オフロードの競技ではタイヤチューブの代わりに、パンクすることの無いスポンジのような緩衝材「ムース」を入れることがある。特にエンデューロでは上級者御用達のアイテムだ。なぜ上級者なのかというと、チューブより扱いが難しいと言われてきたから。ところが! このX-GRIPは万人にお勧めできちゃうかもしれない……

画像: ちなみに…イシゲさんこと池田智泰さんに教えてもらう、ムースタイヤ交換(10年位前の思い出雑談付き) youtu.be

ちなみに…イシゲさんこと池田智泰さんに教えてもらう、ムースタイヤ交換(10年位前の思い出雑談付き)

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1984年に生まれたムースは、進化を遂げる

四輪でも安全のため、パンクしないタイヤが求められ続けており、昨今ではタイヤウォールの硬さを保つことで、パンクしても事故につながりづらいランフラットタイヤが登場しているが、パンクしないわけではない。だが、オフロードバイクの分野では1984年にミシュランが開発したビブムースによってパンクしないタイヤが市販化され、今日まで競技分野において活用され続けている。

画像: 2006年、ISDEニュージーランドでムースタイヤを交換する内山裕太郎

2006年、ISDEニュージーランドでムースタイヤを交換する内山裕太郎

エンデューロライダーにとってもはやムースはおなじみのパーツなのだが、この10年の進化には面白いものがあった。それを知るためにまずは2000年台の話をしておこう。2000年台当時、ムースは日本ではまだまだマイナーな存在で、ISDE(インターナショナルシックスデイズエンデューロ)に参戦したライダーたちが、お土産にメッツラー製のタイヤチェンジャーとタイヤレバーを買って帰ってくるくらいしか、ムースの交換用ツールを入手する方法も無かった。しかも、なんとかして装着できたとしても、その頃のムースは硬く重く、初心者にはタイヤをグリップさせることが難しかったし、バネ下の重量増によって上級者もライダビリティをスポイルしてしまうことを嫌い、チューブを選ぶライダーが多かった。

画像: 2006年、ISDEニュージーランドでムースタイヤを交換する池田智泰

2006年、ISDEニュージーランドでムースタイヤを交換する池田智泰

それでも日本のエンデューロライダーたちに浸透し始めた理由は、おそらく初期のSUGO2デイズエンデューロで1日目の終わりにタイヤ交換をするとボーナスタイムが得られたからだ。チューブタイヤを交換してもいいのだが、慣れればムースのほうが圧倒的に早く交換できる。当時、日本に輸入されるムースやアイテムの数が徐々に増えていったのを覚えている。筆者は、北上のショップさんからいただいた特製のムースチェンジャーを使って木古内STDEに臨んだ過去もある。タイヤレバーはたしかFIRST RACINGのものだった。その頃はまだ「ムース交換するならこれ!」と決まったアイテムが無かったのだ。

画像: 2013年、エルズベルグロデオにて田中太一のタイヤを用意するゴールデンタイヤスタッフ

2013年、エルズベルグロデオにて田中太一のタイヤを用意するゴールデンタイヤスタッフ

そんなムースが現在のような姿に変革するのは、2010年台前半のこと。おなじみエルズベルグロデオではゴールデンタイヤが開発した初期のガミータイヤが猛威を振るい、誰もがゴールデンタイヤを履いていた時代。ガミータイヤを硬いムースで使っても効果は半減してしまうので、ゴールデンタイヤはムースを加工して柔らかくしていたのだが、その加工方法は秘密にされていて、サポートライダーの田中太一にもタイヤの中身を「ゼッタイに見てはならない」とNDA(秘密保持契約)を言い渡していた。田中は渡されたタイヤを触って「まるでチューブみたい! 最高にいいですね!」と感動していた。もともと、何度も使って痩せたムースをあえて入れたり、穴をあけて柔らかくするノウハウはあったのだが、この頃からその手法がどんどん進化していた。

そして、2010年台後半にはムースそのものが変わっていく。最初から柔らかい素材のムースが登場したのだ。発泡の仕組みが違うのか、反発力や減衰力も最適化されていった。今回紹介するのは、その進化版ムースの最新版だ。

選べるムースの柔らかさ。多くのシチュエーションにお勧めしたいスーパーソフト

今回、永遠のビギナーライダー、ジャンキー稲垣がテストしたのは、X-GRIPのムース2種。EH-2(0.8kgf/cm2相当)と、SUPERSOFT EXTREME-2(0.3~0.6kgf/cm2相当)だ。定番とされているミシュランのビブムースが0.9kgf/cm2相当だから、EH-2でもすこし柔らかめということになる。SUPERSOFT EXTREME-2は、文字通りかなり柔らかい。SUGO2デイズエンデューロに参戦するために輸入元のラフ&ロードから提供していただき、あらためて2種類を比較してみた。この頃はまだレースを攻めて走れると思っていたので、ハードパック路面でのタイヤのヨレなどを確認するため埼玉県のオフロードヴィレッジへ赴いた。

画像1: 選べるムースの柔らかさ。多くのシチュエーションにお勧めしたいスーパーソフト

X-GRIP
EH-2(0.8kgf/cm2相当)
サイズ :140/80-18
価格  :¥14,500(税別)

X-GRIP
SUPERSOFT EXTREME-2(0.3~0.6kgf/cm2相当)
サイズ :140/80-18
価格  :¥15,500(税別)

