AMAスーパークロスがソルトレイクシティで再開して3戦目。ホンダのトップサテライトチーム、ガイコホンダから出走する下田丈をOff1では追い続け、毎戦単独インタビューをさせていただいている。1戦目はブレーキを壊してアウト、2戦目は混戦に巻き込まれてほぼ最後尾からの追い上げ…納得のいかないレースが続く下田は、3戦目にしてついに「兆し」を見せる。
レース展開は↑から。
逆境が反作用、乗れていたRd.13
何よりファンとして悔やまれるのは、この日のレッドフラッグだ。抜群のスタートで3番手で1コーナーを回り、2コーナーで2番手まで浮上。チームメイトでチャンピオン候補のチェイス・セクストンが遅れていることもあって、後続との距離は少しずつ開いていた。3-4周ほど走っただろうか。中継を見ていた我々同様に、下田も手応えを感じていた。
「ブレーキ無くして、クラッチ無くして、今度はレッドフラッグですよ(笑)。ついてないですね。でも、スタート出れたら、意外といけましたよね。セクストンがかなり速いので、2位のままは難しかったと思いますが、なんとか表彰台はいけたかもしれません」と、いつもより明るい声で下田は言う。「そもそも、調子はよかったんですよ。クオリファイ一発しかなかったじゃないですか(マディコンディションでタイトなスケジュールに。プラクティスなし、予選までは10分のクオリファイしか走行できなかった)、これが僕と相性がよかったなと思います。今までのクオリファイ最高順位の6位をとれました。でも、ヒートレースはダメでしたね。スプロケットを50から52Tに変更したのがよくありませんでした」
レッドフラッグの中断後、雨はものすごい量になっていた。レッドフラッグ以前と以降では、まるでコンディションが違う。「フープスは、レッドフラッグ後はジャンピングでしか通過できませんでした。前はスキミングできていたんですけどね」と下田が言うだけあって、今回のトラックはタフだ。
ともかく再スタートは、失敗だった。反応はよかったし、1コーナーまでは同じようにトップグループで到達しているのだが、1コーナーの侵入から近くにいたジャレク・スウォルがアウト側にはらんできたことによって、下田は弾かれた形になった。「スウォルとはランキング争いしているんですが、スウォルが意識的によせてきた、つまりブロックしてきたかどうかは、わかりません。もしかしたら、そうなのかもしれませんね」と下田。
下田は再スタート後、スタートから出遅れるばかりか、沼にスタックしてしまう。もちろん、あきらめてレースを降りることはなく、さらに追い上げも効いたが結果は燻った。「基本的なリズムで走るには、簡単なコンディションでした。でも、セクストンとマケラスはだいぶ違うライン取りで、フープスもスキミングでした」といつもよりも差が大きかった。
克服しつつあるスタートの課題
レッドフラッグ後の再スタートは、この数戦同様にオープニングラップをさばききれなかった。「とにかく、今はスタートでトップ5で出たい。ちゃんとスタートに出て走れれば、ポディウムも無理ではないと思っています。自分の実力で、戦いたい。
スーパークロスにデビューしてすぐの時は、リスクの高いスタートでそこまでつっこんでいけなかったのもたしかです。今は、そのあたりの恐怖心は無くなっていて、安定感の無さが課題になっています。特に、1コーナー、2コーナーのさばき方がうまくないんでしょう。1つ言えることとしては、僕はこれまで少しアウト気味のグリッドを選んでいたんですが、今回のようにインを刺されることが多いんですよね。1コーナーの進入をもう少しセンターよりにすることで、うまくいくのではないかと考えています」と下田は言う。スタートは、毎戦毎戦形が違う。だから、そのラインのとりかただけでどうにかなるとも下田は思っていないが、レッドフラッグ前のスタートをみても、もうまもなくトップスタートを切る下田が見られるのではないだろうか。
AMAスーパークロスは、残すところ2戦。それがおわれば、3週間後にAMAモトクロスが開幕することが発表されている。「聞いていなかったことだし、準備もできていない」と下田。例年よりタイトでタフ。COVID-19の影響下で、日本の下田は奮闘しつづける。