KTMのエンデューロバイクは、純レーサーながらある時期からどんどん扱いやすくなっていった。エンデューロのレジェンドにして、EXCシリーズの開発に携わっていたジョバンニ・サラは「EXCはとにかくエントリーユーザーのことを考えつくしたバイクだ」と話してくれた。たとえば、250ccもある2ストロークのバイクは、低速のピックアップが穏やかであることから、誰にでも乗れる優しさと、世界戦を戦える一流のパワーが同居している。390アドベンチャーのクラッチをつないで感じたのは、この「低速の穏やかなピックアップ」だった。
スロットルバイワイヤを通じて、発進時にタイヤへ伝わっていくトルクは、思ったほど太くない。300ccくらいの感覚なのだが、一瞬を通り過ぎると豊かなトルクに変わっていく。最初は単に「このバイクは、低速が薄いな」と感じたのだが、実際にはそうではないんだろう。中速でしっかり出ているトルクを感じてまうと、「のりやすく、極低速を調教しただけなのではないか」と結論づけざるを得なかった。だから、実用域になると低速が薄いなんてイメージはまったくない。実際、高めのギヤでもパワフルに走って行く。
ハンドリングは、とても素直。ハンドルの操舵角を感じないまま、マシンがペタペタと左右に寝る。キビキビしたものではないから、ロードバイクになれていない我々Off1.jp編集部でも、自由自在に扱うことができた。コーナリング中のバンク角も、思ったままにコントロールできる。足回りもロードセッティングそのものだから、とても安定していてトレールマシンのそれとはまったく異なる。