ワイヤーマウンテンの死闘
鈴木健二が今回、新型のYZ125を持ち出してきたことはライバル達を驚かせた。セルを後付けしたYZ250Xの方が、明らかに戦闘力は高いと思っていたからだ。しかしこのワイヤーマウンテンの鈴木の走りは、その考えを完全に覆してくれるものだった。
ワイヤーマウンテンはものすごい斜度のロングヒルクライムだ。最初は少し開けているが、中盤以降は木が生い茂り、ラインの選択が難しい。しかも、新設セクションでスタッフの試走でしか走られていないので、ラインはほとんどついていない。
頂上から見ていた観客の目に現れた順番は、鈴木、山本、水上、高橋、ZERO、といったところ。
鈴木をして、こんなことになる。これが難易度☆4ワイヤーマウンテンだ。しかしそれでも鈴木は一歩リードしており、一番上までコマを進めていた。
高橋、水上、ZERO、山本、かすかに大塚の姿も見えるだろうか。
鈴木がコーステープギリギリで見せたアクセルターン。
しかしなんと、ここで一歩抜き出たのは大塚だった。後方から一気にスタックしている集団に追いつくと、そこからほぼ直登ラインを見定め、2回目のアタック。ほとんどイゴらず(イゴる:主にヒルクライムやガレなどの難所で、バイクを押したり持ち上げたりしながら少しづつしか進む様子)にトップでこのワイヤーマウンテンを抜けていった。
この「イゴる」という言葉。ハードエンデューロレースの現場では知らない人がいないほど使われているのだが、読者の皆様の中には聞き慣れない方もいるかもしれない。いつもはなるべく避けて文章を書くように努めているのだが、今回ばかりはこの言葉を使った方が、よりリアルに記事を楽しんでいただけると、思い、解禁させていただいた。
この「イゴり」をする上で、ものすごく重要なのが、バイクの軽さと、セルボタンなのだが、鈴木のYZ125はこの「軽さ」という点で、とてつもなく優秀だったのだ。
大塚、鈴木が抜けていったあと、ワイヤーマウンテンで「イゴる」山本、高橋、水上、佐々木、メイドちゃん。ここから、山本、高橋は比較的早期にクリアし、前の2台を追っていった。