画像2: 選べるムースの柔らかさ。多くのシチュエーションにお勧めしたいスーパーソフト

まずはEH-2。FIMガミータイヤを履いてテストしたが、僕の腕だとヨレたりする感触はまったくなくて、むしろ柔らかいコンパウンドがハードパックにマッチしてとてもいいフィーリング。チューブとほとんど変わらないハンドリングで乗りやすい。昔のムースのようにバネ下にドシッとした重さを感じないところも素晴らしい。言われなければ、これがムースかどうか僕には判別できないだろう。FIMガミータイヤなのでタイヤのケース自体の剛性も柔らかく、すこしたわませて走ることができる。履いた瞬間に、これだなと直感した。もうスーパーソフトを試す必要はないだろう、いつかハードエンデューロに出るときにスーパーソフトを履いたらいいんじゃないか。

画像: 絶妙の柔らかさ! SUPERSOFT EXTREME-2

絶妙の柔らかさ! SUPERSOFT EXTREME-2

とはならず(編集部注:当たり前です)、せっかくなのでオフロードヴィレッジでタイヤ交換の練習も兼ねてSUPERSOFT EXTREME-2に履き替える。ところがここで問題が発生。EH-2は、走ってきてすぐに交換しようとするとムースが熱で張ってパンパンになってしまっており、タイヤレバーをビードの間にいれづらい。なるほど、想定外のことが起きるモノなんだと勉強になった。練習も兼ねていたので10分以内に交換しようと頑張ったのだけれど、気温も高く吐きそうになるほど疲労している状態では思うように進まず……。やっとの思いでEH-2を外し、SUPERSOFT EXTREME-2の装着にとりかかると、これが圧倒的に交換しやすい。というか、ムース交換というのは最初から空気圧がパンパンに入ったタイヤを強引に変えようとするような行為だから難しいのであって、0.3~0.6kgf/cm2相当ならもはやチェンジャーすら不要に思えるほど容易に交換できてしまうのだとわかった。

画像: パンパンになってしまったEH-2にお手上げの僕。そして、え? いけるでしょ? と楽々外してみせるベテランIA大川原潤

パンパンになってしまったEH-2にお手上げの僕。そして、え? いけるでしょ? と楽々外してみせるベテランIA大川原潤

画像: だってもう吐きそうなんですもーん

だってもう吐きそうなんですもーん

画像: SUPERSOFT EXTREME-2はすっごい交換しやすくて、これならチューブより圧倒的に楽。まじでこれしかない。ずっとこれを履いていたい。交換しやすいから

SUPERSOFT EXTREME-2はすっごい交換しやすくて、これならチューブより圧倒的に楽。まじでこれしかない。ずっとこれを履いていたい。交換しやすいから

画像: 乗り心地もグッドであった

乗り心地もグッドであった

走ってみると、さすがにオフロードヴィレッジでは僕の腕前でも盛大にタイヤがよれるのがわかった。マシンもヤマハYZ450FXなのでパワーがあり、スロットルを開けた時のぐにゃっとくる感触が気になる……のだが、だんだん走っているうちにスロットルを丁寧に開けたらいいのだとわかりはじめた。走り方を工夫すればいいし、SUGOではこんなハードパックは少ない。タイヤもガミータイヤではなく、IRCのGX20ソフトを使うのでもう少ししっかりした感触になるだろう。なんせ、SUGOでタイヤ交換をしやすいほうがいいのでX-GRIP SUPERSOFT EXTREME-2に、GX20ソフトを組み合わせるのがベストなんじゃないだろうか、とあっさり先程の考えを翻すに至った。当日、ついてきてもらった元エンデューロIAライダーの池田智泰さんからも「そのとおりだ!」と太鼓判を押してもらった。日和ったわけではない。決して。

画像: SUGO2デイズエンデューロにて。ってか乗ってないじゃんんんん

SUGO2デイズエンデューロにて。ってか乗ってないじゃんんんん

画像: 沢の感触がめっちゃよかった。とにかく前に進みまくる

沢の感触がめっちゃよかった。とにかく前に進みまくる

SUGO2デイズを走ってみると、その組み合わせが素晴らしすぎてびっくりした。タイヤを押してみるとだいぶたわむのだけれど、よれ感はほとんど無い。もちろん、アスファルト区間で多少感じるけど、そんなのは競技に関係がないから問題ない。それよりも沢の中でのグリップの掴みやすさ、というかもはや何も考えなくともヨンゴーのスロットルをひねるだけでどんな岩も掴んで越えていく推進力に、僕は感動しながら、とても、とても、その勢いに、疲労しまくった……。そのくらい”バイクは”前に進むのだ。今回のSUGOは押したから疲れたのでは無く、グリップしすぎてライダーがマシンの勢いについていけず、振り回されて疲れたというのが正しい。押した記憶はほとんど無いほどグリップした。昨年参加した日高2デイズエンデューロではサイズ違いのムースを履いたので、ムース部分がない大気圧の部分があった。その時は気が付かなかったが、しっかりタイヤ内を柔らかいムースが満たしている状態だと感触が本当に空気そっくりなのだ。

その後、その組み合わせのままでいろんなところを走っているのだが、本当にオールマイティな組み合わせだなと感じている。ホームコースのモトクロスヴィレッジはオフロードヴィレッジと違いソフト路面なのだけれど、そういうところでもグリップ感が掴みやすいのがとても好印象だ。よれることなどまったく感じないし、グリップしすぎるモトクロスタイヤよりもスライド感覚がわかりやすくてタイトターンがうまく決まりやすい。僕の腕前では、ジャンプでリム打ちするような感覚もないし、いつも同じこと言ってるようで恐縮だが、「もうこれでいいんじゃないか」と今回も思ったのだった。

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