全行程675kmの長丁場ながら、スペシャルステージはわずか154km。ナビはあまり難しくなかったとのことでスタート順による有利・不利がなかったステージだともいえる。最大の事件はマティアス・ウォークナーの離脱だ。55km地点で転倒したウォークナーは腰を強く打ち、チームメイトのケビン・ベナビデスが救助にあたった。救助班が到着するまでの約23分をケビンはこの日のタイムから引くことが決定され、なんとこの措置によってケビンはステージ13をトップの成績でゴール。その上、ケビンは総合でも2番手につけることになった。
総合トップのトビー・プライスはステージ5位、スカイラー・ハウズはステージ7位。これによってこの総合トップ3がどうなったかというと……。
このとおりである。プライスとケビンの差は実に12秒、ハウズも1分31秒と非常に僅差だ。最終ステージ14はこれまでのダカールラリーでも何度か使われた紅海のビーチでわずか136kmの非常にスピードが速いスピードステージ。ダカールのルート説明によれば「差はほとんどつかない」とのこと。12秒のアドバンテージを持っている。今大会のレギュレーションでは最終ステージは逆順でのスタートになるため、ケビンはトップゴールながらナビを切り開く必要はなく、二人は真っ向勝負ということになる。
ケビンは「マティアス救助されている間、私にレースを続けるように言っていた。私はマティアスが救助されてからステージの残りをプッシュしたが、チームメイトのクラッシュをを見た後に集中するのは難しいのだ。だからステージで勝利でき、トビーと僅差で総合2位になれたことは驚きだった。私にできることは最善を尽くすことだけ、結果はゴールで決まるんだ」と緊張感を露わにする。
プライスはケビンに負けず劣らず波乱のステージ13だった。「90キロ地点で先頭を走っていた人たちをパスしたんだ。このレースに勝つためには、先頭に立って道を切り開きボーナスタイムを少し取る必要があると思った。だが、砂丘の頂上でクラッシュしてしまったんだ。さらには130キロ地点でちょっと右に行きすぎて、コースに戻るのに少し時間を失った。私は最後の日に向けて、リードを確保するという目標のために、一日中一生懸命にプッシュした。だが、その差は信じられないほどタイトだ。明日は本当に最後のレースになるが、私は全力を尽くす」
一筋縄ではいかなかったのは、3番手につけるハウズも同じだ。「今日は本当に全力を尽くした。最初からできるだけプッシュしたよ。ウォークナーがクラッシュしているのを見て集中力が途切れていくのがわかった。後半に1つのウェイポイントを逃してしまって、拾い直すためにウェイポイントの周りを回ることになったので、私はそこで少し時間を失ってしまったんだ。でも私はまだ勝利を諦めるわけにはいかない。明日は短いがスピードが速いステージでだから、上位2名とのタイムを縮める余地はほとんどないが、Husqvarnaを1つでも上のゴールに導きたい」と言う。