CRF450Rは、2017年のフルモデルチェンジで「Absolute Holeshot」を開発テーマにおき、一際パワフルなエンジンを手に入れた。そしてこの2021モデルのフルモデルチェンジでは「Razor Sharp Cornering」を開発テーマに据えた。つまり、強力なエンジンを手に入れて、そのうえコーナリングに磨きをかける、という目標。全日本、いや世界で勝てるハイエンドポテンシャルは、ビギナーにとっての扱いやすさと共通項を多く持ちはしない。
はっきり明確に、タイムを削りにいくマシン
よく覚えているのは2009年のCRF450Rだ。その前から、450ccのモトクロッサーは旗艦でありながらも、アマチュアにも楽しめるような懐の深さを備えていた。車体は年々軽くなっていったし、エンジンマスも感じづらい。開けなければ、高めのギヤでモトクロス「ごっこ」をヨンゴーでも楽しめたのだ。だが、冒頭に書いたとおり2021モデルには、そんなフレンドリーさは感じ取れない。あまりにライディングに緊張するから、立ち止まってHSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)のスイッチを最大に入れた。これで少しは乗りやすくなるだろうか、と思ったのも束の間、車体は開けた分だけ前に進むし、バイクが立ち上がる。僕は進んで欲しくないのだ。開けた分だけ進んでほしくない。身体が、あっという間において行かれる…。そりゃ、この強大なパワーを地面に余すこと無く伝え、グリップし続けるのだから、速いにきまってる。そうか、モトクロスにおけるトルコンは、スリップダウンを避けるためのものじゃないんだ…。勝利のための、トルクコントロールなんだ。
当たり前の話だが、今回もインプレッションをお願いした辻健二郎のようなトップライダーにとって、「こんなの乗り切れない」という感想は出てこない。
「エンジン始動しコースに入るまでの間にもさらにコンパクトな感じを受け、これまでのCRF450のような重厚感がない事に、あれ? オールニューのCRFだったよな? と逆に少し疑いを持ったほどです。しかし、コースに入ると450らしいトルクフルなツキ、アクセルワークに一様なトルクデリバリーがありエンジンにタフネスがある事を感じるとることができ、すぐに450らしさを確認できました。