慣れない2021年式のYZ450FX
「デビューウィンしなくちゃ意味がない」
今大会で渡辺は、2021年式のYZ450FXをデビューさせた。ただでさえ新型のデビューレースはプレッシャーがかかるものだが、この前日、北海道で開催されたルスツ2デイズエンデューロの初日で鈴木健二が新型YZ250Fをデビューウィンさせていたことも拍車をかけただろう。
さらに渡辺はこのYZ450FXを一回しかテストしないままレースに持ち込んでいた。それもオフロードヴィレッジのモトクロスコースでのテストだったため、ゲレンデは初めての走行となる。
さらにさらに、レース2週間前に転倒しあばらに強烈な痛みを抱えた状態でのレースだったという。しかし、そんな数々の逆境を跳ね除けて勝利するのが、チャンピオンだ。
渡辺はスタートは焦らず着実に前方で決め、すぐにゲレンデ横を駆け上がる「ガレの絨毯」ことガレた登りで2番手に浮上。そして1周目中盤の下りでスタートからトップを走っていた馬場大貴を抜き、先頭に立った。
その後、給油タイミングや作戦もあり、追い上げてきた熱田に何度か前を譲るものの、ラインを盗み、冷静にスピードを観察し、最終的には熱田を除く全てのライダーを周回遅れにし、見事にYZ450FXデビューウィンを飾ったのである。
渡辺学
「このコースはJNCC初開催ですけど、2週間前のWEXの時にスクールの仕事で来ていて、コースは違いますけど、なんとなく雰囲気はわかっていたつもりでした。ただ実際に走ってみると、アスファルトもあったりして、速く走ろうとするとけっこう難しかったです。
実はWEXでマーシャルで走ってる時に、そのアスファルトのところでハイサイドで吹っ飛んで、今もアバラがめちゃくちゃ痛いんです。痛み止め飲んで走ってましたけど、咳するだけで痛むので、たぶん折れてますね。
今日のレースは健二さん(鈴木健二)もいないし、21モデルのYZ450FXのデビュー戦でデビューウィンしないと意味がないと思っていたので、勝つつもりで準備をしてきました。とはいえ時間はなくて実際にマシンに乗れたのは一回だけだったので、今まで乗ってきたバイクで蓄積したデータを反映させて作ってきて、レースも最初の1時間くらいは練習のつもりで、エンジンだったりサスペンションだったり、使うギヤだったりを探りながら少しづつタイムをあげていきました。
自分のペースがあまり良くなかったし、2〜3周目くらいで一回熱田さんに前を走ってもらって、攻めどころと休むところを見ようかなと。ペースがだいたいわかってからは自分もマシンに慣れてきたので前に出て、熱田さんとのタイム差だけ出してもらって、それをしっかりキープできるように走ってました。
難所がなくてハイスピードなコースだったのでタイム差がつきにくく、一回転倒してしまうとすごく大きいんです。マシンを壊してしまうのも怖かったので、一回転んでしまってからは転ばないように気をつけて、でもメリハリはつけて走ってました。
シーズンとしては健二さんが2戦連続ノーポイントですし、熱田さんも途中参戦ですので、チャンピオンは絶対に取らないと、という気持ちです」