長時間バイクに乗っていると、尻が痛くなってくる。バイクは、尻にとってとてつもなく悪条件だ。オフィスチェアのように、休憩で立つこともできなければ、シート高を低くすべくクッションをあまり詰められない。挙げ句の果てには、オフロードバイクのシート幅はご存じのとおり狭く、これが尻の鬱血や、クッション性の弱さを招いている。あのダカールラリーにおいても、Team HRCも優勝を手にするだけあって、シートをとても重要視しているのだ。
ダカールのシート屋に集まるセローのシート
セロー250のシートは、ごく一般的なオフロードバイクのシートの形状をしている。前側にくぼみがあって、座面は台形。前後移動が必要なため、タンデムシートとの境目はなく、運動性能を重視したものだ。
「実は、最近セローのシートモディファイを注文してくれる人が多いのです。それも、あまり値段のことは言わず、とにかくいいもの、つまりうちで言う『ダカールスペック』にしてくれと。決して弊社のシートモディファイは安くないんですが、それでも性能を求めてくれる人が多いですね」と野口装美の野口氏は言う。たまたま取材時に、セロー250用のダカールスペックシートができあがっていたこともあって、これを紹介していただいた。
まず、ダカールスペックと野口氏が表現するのは、かなり幅広いものだ。というのも、野口装美が手がけてきたTeam HRCのダカール用シートも、ライダーによって言うことは多種多様。体格の差もあれば、ライディングスタイルも違う。そこで、定義をするとすれば「弊社の衝撃吸収剤、T-NETをインサートすることですね。シートベースは活かしたまま、ほとんどのフォームをいれかえる作業になります。これを入れると、底付きしづらくなるんですね」と野口氏。