オフロードバイクの中でも、群を抜いて歴史が長く、多くのライダーに愛されているセロー。あまりにその素性が良すぎて、実は編集部でも1台セロー250を持っているほどだ。
ところで、2016年に伝説となったセローをご存じだろうか。
荒れ狂う重馬場で、そのセローは1番時計を出した
エンデューロで日本一を決めるシリーズ、全日本エンデューロ選手権。この2016年のRd.3-4は北海道日高町でおこなわれた。日本一美しく、そして難しいと言われているオンタイムレース日高2デイズエンデューロは、さらに牙をむいた年だった。降り注ぐ雨によって、容赦なくマディになるなか、鈴木健二はDAY1のテストを2つ1番時計で納めていて、さらに状況が悪化したDAY2でも1つ1番時計を出した。ワダチが深くなりすぎたラストラップは「もう前にすすめなくなったからね」と笑う。
全日本エンデューロ選手権は、その参加バイクの99%がレーサーである。足回り、エンジン出力、共にセロー250では不足するものが多すぎる。
こちらが、その伝説のセローだ。
レーシング仕様に特化された各部
実は、前年度もセローで参戦している鈴木は、この2016年からエキゾーストをデルタへ変更。取り付け部の頑丈さから、チョイスしたという。
当時、まだ開発中だったテクニクスのTGR5.1を装着。リザーバータンクが追加されたリアサスペンションは、フルアジャスタブルになり、鈴木の激しいライディングをも受け止めてくれた。
このセローに付いていることが知られてから、売り上げがドーンと伸びたというワイズギア製パワービーム。高速などで威力を発露する剛性メンバーだが、ギャップ通過時の振られかたがまるで違うという。エンデューロの場合、モトクロスバイクをベースとしたエンデュランサーを使うため、剛性を落とすことが多いが、セローは逆。
アップフェンダーは、ランツァ用がそのままはまるとのことで、採用。
効くかどうかはわからないが、エンジンを冷却できるように穴を開けてきた。
背の低い鈴木だが、セローでは窮屈なポジションになってしまうので、ワイズギアのハイシートを使っている。
トレールバイクでレースに出ること
ダートライディングは、レーサーというツールを持って、最大限に面白さを発揮する。それが自らにあっているものであればなおさら。トレールバイクは、公道で走ることを大前提に開発しているため、どうしてもスポイルされるところが出てくる。
ただ、1990年代のエンデューロシーンはトレールばかりだったのだ。
トレールバイクだから出れないレースは、今のところ日本にはほとんど存在しない。腕さえあれば、この通り上位に食い込めるし、「レーサーがないからレースをあきらめよう」というのではもったいない。全日本エンデューロにセローで出ようという話は、さすがに極端だが、WEXやJNCCのFUNGPであれば、かなり多くのライダーがトレールで参加している。JNCCの全日土曜には、トレール専用の体験レースもあって、爺ヶ岳などのスキー場コースを楽しめる。
迷っているならぜひ、そのセローでレースに出てみないか。新たな世界が、あなたを待っている。