レースは1周でレッドフラッグが振られ、仕切り直し。スタート直後のジャンプの着地でクラッシュがあり、担架が出る事態となったからだった。
そして再スタート。横山は集団に呑まれてしまい、ほぼ最後尾からの追い上げレースとなってしまった。
スタートをうまく決めた平山力を交わして2周目にトップに躍り出た内田篤基がレースをリード。IAルーキーの袴田哲弥や岸桐我、大城らがそれに追いすがりトップ争いを面白くした。そんな中、横山は一周目を18番手で周回。
レース中盤、平山や袴田、岸がだんだん離されていき、優勝は内田と大城の二人に絞られたかに見えた。しかし、観客の目はしっかり横山を追っていた。
大城や内田よりも2〜3秒速いラップタイムを刻む横山は、レース開始15分経過時点で6番手。ホールショットの平山をロックオン。
年間チャンピオンのかかった最終戦は、転倒やクラッシュで順位を下げ、ノーポイントに終わることが一番恐ろしい。そのためランキングトップのライダーは一般的に「ライバルが何位の場合、自分が何位以内に入ればチャンピオン決定か」を強く意識してレースを運ぶ。つまりそのレースは勝てなくても、結果チャンピオンが獲れればOK、というスタンスをとるのだ。しかし、横山の勢いはチャンピオン圏内の3位に上がっても止まらなかった。
それどころか一層スピードをあげ、ついにこのレースただ一人のラップタイム1:29秒台を叩き出した。この日のベストラップはIA1能塚智寛の1:29.363。29秒台はこの他に小方誠と渡辺祐介しか記録していない。そして20分経過の14周目、ついに横山は大城を抜いて2番手に浮上。
さらに26分経過時に内田もパスし、横山がトップに出ると、ほぼ最後尾からトップまで追い上げてきたスピードと、守りに入らないその姿勢に、場内で大きなどよめきが起こった。そしてそのままトップチェッカー。横山は見事にプレッシャーと逆境に打ち勝ち、ヒート1でチャンピオンを決めたのだった。
ちなみにヒート2ではスタートから飛び出し、一度も前を譲らないまま独走状態で優勝。今シーズン8ヒート中7ヒートで優勝と、日本に収まりきらない器の大きさを示してくれた。