車体剛性って何? フレームが固いか柔らかいか、なんてわかるわけないじゃん。
そんな人は、まず試しにエンジンハンガーのボルトを外してコースインしてみたらいい。エンジンは、車体の剛性メンバーの一部なので、エンジンハンガーのボルトが1本外れただけで、乗り味が変わる。そう、これが極端に車体剛性が落ちた時のフィーリングだ。今回は、永久保存版のアーティクル。エンジンハンガーで車体剛性をチューニングする虎の巻を紹介しよう。
調整するのは、アッパーのエンジンハンガー
こちらは、全日本モトクロス選手権関東大会でキャッチした古賀太基のマシン。アッパーのエンジンハンガー、センター部分に穴が穿たれているのがわかるだろうか。
エンジンハンガーによる剛性バランスのチューニングは、全日本レベルであれば珍しいことではない。ファクトリーマシンにおいても、フレーム自体に手を入れて調整することがあるけれど、コスト面からいって細かい調整をフレームを何本も用意しておこなうのは得策ではないから、最終的な追い込みをエンジンハンガーにおいておこなうようだ。
その方法も様々。当初アメリカでは、形状を絞り込む方法が多かったが、最近では穴を開けるという手段が多くみられる。カワサキファクトリーなどでは、アルミのこの部品をスチールに置き換えたりもしていたようだ。現状でも、エンデュランサーにはスタンダードでもスチールのハンガーを設定しているメーカーもある。
今シーズン、ひときわカッコイイADA/SoCal MXTFの古賀太基。
仕上がりも上々なんだろう。
サンデーレーサーにお勧めしたい、フレーム剛性調整法
古賀の例も、十分にサンデーレーサーにお勧めできるもの。そもそもエンジンハンガーなんて、そんなに高くは無い。いきなり穴を開けても、容易に元に戻せるのだから、いろいろチャレンジしてもいい。なので、各手法と、その方向性を、ここでは紹介していきたい。ちなみにホンダ、スズキ、カワサキに関しては傾向が似ているものの、ヤマハは車体構成がだいぶ異なるので特殊だ。
まず、アッパーかロワーか。ロワーのハンガーは、フロントの接地感に影響すると言われている。アッパーの場合は、旋回性に効いてくる。
一番簡単な方法がボルトを外す、もしくはボルトの締め込みトルクを変更すること。セッティングテストでは、いきなり外してもらってもいい。これでフィーリングがだいぶ変わるはずだ。極端な話、エンジンハンガーを外してしまってもいい。フラットトラックでは、現にハンガーごと外してしまうライダーが少なくない。
ともかく、まずはボルトを1本外してみる。ロワー、アッパーそれぞれ試してみて、剛性の落とし方の方向性を確かめる。
剛性が落ちすぎたと思ったら、ボルトの締め込みトルクを変更してみる(※ゆるみが怖いので、マーキングをすること)。
もう少し調整したいと思ったら、ハンガーの真ん中に穴を開けてみよう。少しずつ太い穴にしていけば、失敗も少ないだろう。
いま、剛性は求められていない
こちらは、Team HRC能塚智寛のハンドル。見ての通り、鋳物でスタンダード同様のものを使用している。ファクトリーは、太いサスで太いフレーム、強靱なあしまわりでガチガチというのは、昔の話だ。しなやかで路面との相性が良い、コントローラブルな足回りが求められていて、成績につながると考えられている。
注意して欲しいのは、これらはメーカーが推奨する方法ではないということ。AMAや全日本ですら取り入れられている方法で、編集部が入手している情報の中ではトラブルや故障にはつながっていないようだけれど、その可能性もなきにしもあらず。もし実践するなら、走行毎のエンジンハンガーのチェックは、怠らないようご注意を。
※取材協力:メカニック肥後守