ルーマニアで開催される世界一タフなハードエンデューロレース「ルーマニアクス」に日本人5人が参戦。ゴールドクラスに山本礼人、佐々木文豊、ブロンズクラスに横田悠、岡庭大輔、奥卓也がエントリーしている。Off1.jpでは現地同行取材を敢行し、その様子をリアルにお知らせしていく

レースはプロローグ、DAY1を終え、DAY2へ。ゴールドクラスにエントリーした山本、佐々木はDAY1をリタイヤしているが、大会既定で1日だけならリタイヤしてもレースを継続できる。しかし、2日リタイヤしてしまうと、それ以降は走ることができない。つまり、今日が山場となる可能性が高い。

山本の10倍速い、世界のトップライダー

画像1: 山本の10倍速い、世界のトップライダー

DAY2のスタートは全クラス同じ場所に設定された。そのため、DAY1はゴールドクラス最後の山本、佐々木がスタートする頃にはスタッフ以外は誰もおらず、寂しい状況だったが、DAY2は大勢のライダーが見送った。

画像2: 山本の10倍速い、世界のトップライダー

他のクラスのライダーと一緒にスタートゲートに並び、佐々木がスタート!

画像3: 山本の10倍速い、世界のトップライダー

すぐ後から山本も追いかけてスタート。

山本はDAY1に比べると順調にレースを進めることができた。スタートして2時間ちょっとでCP1に到達。そこから、DAY1で苦しめられた3周ループの"ライブマニアックス"セクションに入った。今回は"タイタニック"と名付けられた登りだった。300〜400mくらいの長さでほぼほぼ一本ライン。ただDAY1の"ベビーシッター"との一番の違いは路面がガサガサ系ではなく、日本でもよくある土系だった。

山本は約60分かけてこの"タイタニック"を1周。それを3周し、CP5に辿りついたところで規定時間をオーバー。レースはリタイヤとなり、ゴールドクラスのルートを外れてビバーク地であるランカへと移動した。リザルトをみて発覚したのは、トップライダーたちの恐ろしさだ。山本が60分かけて登頂したこの"タイタニック"を、マニーはなんとたった6分で登頂していたのだ。

佐々木はスタートして5分くらいで現れるヒルクライムで盛大に捲れてしまった。バイクが何回転もしながら崖下に落ちていき、佐々木は首を打撲。しかしなんとかレースを続け、"タイタニック"までコマを進めた。ちょうど佐々木が到着した時に山本が2周目に入ったばかりのタイミング。そこで佐々木はマシンと身体の大事をとり、リタイヤを決意した。

ルーマニアクスは1日だけならタイムオーバーしてもレースの継続が許されるが、山本、佐々木はともに、DAY1、DAY2を続けてリタイヤしたため、明日からはレースを走ることはできない。

翌日、佐々木はこの動画を見たライダーからたくさん声をかけられたという。

「怖くて、キツくて、悔しくてーー。
全く楽しくないバイクは初めて」

山本礼人
「スタートしてすぐのヒルクライムがもう初見ではどこ通ったらいいのかわからなくて、角度もきつくて。7合目くらいから押し上げていくんですけど、その入り口がすごく狭くて、外すと崖落ちしちゃうような。難易度も高いし失敗した時のリスクが大きいセクションが多かったですね。なんとなくで登っていくと絶対にそこに入れないから、かなり精度の高いライディングが求められます。それからはキャンバーや狭い尾根なんかを走って、2時間半くらいでライブマニアックスの舞台である"タイタニック"に着きました。そこで3時間かかって、沢と林道を走って次のチェックポイントに行くんですけど、その沢が2kmくらい続いてて、何ヵ所かでかいステアもあって……。

実は途中で何度も他のライダーを助けています。これは確かにタイムロスには繋がっているんですけど、もしも自分がミスしてしまったら1人じゃ復旧できないので、助け合って仲間を作って行った方が、最終的には良い方向につながると信じています。結局今回は僕が助けてもらうことはありませんでしたが、それはたまたま運が良かっただけだと思います。

僕らとトップライダーとの差は、テクニックはもちろんなんですけど、一番はフィジカルだと思います。あんな難所を何時間も走り続けられる体力はちょっと僕ら日本人にはないですね。僕がこの先、日本でどんなに練習しても彼らには追いつけないだろうと思います。もし本気で彼らのようになりたいなら、拠点をヨーロッパに移して、彼らと同じ環境で練習をするしかないです。彼らはみんな世界戦を回って色んな難しいセクションを知っているので、"これ以上はヤバいよね"っていう限界の位置が僕らよりもかなり高い。日本にはハードエンデューロの世界選手権はないし、そんなコースを求めている人もいません。モトクロスの下田丈選手が今あれだけ活躍できているのは、やっぱり幼い頃からアメリカに移住して向こうの環境に溶け込んだからなんですよね。

僕、バイクに乗ってて全く楽しくなかったのって初めてなんですよ。怖くて、キツくて、悔しくて。ブロンズのライダーと同じルートを走る時があって"景色いいな"って思った瞬間はあったんですけど、それを楽しいと思う余裕がないんです。ブロンズの人たちはレース終わった後に『あそこの景色よかったね!』って話をしてるんですけど、僕と佐々木さんは『あそこひどかったよね』って話しかしてませんからね。とにかくこれから海外レースにエントリーする日本人のライダーには、僕を反面教師にしてもらって、自分が"このくらいかな"と思うクラスのひとつ下のクラスに出ることをお勧めします。せっかく高いお金を払って参加するので、やっぱり楽しい方がいいですよ」

