まず最初に断りを入れておくと、今回試乗させていただいたPT125は、スタンダードな状態ではなかった。西東京で販売店を営む鈴木オートがよりオフロードを楽しく走れるようにカスタマイズを施したもので、カスタム内容はハイカム、ビッグキャブ、オイルクーラー、ファイナル変更で、すべてamazonで買える中国製。パーツ代の合計は34,000円程度とのこと。
中国製カブ型エンジンに、本格的なオフロードバイクの車体
最初に車体について触れていくと、このPT125はフロントタイヤが19インチ、リア16インチのいわゆるミニモトだ。しかし、見ての通り、シート高は高めでスペック上でも875mmあるため、身長173cmの僕が跨っても小さくて窮屈な感覚はほとんどなく、コンパクトで安心感がある、というイメージだった。
エンジンは、いわゆるカブ型。横置きの空冷SOHC2バルブ単気筒の124ccで、最大出力は5.6kW、最大トルクは8.5Nm。キックペダルがついているが、セルスターターも搭載している。
鈴木オートによってカスタムされたビッグキャブがこちら。
同じくカスタムされたオイルクーラー。ノーマルでの油量700mlのところを約850mlまで増量している。街乗りならノーマルでも問題ないが、高回転を使い続けるようなオフロードレースでは、これがないとすぐに熱ダレを起こしてしまうとのこと。
サイレンサーはコンパクトで、まるでカスタム済みのような見た目だが、これでノーマル。音は小気味よく、決してうるさすぎない仕様。
ステップはゴリゴリのオフロード仕様。グリップも申し分ないし、幅広で荷重もかけやすい。シフトチェンジはマニュアルクラッチで、一番下がニュートラルの4段変速。
フロントサスペンションは見ての通り、倒立フォーク。左側にコンプレッション、右側にリバウンドのアジャスターが装着されている。
リアショックはリンクレス。こちらにはプリロードも含めて調整機構は存在しない。
ハンドルバーにはノーマルでテーパー形状のものが採用されている。ノーマルの状態でマウント位置が高めに上げられているため、長身のライダーでも窮屈さを感じにくい。
最低地上高は310mmあり、オフロードでも安心。申し訳程度だが、アンダーガードも標準装備されている。
燃料タンクは8L。カブ型エンジンのため燃費はとても良いので、原付2種の高速道路を使わないツーリングには必要十分と言える。輸入元のアライブプラスによると郊外実測28km/Lとのこと。
スプロケットはノーマルでフロント13丁・リア43丁のところを、鈴木オートではフロント12丁、リア46丁に変更。かなりショートな特性にし、オフロードの瞬発力と登坂性能を高めている。
チェーンはノーマルで425サイズのところを420サイズに変更。
純正タイヤはCHAOYANGという中国メーカー。サイズはフロント70/100-19、リア90/100-16を採用している。
ちょっとだけ気になったのは、リアのブレーキディスク。公道でゆったり走行する分には気にならないが、オフロードで走るにはもう少しサイズアップできると嬉しい。
回して乗る、アグレッシブなエンジン特性
試乗したのは某林道。ちょっとガレてる程度で、基本はフラット。難しいところは一切ない。頑張ればカブでも走れるような道だ。それでも少し登りがあるため、PT125のスタンダードだと「まったく登らない」というのが鈴木オート鈴木正彦氏の談。
しかしハイカム、ビッグキャブによってモリモリ仕様にカスタムされたこのPT125は、車体の軽さも助けてくれて、ぐいぐい登っていく。ダート区間で一度止まっても、再発進時だけ2速で、すぐに3速に上げれば問題なく走れた。さらに言えば半クラッチを少し当ててやれば3速発進も可能だ。
林道では基本的に3速固定で楽しく走れるが、公道だと4速の出番が欲しいところだ。
身長173cmの僕が跨った時のサイズ感はこんな感じ。89kgという車重と、このコンパクトさのおかげでライン取りが自由自在。途中、舗装されているところに水が流れていて、不意にリアがツルッと滑ったのだが、突然のスライドにも全く破綻せず、落ち着いて持ち直すことができた。
まるでモトクロッサーのような、ほぼフラットなシートのおかげで、ライディングフォームも自由が効く。私服で跨ってスタンディングで腰を後ろに引いた時、リアのサイドカウルが少しふくらはぎに当たったが、モトクロスブーツを履いてニーブレースを着けたら、全く気にならなかった。
鈴木オートによるファイナル変更のおかげで、かなり回して乗る仕様になっていて、さらにハイカムの導入でノーマルだと7000回転くらいが限界のところを8500回転くらいまで使えるようになっている。高回転をキープしてガンガン登っていくのが、ものすごく楽しい。
常々思うことなのだが、僕ら一般ライダーは250ccもあってもその排気量を扱いきれない。重いバイクに振り回されて走るよりも、軽くて小排気量のマシンをガンガン回して走る方が、バイクも安定するし、楽めるのだ。無論、レースとなると絶対的に排気量がモノを言うこともあるが……。
ジャンプも飛べる足回り!
