藤原慎也は2025年1月開催のアフリカ・エコレース(Africa Eco Race)に参戦するため、現在イタリアで事前準備を進めている。今回は、その様子をインタビューでお届けする

アフリカ・エコレースとは? ダカール・ラリーとの違い、そしてその難しさ

1978年に始まったダカール・ラリーはその後、当初持っていた冒険的性質から離れ、年々競技としての高みを目指してきた。現在はFIMのラリーレイド世界選手権に組み込まれ、サウジアラビアで開催されるようになっており、「ダカール」という言葉はラリー精神を象徴した記号として使われている。しかし、アフリカを舞台としたかつてのダカール・ラリーを知るラリーファンの中には、原点回帰を望む声も少なくない。そうした人々にとって、アフリカ・エコレースは特別な存在と言えるだろう。ダカール・ラリーの原点であるパリダカの冒険スピリットを受け継ぎ、2009年にスタートしたこのレースは、モナコを出発し、モロッコ、モーリタニア、セネガルとアフリカ大陸を縦断、総走行距離6000kmを超える過酷なラリーレイドである。名前の通り、参加者には環境への配慮や持続可能性についての意識が求められるが、これは特に燃費競争を意味しない。本家ダカールよりも参加車両の自由度が高いにも関わらず、ファクトリーチームが参戦しておらず、エントラントのほとんどがプライベーターであることからも純粋なレースではないことがわかる。かつてのパリダカと同じように競技車輌はバラエティに富み、競技性よりも冒険性を重視する姿勢は、かつてのダカール・ラリーを知る者にとっては懐かしく、そして魅力的な要素で満載となっている。

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藤原慎也「パリダカを知る世代にとって、ダカールのルートは憧れでした。今回はバイク全70台中、7台が日本人になります。これって結構すごいことですよね。かつてバハ1000に日本人が大挙して参戦していたときのように、このアフリカ・エコレースに憧れて欲しいなと思っています。ダカール・ラリーに比べコースレイアウト自体は簡単だと聞いていますが、ロードマップが複雑でウェイポイントが少ないため、ナビゲーション能力が重要となります。ロードマップを読む力は必須です」

長丁場である点もダカール・ラリーに近く、モロッコラリーで得た難易度の高いラリーとはまた違った経験を積むことができると言える。「だから、トラブルは大歓迎なんですよ。池町(佳生)さんとか、野生の勘みたいなものが凄いじゃないですか。ああいうラリーライダーとしての能力を身につけるには、実戦で多くのトラブルに揉まれなくてはね。モロッコラリーでは、精神面と肉体面のコントロールが難しかった場面もありました。他者の動向に影響されたり、環境や食事で体調管理が難しくなったりしました。モーリタニアはさらに過酷な環境だと聞いているので、食中毒対策としてフリーズドライ食品や調味料なども日本から持ち込んでいます」

イタリアでの事前準備:レンタル車両の整備から異文化コミュニケーションまで

現在、イタリア・ジェノバでアフリカ・エコレースの準備をしている藤原選手。今回の参戦はラリーチームとして名門のSOLARISのレンタル車両を利用するため、いつもとは事情が異なるようだ。

「実は今回、兄貴(藤原由樹)もラリーに初挑戦するんですよ! それで、兄貴のバイクも見たり、みんなで整備を手伝ってたんですが、これがまたトラブル続きで…(笑)。テストライドに行ったらエンジンがかからなくなったり、ギアが入らなくなったり、ブレーキが効かなくなったり……ここ数日間はずっと整備してました。ほんと、(アフリカエコラリーの)6000km走る前にトラブル出尽くしてくれって感じです(笑)。本番でトラブルに見舞われたら、それこそ大変ですからね」

画像: イタリアでの事前準備:レンタル車両の整備から異文化コミュニケーションまで

SOLARISでの車両整備の様子を伺うと、「今回はレンタル車両での参加なので、そんなに良いバイクを期待できるわけじゃないんですけど、だからこそ入念に準備するってのが重要ですよね。リンク周り、電装系、オイル、油圧関係……もう全部バラして組み直すくらいの勢いでチェックと調整を繰り返しました。5台の車両をチェックした結果、フレームの損傷、オイル関係の銅ワッシャーの劣化、配線の劣化など、色々見つかったんですよ。油圧系統のホースがひび割れていたり、配線が断線寸前だったり……。グリスアップとか基本的な整備はちゃんとされている感じだったんですけど、やっぱり古い車両なので、どうしても劣化している部分があるんですよね」と、整備の苦労を語ってくれた。

さらに、アフリカ・エコレースのスタート地点はモナコだが、車検はイタリア国境に近いフランス側の小さな町、モルティゲーラで行われる。「モナコとモルティゲーラは約30km、車で1時間弱かかるんですよ。しかも、車検会場とセレモニー会場が離れてるせいで、28日にモルティゲーラで車検を受けた後、モナコに行ってセレモニーに出て、またモルティゲーラに戻って1泊しないといけない。次の日の朝からスタートなのに……これ、結構大変じゃないですか? しかも、29日のスタート後はモナコからマルセイユまで自走して、そこからフェリーに乗ってアフリカ大陸に渡るんですね。今回は5人でチームを組んで参加するんですが、他のメンバーもちゃんと計画通りに動けるように、細かく連絡を取り合っています」とのこと。

