これまで660ccが最低排気量だったトライアンフから、400ccのモデルが2つ同時にリリースされた。それがSPEED400とSCRAMBLER400 Xだ。価格も60〜70万円台と挑戦的な設定がされ、日本だけでなく世界中のバイクファンから注目を集めている

先日トライアンフ・SCRAMBLER1200 XE/Xのインプレッションをお届けしたばかりだが、続いてSCRAMBLERシリーズの末弟にあたるSCRAMBLER400 Xがリリースされ、さっそく試乗する機会を得た。

普通自動二輪免許で乗れる
トライアンフ・スクランブラー

画像: TRIUMPH SCRAMBLER400 X ¥789,000(税込) カラー:Matt Khaki Green/FusionWhite、Carnival Red/Phantom Black、Phantom Black/Silver Ice

TRIUMPH
SCRAMBLER400 X
¥789,000(税込)
カラー:Matt Khaki Green/FusionWhite、Carnival Red/Phantom Black、Phantom Black/Silver Ice

SCRAMBLER1200ではオフロード性能の高い足長モデル「XE」と、足つき性が良く誰でも扱える「X」がラインナップされているが、このSCRAMBLER400 Xも車名の末尾が「X」となっていることからわかる通り、ライダーを選ばないオン/オフ両用モデルと言える。

気になるシート高は835mmとなっていて、身長175cmの編集部・伊井で両足のつま先がしっかり地面に着き、安心して乗ることができた。なお、身長159cmの伊澤はつま先がツンツン。お尻をずらせば片足をしっかり地面に着くことができた。車体が179kgと軽量なため、女性や低身長ライダーでもさほど抵抗なく乗ることができるのではないだろうか。

先日試乗したばかりのSCRAMBLER1200 Xと比較してみても、見劣りする印象は全くない。価格は安く抑えられているものの、これは間違いなくトライアンフのモーターサイクルだ。

軽快なエンジン、軽量な車体が
自由なライディングを支える

画像1: 軽快なエンジン、軽量な車体が 自由なライディングを支える

まず注目したいのはTRシリーズエンジンと名付けられた398cc水冷単気筒DOHC4バルブエンジンだ。ボア×ストロークは89.0×64.0mmのショートストロークで、最高出力は40PS/8,000rpm、最大トルクは37.5N・m/6,500rpmとなっている。水冷エンジンではあるものの、シリンダーヘッドにはトライアンフらしさを感じさせるフィンを模した造形が施されている。

水冷単気筒の400ccといえば国内で販売されているライバルモデルはハスクバーナ・モーターサイクルズのスヴァルトピレン401かロイヤルエンフィールドのHIMALAYAN450あたりになると思うが、そのどちらと比べても見劣りしないパワーとトルクを持ち合わせている。もちろんしっかり6速までギヤを備えている点も高評価だ。

画像2: 軽快なエンジン、軽量な車体が 自由なライディングを支える

エンジンをかけた途端にシングルらしい軽快かつ小気味良い排気音に耳を奪われた。そうそう、これだよこれ。スクランブラーというとこれまで2気筒の大排気量モデルばかりだったため、重低音を響かせる印象が強いのだが、SCRAMBLER400 Xの排気音は実に軽やかだ。こういう音のバイクは、ついついオフロードに入りたくなる。

今回は都心部での試乗だったため、ダートはもちろんなく、あまり高回転まで使用するような試乗はできなかったのだが、実に軽やかに回るエンジン特性と、信号待ちから3速のままリスタートできる低速トルクを体感することができた。

トルクアシストクラッチを搭載しており、クラッチレバーのフィーリングもすごく軽い。たまにクラッチレバーが重く、わずかな信号待ちでもニュートラルに入れたくなるモデルがあるが、そういうモデルに限ってニュートラルギアに入りにくかったりする。都内のように信号の多い場所を走っていると、そのことにばかり気を取られてしまい、次第にストレスを感じるようになってしまう。その点、このSCRAMBLER400 Xなら、ちょっとくらいの待ち時間はクラッチレバーを握ったままでも全く手が疲れないし、ニュートラルにもすんなり入るため、ノンストレスだ。