フレームはアンダーボーンもなく、太いわけでもなく、どう見ても剛性が高いようには見えない。しかし、その分、サスペンションがかなり硬い。いわゆる乗った時のギクシャクする感じは全くなく、まるでモトクロッサーのようなサスペンションに感じる。
鈴木氏によるとオフロードヴィレッジのAコースのジャンプは「普通に飛べる」らしい。
なお、鈴木氏はこのPT125でWEX E高井富士に出場しており、50分レースの4st125 OPクラスで優勝、総合でも12位に入る走りを披露している。
ノーマルは街乗り最高。通勤・通学にベストマッチ
今回、ノーマル仕様のPT125には試乗できていないのだが、鈴木氏の話によると、エンジンがマイルドで通勤・通学に最適とのこと。スプロケットをショートにした状態でも一般道60km/hの走行は普通に問題なくできたが、メーカーによると規定最高速度90km/hとなっているので、ノーマルスプロケットならば、だいぶ余裕をもった60km/h巡航ができることが想像できる。
そして何よりも、原付2種登録できるため、任意保険をファミリーバイク特約で賄えるのが嬉しい。そして冒頭でもお伝えした通り、30万円を下回る定価。オフロード初心者やリターンライダー、レーサーを所有する人のセカンドバイク、そして通勤・通学まで、幅広い需要がありそうだ。
ライバルと言えば中古車も含めばKLX125が最も近い存在だろう。しかしそれよりも圧倒的に軽く、スタイリッシュ。成人男性だと少し窮屈なKLX125に比べ、ほとんどフルサイズのようにリラックスしたライディングが可能だ。
そのため、BETAのRR4T125LCやアプリリアのRX125のような4スト125ccのフルサイズマシンの方が、近しい存在なんだと思う。もしくは電動オフロードバイク、サーロンか。
なお、Nicot Motoは中国のメーカーで、これまではトライクをメインに発売してきた。そして輸入元のアライブプラスはこのPT125が出る前からNicot Motoの製品を扱ってきており、アフターなどの対応は信頼できるという。
PT125 SPEC
全長:1940mm
全幅:760mm
全高:1170mm
ホイールベース:1320mm
シート高:875mm
最低地上高:310mm
乾燥重量:89Kg
エンジンモデル:YXW12(中国製)
エンジンタイプ:空冷 SOHC 2バルブ 単気筒
スターター:セル・キック
圧縮比:9.3:1
排気量:124cc
最大出力:5.6(Kw)
最大トルク:8.5(N.m)
イグニッション:CDI
変速機形式:4段変速
燃料タンク容量:約8L
規定最高速度:90km/h
フロントブレーキ:ディスク
リアブレーキ:ディスク
Fタイヤサイズ:70/100-19
Rタイヤサイズ:90/100-16
参考燃費:郊外実測約 28Km/1L