開発コード「0WW3」が与えられた、岡野聖号YZ450Fは紛れもなく先行開発車。だが、外観から探るに昨年後半に岡野が乗り始めた車両と、大きく変更は認められず、さらにいえばエンジンヘッド以外は市販車と酷似している。
昨シーズンは、フライングドルフィンの名前で開発をすすめていたが、今季はヤマルーブのスポンサーを得て「TEAM YAMALUBE YAMAHA RACING 」に。ヤマハとしては「ファクトリー」を名乗っていない。運営スタッフは、車両開発担当が櫻井氏から村山氏へバトンタッチするなど、体制にも変更があった。
#8 岡野聖 YAMAHA YZ450F
2013年モデルから、採用している後方排気エンジンこそYZ450Fの真骨頂。マスの集中化、排気効率、吸気効率の適正化など様々な効果を狙ったものだが、この第二世代型もさらなる熟成に入ったということだろうか。それまでゴム製のカムカバーが2つのぞいてたヘッドが、KXのようなのっぺりした形状に、変更されている。
ヘッドの変更で想像されるのは、まずカム駆動に関して。形状からしてホンダのようなシングルカムではないだろう。これまでのYZと同様のエンジン音からして、ギヤトレーンへの変更などでもなさそうだ。ヘッドカバーを若干大きめに製作して余裕をもたせたように見えるが、モトクロスで周知されている技術と言えばKTMやカワサキが採用しているフィンガーフォロワーあるいは、それと似た効果を持つバルブまわりの技術なのだろうか。開発陣からは、ヒントを得られなかったため推測の域を出ない。
「ボディから説明すると、18モデルの開発においてはコーナーに進入する際に、どれだけ安定して進入させてあげるかをキーワードにしてきました。雑誌社さんからもスタビリティがいいと評価されています。我々としては、今、その先をテーマにすべく、コーナーの中でいかに軽快に曲がれるかを考えています。エンジンは、低中速のコントロールしやすさと高回転域のパワーが開発テーマです。昨今、450は扱いきれないレベルまで上がってきてしまっているので、どれだけ扱いやすくパワーを維持できるか」とは開発の村山氏の言である。
岡野本人のコメントとしては「今のマシンに乗る機会も増えて、450ccに慣れることができました。エンジンもよく走りますし、僕はスタートが苦手だったんですが、スタートも出れるようになったし、ただ単にパワーがあるだけでなくて、トラクションもいい。エンジンだけでなくフレームの影響もあると思いますよ。スタートが苦手な分、事前にいろいろテストもできたのでいいレース運びができたとおもう。YZはパワーがあって、下からガツンと来るんですよ。そこをおさえて、ギヤを長めに使えるようなエンジンにセッティングしてもらっています」とのこと。
昨年から継続の、アルミタンク。容量だけでなく、剛性・重量にも好影響を与えているはず。
アクラポヴィッチの名が入る、エキゾースト。
外からは見えない部分で、コーナーリング中の安定感を向上させるよう、車体開発をすすめているという。見えない、と強調するからにはアルミツインチューブの内部構造に秘密があるのだろうか。
ピボットプレートも、見る限りは鋳造パーツを使っている。
開発の村山氏は「看板に、開発と入っているからには、みなさんの楽しみにしてくれるものをつくっていきたいと考えている。いつ、どこで変わるとは言えないが、楽しみにしてもらえたら」と締めた。姿形もないところから、好き勝手予想を立てるのもこの時期の面白さ。存分に、推測させてもらおう。