1月25日、アメリカのカリフォルニア州にあるエンゼルス・スタジアムにてAMAスーパークロス選手権第3戦アナハイム2が開催されました。
注目ポイント
・前戦で負傷の下田丈、指2本を骨折しながらも第3戦出場へ
・ヒート・メインイベントでのバトルはまさに"Samurai warrior"
・勝者乱立のシーズン序盤、パワーバランスは?
酷い骨折だが欠場せずレースに挑む下田丈
Team HRC Hondaの下田丈は、開幕戦のアナハイム1で劇的な優勝を飾ったものの、続く第2戦サンディエゴでは、計時予選で他チームのピットボードが当たってしまい左手の小指と薬指を骨折。それでもテーピングを巻いてレースに強行出場、メインイベントでは怪我直後とは思えないようなバトルを展開して観客を沸かせ、7位でゴールしました。レース後に更新されたinstagramでは、小指の付け根と第二関節の間が大きく曲がった写真がアップされていました。怪我の酷さと、その状態での大善戦に再度驚く人も多かったのではないでしょうか。
2戦を終えた時点でのランキングは3番手。首位のジュリアン・ブーマーとは7ポイント差と、チャンスは存分に残っているものの、残りのシーズンの行方は怪我の具合に左右されるとみられます。
第3戦の出場可否は、レース当日の練習走行を終えて判断するとした下田。テーピングや専用のサポート器具を身につけ、ハンドガードとナックルガードを装着したマシンで走った下田はレースへの出場を決意しました。ピット前に遊び心のある画像を掲げ、ファンを楽しませるシーンも見られました。
下田は計時予選を10番手で終え、ヒート1に出場します。予選トップのブーマーとは3.3秒差と、怪我を負った手と激しいコースに苦戦しているように見えますが、レースでの強さが光る下田がどこまで上がれるかが見どころとなりました。
ヒートレースは抜群のスタート、メインイベントは追い上げのレースに
ヒート1ではイン寄りのグリッドから華麗なスタートを決め、3番手でファーストコーナーへ飛び込んだ下田。最初のリズムセクションですぐに2番手に立ち、トップを走るコティ・ショックを追いますが、徐々にショックが下田を引き離します。その後、下田はルーキーのコール・デイビスとジョードン・スミスに前を譲り4番手に。レース終盤、これがデビュー戦となるドリュー・アダムスが後ろに迫ってきますが、下田はこれを封じ、4位で6分+1周のヒートレースを終えてメインイベントへと駒を進めました。
怪我を負いながらスタートを成功させ、終盤にナイスディフェンスを見せた下田に対し、実況からは「Samurai warrior!(侍の戦士だ!)」との賛辞が上がりました。
15分+1周のメインイベントでは、スタートのわずかな出遅れにより17番手でレースをスタート。1周目で10番手にまで順位を上げると、2周目には9番手、3周目で8番手と徐々に遅れを取り戻していきます。
レース中盤、下田はヒートレースでも終盤に争ったアダムスとパーカー・ロスの6番手争いに追いつきました。しばらく後ろで様子を伺いますが、残り5分のところで2台を連続でパスし、6番手にポジションを上げます。その後は単独走行に入り、6位でゴール。このレースでも出来得る限り最高の順位でフィニッシュし16ポイントを獲得、ランキングでは首位のブーマーと13ポイント差の4番手となりました。
250、450クラスとも3戦で3人の勝者、混戦のシーズン開幕
250SX WEST、そして450SXは開幕から3戦を終え、どちらも3戦全部で異なる勝者が誕生している今シーズン。250SX WESTでは開幕戦を下田が制し、第2戦ではブーマー、第3戦では昨年チャンピオンのヘイデン・ディーガンが勝利を挙げています。ポイントリーダーのレッドプレートは3戦全てで表彰台を獲得しているブーマーが保持していますが、徐々に調子を上げてきたディーガンは今ラウンド、圧倒的な走りでシーズン初勝利を収めました。ここで勢いがついたディーガンはこの後、さらに強さを増してくるでしょう。
開幕戦で優勝した下田は、怪我こそなければこのチャンピオン争いの筆頭候補となっていたことは確実ですが、残念なアクシデントによりこの数戦はトップ争いには絡めずにいます。それでも、怪我の具合を考えると信じられないポジションでゴールしている下田の評価は高く、ポイントのロスも最小限にとどめているため、怪我が治れば再び優勝争いに顔を出すことになるはずです。
また、今回は終盤の転倒で惜しくも表彰台を逃したものの、開幕戦から3位、2位、4位とコンスタントに上位ゴールを果たしランキング3番手につけるスミスや、デビュー2戦目でヒート優勝、そして今回3戦目で表彰台にまで漕ぎ着けたルーキーのデイビスなど、今年も250SX WESTには役者が揃っています。
ルーキーといえば、今回も驚きの新人が登場しました。一昨年まで下田が所属していたプロサーキットカワサキは開幕戦から病気や怪我による欠場が相次ぐ形に。そしてその代役として16歳のドリュー・アダムスがこのラウンドでデビューを果たしました。初戦ながら存在感のある走りを見せたアダムスはヒート1では下田に次ぐ5位、メインイベントでは8位と大健闘。この後どのような形で出場するかはまだ分かりませんが、今後が楽しみなライダーが増えました。
450SXでは開幕戦をチェイス・セクストン、第2戦をイーライ・トマックが獲り、第3戦で昨年チャンピオンのジェット・ローレンスがシーズン初優勝を果たしました。ただ、それぞれの勝者は別のラウンドで転倒や出遅れなどにより下位に沈むことがあったため、レッドプレートはコンスタントに上位を獲得しているケン・ロクスンの手に。また、今回ヒートレースではジェイソン・アンダーソンがジェットを抑え優勝、メインイベントでもトップ勢が至る所で激しいバトルを展開したりと、まだパワーバランスが定まっていない様子が見えます。
第4戦は次週2月1日、アリゾナ州のグレンデールで開催されます。このラウンドはトリプルクラウンなので、いつものレースよりも重要性が増します。これを終えると、250SX WESTは2月23日の第7戦までお休み。ショートブレーク前の最後のレース、下田は怪我の痛みに耐え、シーズン後半戦のチャンピオン争いに向けて上位ゴールを果たせるでしょうか。目が離せません。