史上初のオートバイによる北極点・南極点到達、チョモランマ(エベレスト)世界最高高度6005m達成、パリ・ダカールラリー二輪部門への日本人初挑戦など、これまで数々の挑戦を成し遂げてきた風間深志氏が挑戦する初めての日本一周ツーリングも、今回を含め残すところ2話となりました。第21回では、新潟から山形を抜け秋田に向かいます
三県を駆け抜け、白瀬矗に嫉妬する
日本一周ツーリング最終章もすでに新潟県まで到達している。7月に入ったが、小雨降る梅雨空は相変わらず。今日は宿を出発すると「出雲」の二文字が気になり、出雲崎町(いずもざきまち)の「越後出雲崎」から攻めることに。その昔、嵐で遭難した出雲の人がこの浜へ流れ着き、あまりに故郷の出雲の浜に似ていたことに由来するらしい。
日本海に面する約10kmの海岸線で、海の向こうには日本海の離島でもっとも大きい佐渡島を望むこともできる景勝地なのだが、空は重い鉛色。そして風雨と共に白い波飛沫を上げる日本海は、やはりどこか暗さを漂わせる。どうしたって気持ちも暗くなってしまう。
新潟県の新潟市、村上市と走り、"こけし"の立つ山形県へ。日本有数の米どころとして知られる庄内平野はまさに一面が緑の水田だった。いま、日本はもっとも緑豊かな季節である。全体がここまで緑に覆われる国なんて、世界を見渡してもそんなにないと思う。
一方で、天気は相変わらず雨が降ったり止んだりを繰り返している。濡れた路面では、スムーズにギアを繋ぐアフリカツインのDCTのありがたみが、より強く感じられる。
庄内平野の都市、鶴岡市と酒田市を駆け抜けて秋田県へ入ると、僕はにかほ市の金浦(このうら)へ立ち寄った。ここは日本人として初めて極地探検(南極)を行なった白瀬矗(しらせのぶ)陸軍中尉の故郷なのである。竹嶋潟(たけしまがた)という池のほとりには彼を顕彰する立派な施設「白瀬南極探検隊記念館」が建っている。氷山をイメージしたという個性的な建屋を手がけたのは、何とあの世界的建築家の黒川紀章だ。周辺に広がる公園内には、白瀬が南極探検で使用した「開南丸」のレプリカも展示されていた。
記念館の展示を見学してると、豊岡市で訪れた「植村直己冒険館」のことを思い出す。どちらも地域に根付いた素晴らしい記念館であり、とても羨ましいなと。僕なんかオートバイで北極点と南極点に到達した初めての日本人なんだけど何もないもんね。オートバイだからかな?笑
そんなボヤきはさておき、この日だけで新潟→山形→秋田と三県をまたぎ、約400㎞も走ってしまった。少しペースが早過ぎるナと思いつつも、天候が悪いとつい先へ先へと走ってしまうカザマなのであった。そしていよいよ、この日本一周ツーリングの最終ゴール地点「龍飛崎(たっぴみさき)」が目前に迫ってきた。