画像3: 軽快なエンジン、軽量な車体が 自由なライディングを支える

コーナーで寝かせた時も実に素直なハンドリング特性で、ステアリングやヘッドの重さも感じない。前後17インチのSPEED400と乗り比べるとフロント19インチの分だけコーナリングのスポーツ性能は劣るが、タイヤサイズはワンサイズ細いもの(前100/90-19、後140/80-17)を採用しており、違和感のない仕上がりだ。

また、ホイールトラベル(サスペンションのストローク量)はSPEED400が140/130mm(前/後)に対し前後ともに150mm確保され、サスペンションの懐の深さを実現すると共に重心を高くすることでオフロードの走破性を向上させている。

画像4: 軽快なエンジン、軽量な車体が 自由なライディングを支える

その他、車体構成もSPEED400とは大きく異なっている。ライディングポジションの自由度を確保するためにハンドルバーは87mm長い901mmを採用、シート高は45mm高い835mmとなっている。他にもホイールベースは41mm長く1,418mm、キャスター角も1.4度少ない23.2度、トレールは6mm長い108mmとなっているなど、ライディングに関わる重要なポイントにしっかり差別化が図られている点は、さすがトライアンフと言えるだろう。

さらにSPEED400ではトラクション・コントロールのみカットできるのだが、SCRAMBLER400 XではリアのABSとトラクション・コントロールをカットすることができ、ソフト面でも差別化が行われている。

画像5: 軽快なエンジン、軽量な車体が 自由なライディングを支える

また、購入時からハンドガード、エンジンガード、ラジエターガード、ヘッドライトガードなど、オフロード走行を可能とする装備は一通り揃っている。他にもトルクアシストクラッチや、デイタイムランニングライト、USB-Cソケット、オプション設定のグリップヒーターなど豪華な装備が設定されてこの価格というのは、とても大きい。昨今、高騰の一途を辿っている国産メーカーの400ccモデルとほとんど同じか、それ以下でトライアンフの最新モデルが新車で購入できてしまうことになるのだ。

国内外のトライアンフを取り巻く環境

突然だが、最近トライアンフのバイクを街中やツーリング先で見かけることが以前よりも多くなっている、と感じたことはないだろうか? 実は2019年からの5年間でトライアンフの日本での年間販売台数は倍増しており、2023年には4,108台を記録しているのだ。これは近年発売したトライデント660やタイガー1200、2023年春に発売したストリート・トリプル765やボンネビル・ステルス・エディションなどが高く評価されている点が影響しているだろう。

画像: 国内外のトライアンフを取り巻く環境

そんなトライアンフは2020年にインド二輪生産数第2位(世界3位。なおインド第1位は今年のダカール・ラリーで総合2位を獲得したヒーローだ)を誇るバイクメーカーであるバジャージ・オートとグローバル・パートナーシップ協定を締結しており、今回発売されたSCRAMBLER400 X/SPEED400の生産は、そのバジャージ・オートで行っている。とはいえ完全新設計の398ccエンジンの設計はイギリス・ヒンクレーの工場で行われており、フレームの設計や全体的なデザイン、スペックの設定もトライアンフが担当。細かいディティール部分の開発もトライアンフとバジャージが共同で行っている。

なおアジア圏での生産はなにもトライアンフに限った話ではなく、ハーレーやKTMなども生産地をアジアに移管しつつあり、現在の二輪界ではごく当たり前の手法となっている。これはここ10年間でインドをはじめとするアジアの機械加工技術が大幅にレベルアップしていることの証明とも言えるだろう。

いずれにしてもこの400ccモデルの発売で、日本におけるトライアンフの販売台数がますます加速することは間違いないだろう。

また、今回のリリースはSCRAMBLER400 XとSPEED400だけだったが、TRIUMPHの400cc市場への進出は加速していくことだろう。となるとアドベンチャーモデルのTIGER400の発表すら、時間の問題と言えるのかもしれない……!

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