作戦通りの好スタート
第3戦スポーツランドSUGOは前戦から2ヶ月ものインターバルが設けられ、多くのライダーにとってしっかりと休養とトレーニングでコンディションを整えられたレースだった。大塚はこの期間を使って様々な試みを繰り返してきたという。特に、このGOSHI Racing Storyでもたびたび触れてきた「スタート方法」について、監督である東福寺保雄や先輩のアドバイスを組みあわせてブラッシュアップしてきている。
SUGOは予選前日まで降り注いだ豪雨によって最悪のマディが想定された。こうしたひどいコンディションのSUGOでは、ドライコンディション時に有利なイン側が荒れてしまいがちだ。予選となる土曜日は特に泥の堆積がイン側が深く、アウト側から大きく1コーナーをまわる方法が有利だった。IA2でもジェイ・ウィルソンが荒れていない大外のラインから1車分ほど飛び出し、そのままホールショットを決めている。だが、大塚はあえてここでイン側を選んでいる。手練れのライダーが多いアウト側を避け、あえてイン側を基本どおりにタイトにまわることで好スタートを狙うという目論見だった。
この作戦がぴったりハマった予選ヒート、大塚はアウトからホールショットを奪った富田俊樹に続いて3番手でスタート。5周目に2番手にあがると富田を追い詰める展開へ。わずか0.4秒差の2位でフィニッシュ。表彰台の経験があるSUGOで幸先のいい結果となった。
パッシングが難しかった決勝ヒート
土砂降りの夜を挟んで日曜日の決勝ヒート1は、やはり予選と同様のスタートグリッドに。大塚はここでもイン側を選び、見事にタイトターンを決めて好スタートを切る。富田、小島庸平、大塚と続きSUGO名物大坂へなだれ込むが、このオープニングラップでミスをしてしまい8番手へ。後半で追い上げて6位でのフィニッシュ。
ヒート2、すでに路面は回復傾向にあり、IA1クラスのライダーにとってはベストに近いコンディション。ただしラインはかなり限られてしまいパッシングしづらい状況でもあった。さらに、スタートグリッドの状態も回復しており富田らトップライダーもイン側をチョイス。大塚はイン側から3番目、ヤマハファクトリー渡辺祐介の隣からスタートすることに。ところがゲートのちょっとした動きにつられてしまってフライング気味の挙動になり、体勢を整えられないままのスタートに。大きく出遅れてしまった大塚は必死にラインの少ないSUGOでもがくものの、他車との接触でエキゾーストパイプをつぶしてしまったことでリタイアを余儀なくされてしまった。
ヒート2をふいにしてしまったが大塚の手応えは、悪くはない。「調子もよかったし、いつもとちがう一皮むけた自分を見せられたと思います。3つのスタートのうち、2つは成功しました。決勝ではラインが一本しかなかったように見えましたが、僕はああいうコンディションは得意なんです。ワダチでしっかり前との差をつめて次のセクションで刺したりとか、何カ所か勝負できるところも見つけられていました。ポジティブな要素が多かったですし、ヒート1では若手で急成長中の大倉由揮くんをちゃんとパスできたことも嬉しいポイントでしたね。
マフラーはエキゾーストパイプを少し変えてもらって、昨シーズン好印象なところまで詰められた高速域を残しつつ、低中速が出てきた感触があります。ワダチの中での扱いやすさなどいい部分も多く、次戦も楽しみですよ」とテンションを上げながら話してくれた。
GOSHIレーシングの石浦氏も、今回の結果には満足だと言う。「中速から高速にかけてのつながりを改善した仕様で事前テストに臨みました。これをECUで燃調を合わせこんでいったという形です。天気予報は雨だったので事前にマッピングをマディ用に用意していました。トラクションコントロールなども考えていたのですが、効き過ぎるようで今回は採用を見送っています。
懸案だったスタートは大塚からクラッチをつないだ瞬間にフロントが浮いてきてしまうという報告があったので、そこを重点的に潰していき、練習とテストを積み重ねてきたので、それがよかったのかもしれません。今回からホールショットデバイスのセット位置もかなり大きく下げています。方向性をみれば、いい結果だったと思いますね。またインターバルがあくので、新作のマフラーをテストして実戦投入の時期を見定めたいと思っています」
大塚の最高位ヒート3位には届かなかったが、特に予選の走りは素晴らしいものがあった。スタートを出てその後の展開がかみ合えばトップ集団に絡んで走れることを証明している。