前日ステージ優勝のリッキー・ブラベック(ホンダ)を、10分54秒差で追うロス・ブランチ(Hero)。今回のダカール最難と言われるステージ11でその差を詰めることはできるのか……
ボーナスタイムでじわじわと離されていく
最終ステージ12はスペシャルステージ175kmのループルート。だから今年の最難ステージと言われるステージ11で勝負ができなければ、もはや勝ち目は無い。ブラベックを追うブランチにとっては最後のチャンスであった。ブラベックのスタート順が1番なのに対し、ブランチは7番とスパートをかけるにもベストな位置だと言える。
この二人の緊張感が、ステージ11で最高潮に達するであろうことは想像に難くない。リードしているブラベックにしても10分54秒のアドバンテージは1ミスで消え去る可能性が十分にあるからだ。しかも道を切り拓く1番スタート。いかにナビゲーション能力に優れているとはいえ、そのリスクは計り知れないものがある。しかし、ルートミスすることなく切り拓き続ければボーナスタイムを手にすることが出来る。ブラベックの背後には、3分後にホセ・コルネホ、6分後にビバレンがスタート。何かがあっても、チームメイトであるこの二人がバックアップできるという、終盤のダカールの戦い方として最高の布陣を敷いた。
ブランチのスパートは見事なものだった。誰よりも速く各計測ポイント間を抜け、タイム上では2番手エイドリアン・ファンビバレンを従えてトップを走り続けていた。しかし、ブラベックは先頭を維持しながらボーナスタイムを逃さず絶妙なペースで走行。その結果、各計測ポイントでボーナスタイムを加味したステージ順位はトップを守り続け、さらにはブランチを少しずつ引き離しにかかる。もしブラベックがボーナスタイムを得られなかったとしたら5分45秒をこのステージ11でひっくり返されることになって、総合でのブラベックのリードは5分弱に短縮。勝負はステージ12へ持ち越される勢いだった。ホンダ勢は、この2024年ダカールで常にうまくボーナスタイムを意識する作戦で、シーソーゲームのロスタイムを防ぐことに成功したのだ。最終的にブランチがステージ終盤のスパートを効かせ、ステージ11を優勝するのだが、ブラベックとの差は32秒しか埋まらなかった。
ステージ順位
ブランチは「今日は本当に楽しかった。ミスすることなく、バイクも絶好調だった。トップとの差は大きいが、今の状況にはとても満足しているんだ。明日の最終日を楽しみにしているよ」と明るい。ダカールの優勝を目前にしたブラベックは「最初の目標はレストデイまで走りきること。そして次の目標は最後まで走りきることだ。完走は決して簡単なものじゃない。僕らは夜遅くに戻ってきて、早朝に出て行くから特にバイクにとって最後まで走りきるのは難しいことだ。完走できれば勝利だと思う。優勝できればそれは伝説になる」とコメント。
総合順位
池町佳生「思っていたよりも厳しいステージ」
ビバークに着いたのは17時くらいというから連日丸一日走っている池町佳生。終盤にしてタフなステージをこなして67位、総合61位であった。「今日は思っていたよりも厳しかったね。ガレ場がまた長くてね、それが終わったらやっと砂丘かと思いきや、その砂丘にも岩がずいぶんあってすごく面倒くさい。最後まで楽しませてくれるよな! と思いながら走ってました。車はめちゃくちゃパンクが多かったことからみても、荒れたルートで、飛ばすとリスクが高くなる。こういうステージは、トップライダーのタイヤはセンターがスリック状態まですり減って、ワイヤー出てきちゃうからね。もうここまで来ましたから、なんとか走り切ります。最後まで何があるかわからないですからね、気を引き締めていきます!」とのこと。
明日のステージ12はいよいよフィナーレ。わずか175kmのスペシャルステージは、リスクを冒さないことが何よりも重要視されることだろう。