超絶に丈夫であること。それは常識外れの製造法に由来する
パイプ径をただ薄くすれば、剛性だけでなく、強度が落ちてしまう。フレームも同じで、初期のアルミフレームはとにかく太く、破断しないよう強度を優先して設計されていた。たえまない開発努力によって、剛性と強度のバランスをとってきた歴史があるわけだが、TAKE YOUR MARKSも同じように剛性を落としながらも強度を上げるという無理難題に応えている。
ハンドルにおいて、もっとも過酷なのは転倒時の衝撃だ。曲がってしまうならまだしも、折れてしまえばもう走行は不可能だ。そこで、アルミテーパーハンドルのほとんどは、スウェージング→ベンド加工をしたあとに、熱処理をかけて強度を引き上げているのだが、ISAの場合は様々な条件を試験したのちにT76処理をおこなっている。そして、ここからが常識外れなのだ。ISAの場合、成型する前に熱処理をかけていることがポイントである。
つまり、わざわざ強度を増やした状態から、ベンドマシンにかけるわけだ。熱処理をかければ、金属はひずんでしまうから、精度を出せないが、熱処理をかけたあとならば、しっかり精度が出せる。さらには、素体で熱処理をかけるほうが強度も出る。ただ、強度が上がっている分、加工の難易度が高くなってしまうわけである。常識ではそんなコストに見合わない製造工程は踏まない、ということらしい。
伊佐氏は言う。「メイドインジャパンのハンドルですから。精度も高ければ強度も強い。そこをみてもらいたいですね」と。強度試験の結果、荷重4200N・35mmの押し込み試験で折れてしまったり、クランプが滑ってしまったりするハンドルが多いなかで、荷重6000N・45mmの押し込み試験でTAKE YOUR MARKSは元の形状に戻ったという。弱い衝撃にたわみ、強い衝撃で耐える。相反する性能をハンドルに仕込んだことで、我々ライダーは「ハンドルで剛性チューニングをする」という新たな手法を手に入れることができたわけだ。