後輪が、前輪をトレースする性能
ヤマハの車体設計は、YZ後方排気第二世代を開発するにあたって、コーナリングの入りやすさや、コーナリング中のスタビリティ(ワダチに潜む耐ギャップ性能など)を高めることをテーマに、様々な剛性バランスのアジャストを試みていた。そのフレームの最後発である20YZ250FXは、モトクロッサーのYZ250FXからエンジンハンガーを改善。YZに比べて補強材を入れることで、スタビリティを高めている。
クロスカントリーレーサーがモトクロスよりも固めの設定にされることは珍しい。だが、クロスカントリーの場合は様々な路面を走ることから、より速いギャップ(ガレなど)に影響をうけづらい特性を持つ必要がある。第二世代のフレームは、タンクレールの可動域が広いのでギャップの吸収性は十分に確保できていることも、一つ特筆すべき点だ。
池田はこの車体について「まったく、問題点を感じない100点のフレームだ」と表現する。「ヤマハ特有のハンドリングの立ちの強さは感じるけど、元々好きなキャラクターであることもあって、好感触だった。コーナリング時に、フロントをリアがしっかり追っていて、レールを外さない安心感が強い。それと、路面のインフォメーションをしっかり伝えてくれることも印象に強い。これは、YZ250Fよりも強く感じたね。YZ250Fの場合はある程度攻め込まないと情報が伝わってこないが、YZ250FXのほうは低速でもわかりやすい。今、どの程度グリップしているか、どんな深さで掘れているか、ギャップはどんな感触かが手に取るようにわかる」と言う。路面インフォメーションは、あえて伝えずに、ライダーの恐怖感をあおらないような設計思想もあるが、YZ250FXは積極的に伝えるほうだ。ただ、スピードを上げていったときの懐の深さも必要以上に備えている。「大器」と言うべきだろうか。
サスペンションは「よくチューニングされていると思う。前後バランスや、口元のフィーリングもいい。俺の好みでいうと、奥のほうまでしっかり動いてくれて、最後の部分でしっかり支えてくれるものがいいんだけど、全域で動くような感触はない。つまり、速いスピードでサスペンションが奥まで入ってしまうような怖さがないんだ。しっかりプログレッシブ性があることを感じるものだ。奥までストロークさせるような走り方はできないから、極端に大きな入力まではテストできていないけど」とのことだ。
「19モデルは、お世辞にもスリムとは言いがたい。またがった瞬間に、ヒザへ向かって太さがぐっと増すのを感じる。乗っていても、かなり太い車体が股下にあるのを感じるね。ところが、20モデルはすごく細い」と池田は付言する。「この細さが、たぶんラインの自由度に大きく効いてると思う」と。実際には、シュラウドの幅が16mm、スタンディング時のモモのあたりで18mmスリムアップしているのだが、その差は数値以上に感じるものだ。
狙ったラインに、ギャップを気にせず入って行ける。だからこそ、レースで自由度があがり、頭を使えばタイムが上がる。そういう車体だ。
パフォーマンスダンパーの威力
ヤマハが主宰する試乗会には、パフォーマンスダンパー付きのYZ250FXも試乗することができた。セロー250で好評を博したもので、微細なフレームの振動を抑制してくれるものだ。
上の動画は、音を出して見ていただきたい。パフォーマンスダンパーが、いかに振動をおさえているかが、わかると思う。
実際乗ってみると、「たしかに、あたりがまろやかになっているのは感じる。ただ、それ以上はもっといろんなところを走ってみないことにはわかってこないと思う」と池田は言う。開発陣は
「砂利道なんかで、パフォーマンスダンパーがついていると、まっすぐ走ってくれる」と話す。おそらく、連続する速いスピードでの硬いギャップには、効果があるだろう。これについても、長期でテストを試みたい。