2016年にミラノショー「EICMA」でコンセプトT-7としてその姿を露わにしてから、テネレ700は本格アドベンチャーマシンを望むライダー達の心を釘付けにしてきた。まるで、ラリーマシンのような外観、400クラスのようにも見える軽量感が、いよいよ実車となって登場する。
大前提として、このマシンはレーサーではない
T-7コンセプトのルックが、あまりに次世代ラリーマシン然としていたことから、スパルタンなライディングフィールを想像する方も多いはず。だが、スペインで試乗してきた三橋淳に聞けばオフロードをがんがん飛ばす、ジャンプもこなすようなバイクではないのだと言う。
そもそも、テネレ700に搭載されたエンジンは、MT-7由来のクロスプレーン270度クランクの並列二気筒。ロードバイクの中でも、異色の「エンジンそのもののテイストを愉しめる」ものだ。開発側もこのCP(クロスプレーン)エンジンをオフロードに活かすことを考えていた。スポーツ性も高いが、エンジンの脈動を感じながら走るようなファンライドの趣を盛り上げてくれる。
この700ccのCPエンジンは高回転・低回転ともにフラットな出力が魅力。ある意味、回して乗っても愉しいし、またある意味では低速でチルなフィーリングを愉しむことも出来る。だから、テネレ700も乗れる人には「ふりまわせる感覚」を持っていて、ビックバイクに乗り慣れていない人にとっては優しい特性になっている。
谷のない特性で、3000rpmぐらいから、アクセルをあけても落ち込みはせず、ワンテンポかツーテンポ遅れてから加速を始めるような乗り手に優しい低回転域もあれば、三橋のようなふりまわせるライダーにとって面白みを感じる6000rpmくらいのレスポンスいい高回転域もあるというわけだ。ツインエンジンのビッグバイクはおおよそ多くの一般ライダーにとって、オフロードでふりまわせるものではないけれど、CPエンジンであれば問題はない。
三橋は、モトクロッサーで言うところの4スト250ccのような、ライダーファーストなフィーリングだと表現してくれた。1万2000rpmまでまわってしまうエンジンだから、レブに当たることはほとんどないし、レブにあててもあまり落ち込まないのだそうだ。ツーリングで市街地を走る際に使われる2〜3速が相当に長いと言う。6000rpm以下はセローっぽくて、6000rpm以上はWR250Rっぽい、という比喩表現もわかりやすい。
だが、当然ながらオフロード専用に新開発されたわけではないので、三橋は重心位置が高いと感じていた。だから、テネレのファーストインプレッションは決して軽いとは思わなかった。ライディングフィール自体は、他社とくらべてもかなり軽さを感じるとコメントしているし、重心の高いオフロードバイクを、ヒラヒラ転がしてるような感じだと言う。