全日本モトクロス選手権最高峰のIA1クラスでゼッケン3をつける能塚智寛は、自他共に認める大の乗り物好き。そんな能塚が2スト125に乗りたくなった……という

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2スト125をずーーーーっと全開で走らせる能塚智寛のライディング、ぜひご堪能あれ!

大の乗り物好き、能塚智寛

能塚智寛が日本のオフロードシーンで注目され始めたのは、実はモトクロスではなくクロスカントリーだった。中学生だった能塚は年齢制限で全日本モトクロスのIBを走れない時期があり、面白そうだしJNCCに参戦しようとその年の開幕戦を父と二人で訪れたのだ。強烈な才能をもちあわせていた能塚は、2011年のJNCC開幕戦をいわゆる中級クラスのCOMP-Bクラス(スタート順も遅くとても不利)ながら総合2位という成績を残して会場を沸かせた。その後、モトクロスへ復帰してファクトリーを渡り歩き、日本を代表するランカーとなっているのは周知の通りだ。

そんな能塚だが、このエピソードからもわかるようにもともと彼は「モトクロス」だけにこだわるライダーではなかった。それはバイクというジャンルに限った話しでもなく、フェラーリにも興味があれば、アメ車にも興味があるという愛すべきビークルラバーなのだ。ある日彼は、所属していたチームの監督高濱龍一郎氏のガレージにCR500Rが眠っているのを見て、「こ、これください! 復活させたい!」と懇願し、レストアプロジェクトを始めるに至る。ところがタイミング悪く能塚はカワサキへ移籍。カワサキならKX125だろうということで、能塚は程度のいい2006年式のKX125をゲット。「せっかくレストアするんで、かっこいい映像撮ってもらえませんか?」という一言にOff1編集部が意気投合。かくして、能塚の2ストレストアプロジェクトが爆誕したのだった。

全部バラバラ(2021年7月)

画像1: 全部バラバラ(2021年7月)

まず能塚が着手したのは、車体をバラすことだ。すべてのパーツをリフレッシュし、必要なものは現代の優れたものにアップデートする。ライディングスキルの成長著しかった能塚少年は自分のマシンを整備することがあまりなく、大人になった今も一人でやりきるにはちょっと難しいらしい。そこでスポンサーであるビバーク大阪に持ち込んで、仲のいい保坂修一(全日本エンデューロランカー。ビバーク大阪に勤務)と一緒にバラすことに。

すんなりバラされるKX125。程度がよくて固着しているようなところもなく、なんにもおもしろくないのでここは駆け足で進めることにする。

画像2: 全部バラバラ(2021年7月)
画像3: 全部バラバラ(2021年7月)
画像4: 全部バラバラ(2021年7月)
画像5: 全部バラバラ(2021年7月)
画像6: 全部バラバラ(2021年7月)
画像7: 全部バラバラ(2021年7月)

あっさりエンジンを下ろしてご満悦の能塚。おおよそ1時間程度。程度のいいモトクロッサーなら、分解は整備に慣れていれば簡単だ。ちなみに……AMAモトクロスでは、ファクトリーのほとんどがレース後にバイクを全バラにして運ぶ。どうせ持ち帰ったら全バラにするわけだから、細かくトレーラーに積みやすくしたほうがいいということらしい。

画像8: 全部バラバラ(2021年7月)

インスタお決まりの、俯瞰写真もゲット。でも、ホイールやサスペンション類は交換してしまうので使わない。

何色にしよっかな……(2021年11月)

バラバラになったKX125を持ち込んだのは、愛知県にあるカーベック。ガンコートやパウダーコートの機材を開発・販売しているおなじみの企業で、実はここにガレージスペースを借りてベースにしている大物ライダーがいたりする。10年以上前から代表の浮田さんは日本のモトクロスを陰ながら支えてきたのだ。あくまで機材販売の会社であり、ガンコートやパウダーコート施工のサービスは通常行っていないのだが、浮田さんの粋な計らいで能塚が自分でやることを条件に機材を自由に使わせてくれた。

画像1: 何色にしよっかな……(2021年11月)
画像2: 何色にしよっかな……(2021年11月)
画像3: 何色にしよっかな……(2021年11月)

カーベックの塗装剥離剤はあまりに強力だと業界でも評判。強力なフレーム塗装もあっという間に剥げていく。「めっちゃ落ちますねこれ……気持ちいい」

画像4: 何色にしよっかな……(2021年11月)

こちらは剥離したサブフレーム。プラグを刺してボルト穴を保護する。

画像5: 何色にしよっかな……(2021年11月)

