史上初のオートバイによる北極点・南極点到達、チョモランマ(エベレスト)世界最高高度6005m達成、パリ・ダカールラリー二輪部門へ日本人として初めて挑戦、などなど……。これまで数々の挑戦を成し遂げてきた風間深志氏が、実は本人にとってこれが初めてという日本一周ツーリングに出発。連載Vol.14をお届けします!
残る「16極点」はあと3つとなり、僕の日本一周ツーリングはいよいよオーラスへ突入。
今日は大分県佐伯市を出発し、海岸沿いを走って宮崎を経由し、九州最南端であり日本本土最南端の鹿児島県「佐多岬(さたみさき)」を目指す。
朝8時に出発したが、九州は山深く、思っていたよりもはるかに気温が低く、東九州自動車道を震えながら南下する。外気温計の表示は7℃。朝の天気予報では最高気温20℃なんて言っていたので、完全に高をくくっていた。寒い!
ただし、空気が澄んでいるので青空がじつに美しい。鼻歌まじりにのんびりペースで流してると気分が持ち直してきた。これならどこまでも行けそうだ。
さて、ここらで下道へ降りて日南(にちなん)の景色を楽しみながら最南端を目指そうじゃないか、と宮崎自動車道の宮崎ICを降り、いくらか走ると、なんと今日は有名な「青島太平洋マラソン」の開催日でこれ以上通行ができないという。再び高速道路の入り口に戻ることになってしまった。これで約1時間のロス。あーあ。
次にやってきたのは宮崎県の最南端に位置する都井岬(といみさき)。岬までの道はご多分に漏れず難度高めのワインディングロード。ようやく岬の入り口へ辿り着いて料金所のおばちゃんに通行料金を支払う。ちょっとした会話をして走り出すと、おばちゃんの口からとんでもない情報がもたらされた。
「途中、クマがいるから気をつけて!」
ええっ! クマですか!? 僕は思わずスロットルを緩めた。
「いや、ウマですよウマ」
な、なんだそうか。そりゃそうだよな(九州は野生の熊が絶滅したと言われている)
かくして眩しく光る日向灘を一望する都井岬は素晴らしい場所だった。絶景をバックに日本の少ない在来馬の一種「御崎馬(みさきうま)」が長閑に草を食んでいる。ここでしか目にできない風景だ。
都井岬から2時間半後、16時ごろに今日の目的地である佐多岬に到着する。ここからの景色はさすがに迫力満点。海へ突き出た半島の風景を眺めれば、誰もが「ここが日本本土の陸地が海に沈む最南端の地か」と思いに耽ること間違いなしである。
その夜、付き合いのある方々に鹿児島県南大隅町(佐多岬がある地域)に集まっていただき、一緒に食事をすることになっていたのだが、何と「日本縦断、おめでとう!」とお祝いの花束をもらってビックリ。あまり意識していなかったが、今日は宗谷岬〜佐多岬間の日本縦断を成し遂げた日でもあったのだ。
皆さん、本当にありがとうございました!