佐々木文豊
「実は最初はシルバークラスにエントリーしたかったんですよ。僕はみんなよりちょっと決断が遅くなってしまって、エントリーしたのは去年の年末くらいなんですけど、その時にはもうブロンズもシルバーも埋まってしまっていて、ゴールドしか空いてなかったんです。CGCみたいに10分で締め切るとかじゃないですけど、前年の大会が終わるとすぐに翌年のエントリーが始まって、ブロンズとかアイアンに出たいなら、すぐにエントリーしないと埋まってしまうみたいです。

次はぜひシルバーで出たいですね。このボリュームのコースを4日間なんて、全部走れたらめちゃくちゃ楽しそうですもんね。アヤトとも話したのですが、シルバーのコースを実際に見てみて、これなら本当に完走できそうだな、と思いました。ただ、それでもトップライダーはめちゃくちゃ速いので表彰台とかは無理で、あくまで目標は完走ですね」

画像: 山本礼人DAY2 リザルト

山本礼人DAY2 リザルト

画像: 佐々木文豊DAY2 リザルト

佐々木文豊DAY2 リザルト

画像: チームジャパン ゴールドクラス総合成績

チームジャパン ゴールドクラス総合成績

絶景のスノーリゾート「ランカ」
ここにくるために2日間走り抜く

さて、ブロンズクラスはというと、前夜にメールで発表されたDAY2のコースはDAY1とほとんど同じ距離の113km。しかしその目安となる走行時間はDAY1が4時間だったのに対し4時間半となっていた。この時間はあくまで目安で、実際にチームジャパンで最も成績の良かった奥でもDAY1を走り切るのに5時間22分を費やしている。

これはひょっとするとDAY1は様子見で、DAY2から難しくなっていくのでは? というチームジャパンの予想通り。ブロンズクラスのDAY2はひたすら山の中を登って下らされたという。それも登りは気持ちのよいヒルクライムではなく、押し上げ。下りも乗って降りられるギリギリの斜度が延々と続く……そんなコースは日本には存在しない。

しかしそんなところを何時間も走った後には、本当のご褒美が待っていた。それが、ランカへと至る高原。DAY2のレースは予めマラソンステージであることが伝えられていた。つまり、シビウには戻らず、ビバークで一夜を過ごしてそのままDAY3に突入するのだ。ライダーはゴールしてからこの日の宿泊地であるランカという街までは、公道を走って移動するのだが、その道が最高だった。

画像1: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く

「いままで見た中で最高の景色でした。このまま死んじゃうんじゃないかってくらい。すべての苦労が報われる幸福感に満ち溢れた時間でした」と横田はこの景色を振り返った。

去年はこのマラソンステージでテント泊をしている写真が公開されていたため、我々チームジャパンも当然、この日の夜はテント泊するものと覚悟を決めて用意して挑んだ。

しかし、ブロンズ組の奥、横田がゴールしてみると、まさかの「ホテルがあるぞ」という知らせ。しかもランカはスノーリゾート地で標高は1600m。まるで熊本の阿蘇山か四国カルストのような絶景の中をひたすら登っていくと、突如として現れる。日本で例えるなら、苗場のような存在なのだろう。

ちょうど6室あるペンションをチームジャパンで貸し切ることができ、快適な睡眠を得ることができた。

画像2: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く

ランカへと至る峠道からの景色。これで夜の20時くらいだ。

画像3: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く

高地に突然現れるリゾート地、ランカ。美しい街並みに、感動。

奥卓也
「僕的にはそんな難しかったという感じはなかったですね。でも昨日よりは難易度は上がってましたね。一番最初、スタートして10分くらいにすごい深い轍があって、入ってしまったらそこでレースが終わりそうなやつがあって、やはり日本との違いを感じましたね。林道を走ることが多かったんですけど、荒れ具合と斜度がものすごくて。奈良トライアルマウンテンの移動路みたいな斜度で、道幅は日本の倍くらいあるんですよ」

画像4: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く

横田悠
「DAY1は"難しくて長い日高2デイズ"という感じだったのですが、DAY2は6時間ずっとCGCのゲロゲロクラスでした。時たまほんの少しだけご褒美ヒルクライムが出てきますが、その後には地獄の下りが待っています。ほとんどはギリギリ乗ったまま降りられるんですけど、とにかく長くて、何kmも下り続けるんです。腕が爆発するかと思いました。日本とはスケールが違いすぎますね。後半にはビバーク地であるランカ周辺の絶景に囲まれて最高に楽しい気分で終わりました」

岡庭大輔
「あの下りはSea To Skyにもあったんですけど、あれが何回も出てくるのが嫌ですね。僕は他のライダーを助けながら走っていたので、ゴールした時にはタイムアウトまであと5分でギリギリでした。心配していた雨はレース中はほとんど降られなかったんですけど、ゴール地点からランカに移動する間がすごく寒かったです」

画像5: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く
画像6: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く
画像7: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く
画像8: 絶景のスノーリゾート「ランカ」 ここにくるために2日間走り抜く

ランカで宿泊したペンションのオーナーと。地元のお酒をいただき、みんなで乾杯。実に愉快で気持ちの良いご主人だった。今回の旅を通して感じたのは、ルーマニアはとにかく人が良いということ。佐々木がDAY1に助けてもらった親子もそうだし、取材班も路駐する時に車をスタックさせてしまって救出してもらったり、現地民との交流も楽しめている。

今回の結果から、ルーマニアクス ゴールドクラスを日本人が完走する日はまだまだ遠いと言わざるを得ないだろう。しかし、これが第一歩なのは間違いない。

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