今月発表されたHondaのCRエレクトリック初参戦。全日本モトクロスRd.8関東大会で、トレイ・カナードの手によってデビューする。今回は前日予選日の所感をレポートする
CRFとは似て非なる車体
明日、10月29日に開催される全日本モトクロスRd.8関東大会にて、電動モトクロッサーのHonda CRエレクトリックが走る。ライダーはAMAのレジェンドであるトレイ・カナード、クラスは最高峰のIA1だ。この布陣、技術をお披露目するというよりは、電動という新たな武器でレースに勝ちに来ているのだと深読みしたい。
予選日の本日、Hondaのエレクトリックブースは基本的に取材お断り。展示車が1台用意されてはいるが、レース車の移動には車体が見えないようにカバーをかけ、機密を守る姿勢を見せた。車体右側から開発陣とマシンとのカットを、Hondaの広報用に撮影するタイミングでプレスにも撮影が許可されたという次第である。
あらためて車体を見てみよう。フレームは一見CRF450Rとほとんど同じに見えるのだが、よくみるとあらゆる箇所が削り出しで成形されており、一品ものであることがわかる。また、似ているだけでほとんどの部材が太く、リブなどで強度を上げていることがうかがえるものだ。特にピボットプレートの厚さは2倍ほどに見え、電動ならではの重量をしっかり受け止める頑強な仕上がりになっているのではないかと推察される。
初期型が発表された時のインタビューから想像するに、モーター前側の黒い箱がバッテリー。モーターやギヤ(どのような構造で、減速をおこなっているのかすら不明だが、エンジン車のドライブギヤ位置から出力している限り、ギヤを介しているのは間違いのないところだろう)はバッテリーの後ろ。
車体左側からは冷却水を通すホースがラジエターへ向かっている。ラジエターはエンジンのそれより遙かに小さく、1/4ほどの面積だ。おそらく沸騰するほどの熱量はないのか、圧力を逃がすためのラジエターキャップは見えない。
予選は5位、電動ならではの課題も残されているように思える
電動モーターは低回転のトルクがすごい、という話を聞いたことがある人も多いだろう。このモトクロスでとても有利なメリットを持つモーターも、高回転の伸び感が弱いというデメリットを持っている。ゼロ回転から最大トルクを発生し、その後トルクは落ちていく一方だからだ。
さて、土曜のカナードの走行は5位であった。スタートは持ち前の技術で好位置につけ、トップを走るジェイ・ウィルソンの背後にぴったりつける。データで可視化できないので大変恐縮だが、カナードが速かったセクションはリズムセクションやコーナーの出口だ。トルクの太さとモーターの特性を活かしてぐいぐい車速が伸びる。マディコンディションで負荷が高い路面も苦にしている様子はなあった。ところが2コーナー以降のスピードの高いセクションでパスされることが多く、高速域の伸び感がもう少し欲しいようにも見えたのも事実。また、サスペンションや車体の動き、フレームの太さを見る限り、エンジン車より重さがあるのは拭えない印象。勝手な推測だが、125kg近くはあるのではないかと考える。得手不得手がはっきりしており、ライバル達にとっても対応策はありそうな気配だ。
とは言ってもリズムセクションで見せたスムーズさや、BMX的な動きは非常にキレイでスピードに乗るのが早く、コースがしっかり攻略できればカナードがウィルソンと好勝負できそうであることはわかる。明日はおそらくコンディションもだいぶ回復するはず。IA1決勝が非常に楽しみだ。