塗装前に下地処理。サンドブラストで表面を均す。

画像6: 何色にしよっかな……(2021年11月)

代表の浮田さんチェック。「素人さんがやると、裏側とか見えてなくてブラストかかっていないこと多いんですよ」とのこと。

画像7: 何色にしよっかな……(2021年11月)

パウダーコートのパウダーとは、これ。まさに粉体です。画像1: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト

この粉体を静電気を利用したツールで拭きかけ、まんべんなく付着させる。塗装とちがって塗りすぎてムラになるようなことが少なく、仕上がりがとてもきれいなのが特徴。

画像8: 何色にしよっかな……(2021年11月)

ハンマーで叩くと…

画像9: 何色にしよっかな……(2021年11月)

塗装面は剥げず、パーツにしっかり密着していることが一目瞭然。だから、激しいモトクロスのパーツに利用されているわけです。

画像10: 何色にしよっかな……(2021年11月)

というわけで先ほどのサブフレームを能塚自身で塗装してみることに。

画像11: 何色にしよっかな……(2021年11月)

ライトで照らしながら、塗れていないところを確認する。「ほらここ、裏側は塗りが甘くなるのよ」

画像12: 何色にしよっかな……(2021年11月)

というわけでさらに真剣に……。

画像13: 何色にしよっかな……(2021年11月)

塗りおえたら釜に入れて焼き、粉体を定着させる。こんな感じで、色をつけたいパーツを1つずつ施工していくわけである。

いきなり完成なのかよ(2023年2月)

音沙汰のない能塚から「できあがりました」と連絡が来たのが2023年1月。全日本モトクロスのオンシーズンに遊んでいるわけにはいかないので、オフシーズンを利用してボチボチ進めていたのだとか。というわけで組み上げる工程はナシ。能塚曰く「エンジンは自分では組めないのでバイクショップロックスターに依頼しました」とのこと。

画像1: いきなり完成なのかよ(2023年2月)

じゃーん。詳しくみていこう。

画像2: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト
画像3: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト

エキゾーストはBUDレーシング×HGS。溶接痕生々しいロウ仕上げのチャンバー。

画像2: いきなり完成なのかよ(2023年2月)

こちらがカーベックで自ら剥離してパウダーコートしたフレーム。最後まで色に悩んだものの、純正色に近いガンメタに落ち着いた。

画像3: いきなり完成なのかよ(2023年2月)

しっかりサンドブラストされ、新品のようにリビルドされたエンジンはバイクショップロックスターの手によるもの。LIGHTSPEEDのカバー類は探すのに苦労したとのこと。

画像4: いきなり完成なのかよ(2023年2月)

スイングアームもフレームと同色にパウダーコート。非常に強い塗面なので飛び石などにも強い。ホイールはDIDのリムに、ゴールドハブ。ばっちり決まった。

画像5: いきなり完成なのかよ(2023年2月)

最新装備も投入、こちらはX−TRIGのROCSクランプ。純正よりもスムーズにサスペンションが作動する。

画像4: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト
画像5: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト

サスペンションはSHOWAのAキットを奢る。画像6: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト

リアサスのロッドにもチタンコーティング。この前後サスペンションで、古い2ストモトクロッサーも別モノに。

画像6: いきなり完成なのかよ(2023年2月)

ハンドルまわりは、レンサルとZETAで能塚がファクトリーでも使用している組み合わせ。

2ストラバー必見の能塚智寛×Off1.jpムービーをどうぞ!

能塚の2スト125での全開ムービーを撮る、今回の企画意図はそこにある。画像7: 能塚智寛のKX125復活プロジェクト

まだ寒さの残る2月、全日本モトクロスの開幕に響かない時期に大阪府にあるプラザ阪下でOff1映像クルーとのセッションがおこなわれた。普段の4スト450とはまるで違った軽さに驚き、ときめきながらも能塚は段々とペースを上げていき楽しそうに2ストロークのエキゾーストノートを響かせる。

「僕、HRCにいた時にNSR250でシーズン中に転けて骨折しちゃって、めっちゃ怒られたことがあるんですよ。2スト、昔から好きなんです。僕がバイク乗り始めた頃には、もうなくなってましたけどね。

こうやって少しずつ自分の好きなバイク残していかないと、なくなっちゃうじゃないですか。まぁ、ガレージはどんどん一杯になっていっちゃうんですが(笑)」

画像1: 2ストラバー必見の能塚智寛×Off1.jpムービーをどうぞ!
画像2: 2ストラバー必見の能塚智寛×Off1.jpムービーをどうぞ!

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