究極の路面コンタクトを生み出すサスペンション。そこにあるのは秘密ではなく膨大なデータの蓄積に基づいたパーソナライズだ。「ライフスタイル」とまで書くのは、決して大袈裟ではない。
自信をくれたものとは
筆者がRG3サスペンションの名を初めて聞いたのは、今年6月、JEC(MFJ全日本エンデューロ選手権)の第2戦、岐阜アルコピア大会のパドックだった。昨2018年にIBクラスのタイトルを獲得、最高峰のIAクラスにトップ昇格した保坂修一(ほさか・よしかず)が、IAデビューシーズンに、しかもわずか2戦目でポディウムに立った。その表彰式後のインタビューでのことだった。開幕戦には間に合わなかったが、今日はRG3でチューンナップしたサスペンションで走れた。荒れてハイスピードなコースだったが、自信を持って攻めることができた、と、17歳のIAルーキーはそうコメントした。
USダートバイクカルチャーに生まれた
RG3はカリフォルニアのアナハイムで1998年に創業したサスペンションチューナーだ。トラビス・パストラーナ、マイク・ブラウン、ロドニー・スミス、ライアン・ヒューズ、マイク・キドラウスキー、ブライアン・ディーガンといった著名なライダーの活躍を支えることでも知られているが、最大の特徴は、車種、コースのタイプ、ライディングスタイル、ライダーのスキルレベル等々、車種、サスペンションユニット毎に、膨大なデータベースを保有し、かつ、ユーザー(顧客)からのフィードバックによって、常にデータベースが更新、拡張していることにあるという。こんな乗り方をするので、こんなサスペンションが欲しい、という要望に対して、数値化された明確な回答をもとに応えるのだ。
驚きの出会い
「だから、トップクラスのライダーだけではなく、例えばビギナーでも、レース経験の浅い人でも、すべてのライダーに合わせたチューンナップを提供することができるんです」と話すのは、RG3ジャパンでサスペンションチューニングを担当する福森寿明。「ライダーの体重、スキルレベル、主に走っているコース、どんなタイプのレースなのか、長時間のレースなのか、スプリントなのか。どんな走り方をしたいのか。そうしたリクエストをまとめて、本国のRG3に送ると、具体的なチューンナップの仕様として戻ってきます。RG3ジャパンでは、それをもとにして実際の作業を行います」。
福森がRG3に出会ったのは2010年。数人の仲間とともに、RG3本社のエンジニアを日本に招聘して、チューンナップの知識、技術を学び、以後、少しずつ日本にユーザーを増やしてきた。当時の仲間の中には、現在も一緒に仕事をしている新田豊起もいた。福森はこう振り返る。「このサスはいいですよ、というのではなく、千差万別のライダー、そのひとりひとりがいいと思える、その人のためのサスに仕上げるという考え方に驚きました」。本国RG3が求めるユーザーのデータは、家族構成、職業、バイクにどのようなスタンスで関わっているのかなど、ライダーとしての人物像にまで及ぶ。ライフスタイルという視点で、サスペンションをコーディネイトするのだと言う。