トレールマシンは、様々な制限を背負って作られる。技術者達が、思いの丈を性能にこめたとしたら、CRF450Lが生まれたわけだが、あれは本当にスペシャルなマシン。通常のトレールマシンは、手に入りやすい価格を実現しながら用途に合わせた性能を突き詰める。CRF250Lに課された制限は重く、オフロードをスポーツ走行したい人には、サスペンションがプアであることは否めないところ。だが、このたび登場を控えている「TRIC」なら、9万8000円でまるでレーサーのようなオープンカートリッジ化ができるというのだ。
Technix
TRIC
TRIC RACINGキット ¥98,000(予価)
TRIC STREETキット ¥65,000(予価)
RACINGは左右ともにオープンカートリッジ式。STREETは左右にダンパーとスプリングをふりわけた仕様で、ダンパー側はオープンカートリッジ式だ。どちらも、取り付け工賃は別。RACINGキットの取り付けは、アンダーブラケットを外す必要があるので、ショップ推奨。
現在、国産のモトクロッサーはクローズドカートリッジを採用している(2000年代前半までは、国産もオープンカートリッジ。なお、KTMやハスクバーナは今もエンデュランサーにオープンカートリッジを採用する)が、Technixの土田氏は「むしろエンデューロのような競技なら、オープンカートリッジのほうが合っていると思います。クローズドカートリッジの場合、狭いボディ内にシステムを詰め込んでいて空間に余裕がない。だから、初期の動きが張ってしまうんですよね。エンデューロでは、この初期の動きを殺したくないから、オープンカートリッジのほうがマッチするのです」と言う。
言うなれば、現状で考えられるCRF250Lの性能をもっとも発揮できるサスペンションキット。CRF250Rのサスをつけたら? 剛性が上がりすぎるし、固すぎるわけだ。
サスペンションの受け入れられる衝撃の大小は、減衰力によって決まる。
減衰力をを出せないシステムでは、いかに強いバネをいれたとしてもバネが勝ってしまって減衰してくれないものになってしまう。いささか乱暴に言うとそういうことで、減衰をしっかり出せるシステムは、より上級なものになるということだ。ちなみに、片側をオープンカートリッジにするSTREETでも、林道走行を趣味にするライダーなら、十分に感じてもらえるものだと言う。
中身をごっそり差し替えるから、当たり前だけど別物のサスになる
上が外観、下が中身。CRF250Lのアウターチューブ、インナーチューブを活かしたまま、システムを総入れ替えする。外観こそあまり差が無いが、そのダンパーボリュームたるや別物。
オープンカートリッジのTRICをバラしたところ。すべて、Technixの新設計なのだ。何かから流用したようなものは、ほぼ無い。98%新作のパーツで、すべて図面を引き直したもの。