かくしてあっという間におとずれた、JEC Lites。群馬にある日野カントリーオフロードは、若干標高が上がるとは言え、温度計は32-38度の間を指すくらいの猛暑日。本当に暑い。
話は変わるが、サウナが空前のブームだ。我らが二輪業界でも、トリシティとサウナのコラボレーション企画が通ったりするほど。僕は、このサウナブームに完全に巻かれる形でアマチュアサウナ—から、いまミドルサウナ—くらいになった感じ。親友は、テントサウナ(野外でサウナができるもの。20万円弱する!)を買ってしまったし、大江戸温泉のサウナは若者で溢れかえってる。
水風呂のために、バイクで走る
一体なんの話をしているのか。いや、エンデューロだ。
サウナは、ご存じ90〜100度の高温の室内で暖を採るもの。でも、実はその醍醐味は水風呂にある。だんだんサウナレベルがあがると、水風呂を見るだけでヨダレが出るようになる。ほてりきった体で水風呂に入る、温冷交代浴こそ、サウナの気持ちよさ。
そうなのだ。真夏のオンタイムエンデューロで体は強烈に火照る→井戸水のプールにざぶん。これだよこれ。
ちなみに温→冷で、自律神経が整うことでトランス状態になる。サウナトランスと呼ばれていて、古来はこのサウナトランスをもとめてシャーマンが水風呂に入ったという。最近では「ととのう」と言う(参照:『サウナ道』タナカカツキ著)。
まじめに、1周ごとに僕はととのった。熱中症とはまったく疎遠だった。1周ごとのディープリフレッシュ。真夏のエンデューロは、プールがあればサウナになるのだ。
JEC Litesの限りなく低い敷居
全日本エンデューロ、を頂点とする日本のオンタイムエンデューロのなかで、最も敷居の低いイベントのうちの一つが、このJEC Lites。オンタイム制の説明は散々他のところでやっているし、ここでつらつら書いてもおもしろくあるまい。
オンタイムの何が面白いのか。
これは、テストで集中しきって走れることに尽きると思う。ルートをゆっくり走ってきて、テスト区間だけ全開。クロスカントリーの、マラソン的なバトルは、もちろん好きだ。人間を思いきり問われるし、アスリート的な要素も多い。でも、この集中しきって走る行為もおもしろい。とにかく僕はこんな職業をしていながら、バイクがまったくうまくならないことで有名だ。でも、それでも存分に楽しめるのだから敷居の低さがよくわかると思う。
なんせ、最大の難所でもコレ。どう? ちょっと頑張れば、出れるでしょ?
鈴木健二の教えを守り、積極的にレブらせる。レブはこわくない、友達
ここのところ、取材をする上で気にかかっていたことがあった。鈴木健二さんの言葉だ。「全開でレブにあたっていれば、そこからパワーが盛り上がることがないので、すごく安定した状態なんです。ヒルクライムでまくれちゃうのは、まだその先でパワーが出るような状態で、スロットルを操作するから。あけきっちゃえば操作は簡単ですよ」
健二さんの場合、これをYZ450FXだろうがYZ125Xだろうが車種を問わずやるので、これはさておき。でも、レブこそ安定するというのは面白い考え方だと思っていた。
レブこそ安定するっていうから、ほとんど1速で走った。ただ、セローの場合、レブに突っ込むと頭打ち感が強くて失速するから、レブのほんの少し手前を狙う。そうすると、スロットルを戻すこと自体が少なくなるので、スピードが落ちることも少ない。わりといいぞ、っていうかかなり攻めてる気分になれる!
セロー250は、ご存じの通りすこぶる扱いやすい。ただ、足の長い僕には足を出してからステップに乗せる動作がかなり辛かった。足の長い僕には。今度出るなら、ハイシートとワイドステップを調達しよう。
なお、事前に組み込んだきたむら工房のクラッチリテーナーは、絶好調。意識して走ると、思った以上に自分がクラッチを使い分けていることがわかる。
ちょっとした上り返しでフロントが浮きぎみになりそうな時に、ほんの少しクラッチを切ることで駆動を殺したり、逆に回転をあげてミートしたい時の半クラも、2パターンくらい使い分けている。こういう細かな動作が、リテーナーをいれたことで明快にわかるようになるし、たぶんミスも少しは減っているのだと思う。セローのような特にダルなクラッチには、覿面効果があるはずだ。
丸太超えれば、もっとわかっただろうにな。ははは。
かくして僕は、市販車Bクラス4位になんとか滑り込んだ。弊社社員、伊井にはこてんぱんに負けた。坊主マッチとかしなくて、心底良かったなぁと思う。
オンタイムについて学ぶ必要はない
とかく、オンタイムはむずかしいと思われがちだ。でも、Litesの簡易ルールだったら出てみてわからないなんてことは、なかなか無いはず。それに、Litesに出ているのも初心者だけではなく、ゆるく楽しんでいるベテランも多いので、周囲に聞きながら動けばいいだけだ。最初から「勉強しなくちゃ」なんて思わなくていい。
ライツの延長線上に、あこがれのヒダカやシックスデイズがある
オンタイムは、ラリーのようだ。
パリ=ダカールラリー創始者であるティエリー・サビーヌの作ったコースは、いまだファンが多く、当時のラリーストの感動を呼んだという。それは、サビーヌがラリースト達を感動させたいと思っていて、随所にストーリーを盛り込んだからだ。あるものは砂丘の先に大海原を見た。あるものは蜃気楼のかわりにオアシスへ辿り着いた。
たとえば、同じように日高ツーデイズエンデューロでは、ご褒美のような美しい牧場を走るルートがある。そこを通る時、多くのライダーはおもわずスロットルを緩めてしまう。
そんな大きな感動でなくてもいい。今回のライツであれば、まるでボブスレーのように走れるヒルクライムが気持ちよく、そのルートの絶妙さを楽しんだ。これらは、レースを創る人達の個性が表れるもので、「あぁ、そうかクリタさん(日野ラウンドのディレクター)はこれを魅せたかったんだな」と思いながら、ルートを踏みしめる。そうやってトリコになっていく人達が、今度は「自分も、魅せたい」とスタッフにまわったりしていくうちに、各地のローカルクラブを中心としてオンタイムのカルチャーが醸成されていくのだ。
次戦は成田モトクロスパーク。絶対楽しめる。保証する。
写真/さいとうまな