますね。ダカールラリーでは成績を狙いにいきたい」という強い意志へと変化しているようだ。「ただ確かに成績は欲しいとは思うんですが、経験不足の中で順位を求めすぎるとリスクが大きくなってしまうので、難しいですね」

画像2: シングルフィニッシュを連発、実力は思っていた以上に上がっていた

杉村氏はダカールラリーにおいて「『抑えて行け。』というチームオーダーは出したくない。今は『安全に走って怪我をするな』と慎也に言っているが、ダカールでは結果を出してほしいと思っている」と明言。「元々は、自分もダカールラリーにエントリーしてウォーターボーイ(※背後を走ってサポートする役)をするつもりだったんだけど、もう慎也はそういうレベルじゃない。自分が走っても邪魔をするだけだから、このAERが一緒に走るのは最後だよって慎也にも伝えてあるんです。ダカールで俺ができるのは、サポートカーを運転することくらいだろうね」と笑う。

レースはここから後半に入る。サスペンションも直してマシンは万全の状況。さらなる飛躍を見せるか否か。

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