上下に分割される沢
体力の限界に挑戦
今大会は3時間レースとして始まっていたのだが、実はレース中に二度、30分の延長が決定されていた。これは「『スタジアムヒル』から『やり直しキャンバー』のセクションの通過に思ったよりも時間がかかってしまったのですが、せっかく作ったコースをもっと走って欲しかったため」とレース後に藤田は説明した。
また、レース開始から1時間と2時間で、規定のCPに到達できなかったライダーは足切り(レース終了)というルールがあった。最初の1時間半で脱落となってしまったのは11台。そして次の2時間半でさらに6台が脱落していた。G-NETチャンピオン経験者の高橋や水上でさえ、ここでレースを終えている。これは各セクションに配置されるスタッフの人数の問題で、ライダーが通過した前半のセクションのスタッフが、後半のセクションに回り込み、監視やチェックを担当していたからだった。
つまりこの時点で走っているのは先頭の藤原と、それを追う山本、柴田。そしてマーシャルの田中の計4人だけだったのだ。
そんなわけで、藤原が後半のメイン「爽沢会」(名前に反して全く爽やかではない沢)に到達した時、コース脇にはレースを終えたライダーたちが詰めかけ、藤原に声援を送っていた。
「トライアルマシンなら、クリーン(地面に一度も足をつかずに走破すること)だよ」レースを離脱して観戦に来ていた波田はこの沢を見て、こう言った。難易度としては現在のIAレベルだそうだ。しかし、慣れないエンデューロマシン(藤原がライドするのはGASGASのEC250。今回のレースのためにビバーク大阪が貸与したもので、この日初めて乗ったマシンだという)と、ここまで約2時間半戦ってきたスタミナ、そしてパンクしたリアタイヤで挑む藤原にとって、ここはまさに「難所」だったに違いない。
約30分かけて沢を中段まで登ってきた藤原。コース脇でレースを見ていた藤田は二度目の30分延長を決断した。コースマップを見てもらえればわかるのだが、この沢はまだ最終セクションではなく、セクション24。34あるセクションの7割にしかならないのだ。それでも「パンクさえしていなければ、完走できたかもしれない」と藤田。
流石のトライアルテクニックを活かし、果敢に岩に挑む藤原。しかしこの時、沢の入り口に2人のライダーが姿を現した。
山本と田中だった。最後尾からスタートした田中が柴田を抜いて山本にすぐ後ろまで迫っている。なお、田中のタイヤはシンコーの540DCだったが、まさかのムース仕様。「540DCでベストパフォーマンスを求めるならムースはありえない」と藤田は言うが、田中は「世界のハードエンデューロでは100%ムースなんです。エルズベルグロデオのような絶対に結果を残さないといけないレースでパンクこそありえない」と世界基準でライドすることの重要性を教えてくれた。
藤原は沢の下流の最後の岩を、足で木を蹴りながら押し上げ、クリア。
この頃、柴田も沢に到着した。
そしてレース開始から4時間が経過。藤原はセクション26「エスカレーター」と名付けられた沢の上流の中段まで進み、レースを終えた。