トライアンフモーターサイクルズのスクランブラー400Xを、身長159cm・女性のoff1編集部員イザワが試乗。通勤やツーリングなど様々な場面で乗ってみたところ、車高が高いゆえの快適さに魅了されました
トライアンフモーターサイクルズ
Scrambler 400X
トライアンフモーターサイクルズから登場したスクランブラー400Xは、2023年6月に発表され、2024年1月より日本での発売がスタート。新設計の400ccシングルエンジンを採用していることが特徴で、中型免許で乗れるため、初心者にとっても興味をそそられるモデルでしょう。スクランブラー400Xは、オフロード走行も考慮して作られており、林道ツーリングも楽しめるということで、off1編集部イザワは今回の試乗の機会を楽しみにしていました。
スクランブラー400Xを見てまず最初に驚いたのは、大型バイクにも引けを取らないその見た目の大きさです。これまで私は公道では350ccまでしか乗った経験がなく、400ccクラスのバイクに乗るのは初めてでした。スクランブラー400Xには見た目から圧倒されてしまい、本当に乗りこなせるのだろうか……と、不安が募りました。
特に、車高が835mmと高く、身長159cmの私が跨ると両足のつま先がギリギリつく程度。まっすぐに足を下ろしてこの足つき、決して安心できる高さとは言えません。しかし、試しに会社の周りを一周乗ってみると、その車高の高さが予想以上に快適であることに驚きました。
見た目よりも扱いやすい、通勤も林道ツーリングも快適に乗りこなす
今回スクランブラー400Xを長期でお借りしたので、ツーリングや通勤など様々なシチュエーションで乗ってみました。
ツーリングでは、相模湖〜宮ヶ瀬周辺を回るルートを走行。会社のある都内から約2時間ほど高速道路を走り、相模湖へ向かいます。車体はホイールベースが1,418mmと長く、直進安定性に優れているため長時間の走行も苦ではありませんでした。さらに、中速域は力強く、なめらかに加速していくため長距離でも疲れにくく、下道でも扱いやすさを感じました。高回転域での加速感はパワフルで、高速道路でもそのスペックを持て余すことはありません。
ツーリング時にはルート近くで見つけた「志田峠」も走ってみました。志田峠は前半が峠道で、後半は砂利道が続きます。400ccで林道を走るのは初めてで、最初こそ緊張しましたが、サスペンションのストロークが長い分、荒れた路面からの衝撃も少なく、滑らかに走ることができました。また、ハンドル位置が高いためスタンディングがしやすく、シートやタンク周りがスリムなためニーグリップがしやすい点もマシンコントロールのしやすさに繋がりました。さらに、オフロードでは路面に合わせて細かなアクセルワークを求めたくなりますが、スクランブラー400Xは低回転〜中回転域の粘り強さがあり、多少アクセルを開けなくてもエンストせず進めるため扱いやすく感じました。初めはあれだけ不安に思っていましたが、見た目よりもコントロールしやすく、高速も林道ツーリングも楽しめてる! と感動しました。
一方、通勤に使用してみると、ツーリングでは見えなかった面も見えてきます。私の通勤路は第三京浜と都道318号を通るルートで、距離は片道約35km、時間は約1時間半ほどかかります。毎日ちょっとしたツーリング気分なのですが、この距離感でまず高速道路を使えるというのは大きなメリットでした。ただ、都道318号では毎日通勤ラッシュの時間帯に渋滞が必ず発生し、どうしても巻き込まれます。ノロノロと進み、止まる度に足をつく必要があり、この場面ではやはり車高の高さが負担に感じました。こういう時にクラッチ操作やアクセルワークが安定しないとさらに疲れが増すのですが、そこに関しては低速域の粘りが効き、負担に感じることはありませんでした。
車高の高さ=デメリットとは限らない?
今回試乗した中で一番感じたのは、「車高が高いって良いな!」ということでした。しかしこれをoff1編集長の稲垣さんに伝えると、「え!?」と声を出して驚かれました。たしかに、車高が高いことは平均身長が男性よりも低い女性にとってデメリットという印象が少なからずあります。実際、中型バイクは重いし、足がつかないと信号待ちなどで倒れないように気を張り、変な場所が筋肉痛になることもあるなど、私自身も車高の高さにメリットを感じていませんでした。しかし、スクランブラー400Xに乗って思い出したのが、YZ125に乗った時とキャラバンを運転した時の快適さでした。
私は普段85ccのモトクロッサーに乗っていますが、一時期YZ125に乗って練習していたことがあります。YZ125のシート高は980mmで、私にとっては片足がつくのもやっとの高さ。足台が無いとエンジンをかけることすら難しいです。しかし、走り出してみると、車高が高い分地面からの距離も遠くなり、今まで目の前に見えていた路面の荒れが全く怖くなくなりました。まるでスカイツリーの展望台から道路を走る車を見て「ミニカーが走っているみたい〜!」と感じるように、路面のギャップや転がる石の存在感が小さくなり、目線の高さが変わるだけで恐怖心がなくなることに驚きました。もちろんサスペンションのストローク量などマシンとしての違いもありますが、それでも車高によるメリットは大きいと感じました。
また、車の免許を取得し、キャラバンを運転し始めた時も同じで、上から見渡せることで視界が広がり、安心感がありました。小さな軽自動車よりも車体の大きなキャラバンの方が目線が高くて運転しやすいとさえ思いました。スクランブラー400Xも同様で、見た目こそ大きくて車高も高いですが、実際に乗るとその高さ故の安心感があるのです。まさに今回試乗したことが「実は車高は高い方が良いのでは?」と考え直すきっかけになりました。
車高が高いことには渋滞時や信号待ちでの不安定さというデメリットもありますが、走行時の視線の高さやハンドル位置の高さが安心感につながるという大きなメリットがあります。スクランブラー400Xは見た目の大きさに反して車重は179kgと軽く、一度乗ってみると、見た目とその扱いやすさのギャップに魅了されるでしょう。もし、スクランブラー400Xが気になっているけど、車高の高さで諦めている方がいたら、ぜひ試乗の機会をみつけて試してほしいです。きっと、このバイクの意外な一面と可能性に気づけると思います。