画像: このたびの藤原車。ダカールプロジェクトをサポートする、松尾製作所のマツオちゃんを背負ったグラフィック

このたびの藤原車。ダカールプロジェクトをサポートする、松尾製作所のマツオちゃんを背負ったグラフィック

イタリアでのコミュニケーションにも苦労しているようだ。「言葉の壁、本当に高いんですよ。『YES』か『NO』で答えてほしいって頼んでも『Perfect』しか返ってこないんです(笑)。ギアバッグをトランスポーターに積むかどうか聞いても『Perfect, Good bag』って返ってくるし……。先日、SOLARISのメカニックにバイクの部品の取り付け位置を確認したくて、『この部品、ここに取り付けて大丈夫?』って聞いたんです。そしたら『パーフェクト!』って満面の笑みで返されて……。相手方に悪気はないんでしょうけど『いや、パーフェクトじゃなくて、大丈夫かどうかを聞いてるんだけど……』って心の中でツッコミましたよ(笑)。このダカールプロジェクトでサポートしてもらっている杉村さん(編注:ビバーク大阪の代表であり、ラリー経験が豊富。過去のパリダカや、アフリカ・エコレース参戦経験を持つ)は、そういう異文化コミュニケーションの難しさも熟知しているので、いつも助けてもらってます。的確なアドバイスをくれるので、本当に頼りになる存在ですね」

藤原にとって、アフリカ・エコレースは2026ダカール・ラリー参戦に向けた重要なステップ。「アフリカ・エコレースは、ダカールを目指すライダーにとって最高のトレーニングの場。上位を目指して戦いますが、何よりダカールを想定した経験を積むことが重要です。長丁場を走りきる体力、精神力、トラブルシューティング能力、そして異文化コミュニケーション能力。これらの要素を磨き、ダカール・ラリー完走という目標に近づきたいと思っています。応援よろしくお願いします!  モロッコ、モーリタニア、セネガルの雄大な景色の中、自分の限界に挑戦し、新たな自分を発見できる冒険の旅。ぜひ皆さんも注目してください!」

アフリカ・エコレース2025 レーススケジュール

画像: アフリカ・エコレース2025 レーススケジュール

2024/12/31 Stage 1:モロッコ タンジール~タルダ 総距離755km(SS 47km)
 タンジール到着後すぐにレース開始。最初の難関はケニトラ近郊の曲がりくねったコース。アトラス山脈、杉林、高原などを経て、新年を祝うタルダに到着。

2025/01/01 Stage 2:モロッコ タルダ~タグニテ 総距離357km(SS 319km)
 砂漠の高速コースと険しいコースが混在するタグニテへ。砂、石、砂丘、ナビゲーションなど、アフリカ・エコレースの哲学を体感するステージ。

2025/01/02 Stage 3:モロッコ タグニテ~トゥイズギ 総距離547km(SS 453km)
 トゥイズギオアシスを目指す長距離ステージ。シェガガ渓谷近くの砂地、イリッキの平原、岩だらけの道など、様々な地形を走破する。

2025/01/03 Stage 4:モロッコ トゥイズギ~ラユーン 総距離507km(SS 495km)
 美しい風景が広がるラユーンを目指す。山岳地帯から広大な砂漠へと変化する地形でのスリリングな運転とナビゲーションが楽しめる。

2025/01/04 Stage 5:西サハラ ラユーン~ダクラ 総距離633km(SS 435km)
 モロッコ最終ステージ。砂丘や高速の砂漠地帯を走行し、ダクラで休息日を迎える。

2025/01/05 西サハラ 休息日

2025/01/06 Stage 6:西サハラ ダクラ~ベニチャブ 総距離704km(SS 172km)
 モーリタニアに入国。岩場と砂地が交互に現れるコースと、オフロードでのナビゲーションが試される。

2025/01/07 Stage 7:モーリタニア ベニチャブ~デューン 総距離468km(SS 392km)
 アタール近郊のアモジャールを目指す過酷なステージ。砂、砂丘、厳しいナビゲーション、そして暑さとの戦い。世界最長の列車が走る線路沿いを走行する場面も。

2025/01/08 Stage 8:モーリタニア デューン(ループ1) 総距離356km(SS 351km)
 アモジャール発着のループステージ。アドラー高原、ワダネの「砂漠の目」などを巡る。ヒストリックカテゴリーには「レジェンドステージ」が新設。

2025/01/09 Stage 9:モーリタニア デューン(ループ2) 総距離447km(SS 400km)
 アモジャール発着のループステージ。アフリカ・エコレースの共同創設者である故ルネ・メッチェ氏に敬意を表し、「ルネ」と命名。アドラル地方のアザラネ、シンゲッティなどを巡り、美しい風景と感動的な瞬間が期待される。

2025/01/10 Stage 10:モーリタニア デューン~ヌアクショット 総距離460km(SS 410km)
 広範囲にわたるナビゲーションと砂地が特徴。砂丘や難しい峠を越え、モーリタニア最後のステージとなる。

2025/01/11 Stage 11:セネガル ヌアクショット~ンパル 総距離419km(SS 75km)
 セネガルに入国。サヘルのサバンナを走るユニークなステージ。バオバブとアカシアの間を縫うサファリのような体験と、モーリタニアとは異なるナビゲーションが楽しめる。このステージが最終順位を左右する可能性も。

2025/01/12 Stage 12:セネガル ンプパル~ダカール 総距離250km(SS 23km)
 ビーチでのグループスタート後、23kmの「栄光のラン」へ。ラック・ローズの海岸でゴールを迎える。

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