2018年の9月12日時点では、正式に日本のスズキからリリースが無いRM-Z250。すでに、海外ではリリースが発表されていて、これに準じて日本国内仕様の先行試乗会が開催された。
7月に書き下ろした記事では、詳細がはっきりしていなかったが、この先行試乗会ではすべてが明るみにでた形だ。まずは、Off1.jpがフィーチャーすべきポイントをざっとお伝えしておきたい。
1.全域におけるパワーアップ、吸排気リファインで最高潮を得た250ユニット
ダウンドラフト化をすすめた吸気系に、新しく新設計された下吹きスロットルボディ、ツインインジェクション、センター出しのエキゾースト。19MYの250ユニットは、10年以上にわたって熟成されてきたRM-Zの型を継承するもの。グラフで言えば、低回転から高回転まで全域にわたってパワー&トルクが上乗せされる形だ。
開発のターゲットは5%の上乗せ。非常に困難な目標設定。
2.スズキオフロードを象徴する「くちばし」デザイン。DR-BIGにも共通
18モデルのRM-Z450を踏襲する新デザインは、スズキオフの伝統を反映。DR800Sのくちばし的なフロントの影響を受けている。もちろん、テイストは現代に合わせていて、直線で構成されたルックはクール。ライダーインターフェイスも、優秀だ。
3.軽量感を突き詰めた車体回り
実際の軽量化も進んだが、剛性バランスをチューニングすることなどで、軽量なフィーリングを推し進めた。
RM-Zは、デビューからどう進化したか
Off1でインプレッションを御願いしたのは、かつてTeam SRMでRM-Z250に乗りタイトル争いを繰り広げ、Team SUZUKIでRM-Z450WSを操った北居良樹。2016年、全日本モトクロスからは引退、現在は後進の育成にあたっている。
「まず、パワーが全域で出ていることはたしかにわかりました。パワーが食われがちな、マディコンディションの名阪スポーツランドでもしっかり前に進む感触がありましたね。
3速が幅広く使えることがとても印象的でした。4スト250は、ギヤチェンジが忙しいイメージで、2速でしっかり回してコーナーなどから脱出していく乗り方をしますが、このRM-Z250は相当3速の低回転が使えます。加えて、レブ域での頭打ち感がないこともあって、3速のままでスピードにのせていくことができる。4速とのつながりもいいので、結果的に速いです。
レブ域は、まだ余裕がありそうなまわり方をするので、さらに伸びる可能性も感じました」と北居。また、「250の進化は、この10年で著しいと感じています。EFIは、ライダーの操作をイージーにしました。たとえば、キャブ時代ならジャンプの着地でボギング(キャブのフロート機構に起因する息つき)が出るので、着地ごとにクラッチで逃がしてやる必要がありました。フープスに至っては、ずっとボギングが出ていたわけですから、今のFIは比較にならないほど優れています。
それと、使えるエンジンの回転数の幅が、今から比べると狭かったのでギヤチェンジが忙しかったですよね。相当戦闘力は上がってると思います」とのこと。
現世代では、4スト250に求められるのはライバル陣からぬきんでられるだけのヒット感と、パワー感。スタンダードよりも、レブ域を伸ばすようなチューニングもトップクラスではおこなわれている。RM-Z250は、スタンダードのエンジンポテンシャルも高いが、モディファイの素材としても優れているのではと考えられる。
FIのスロットルボディは、今回のフルモデルチェンジでスズキオリジナルの再設計をおこなった。この数年、北米だけでなく日本でもKTMのスロットルボディを流用する手法が蔓延していたが、これはKTMのインジェクターが下からガソリンを噴霧していたことによる。原理的には後付けだが、トルクフィーリングやツキに優れていたことがその採用理由だ。
スズキの新スロットルボディは、インジェクターの位置を試行錯誤し、下からの噴射でバタフライにあてて噴霧する形をとった。
そしてツインインジェクターのセカンダリは、エアクリーナボックスのコネクティングチューブにあるが、このセカンダリの位置にも可変ではないものの壁が設置されていて、セカンダリもこの壁に向かって噴霧されるようになっている。
スズキの説明では、これはより霧化効率を上げるための施策だとのこと。大きなボアに噴霧されるよりも、流速の少ない回転数の時にしっかり霧化する。パワーグラフには現れない部分だが、このあたりスロットルの応答速度やヒット感に如実に反映されるため、特に体感しやすい進化だと言えるだろう。
次回は、車体まわりについてインプレッションの続きを掲載する。