2月1日(土)、2025 AMAスーパークロス第4戦がアメリカのアリゾナ州にあるグレンデールで開催されました。
注目ポイント
・決勝レース×3回、合計ポイントで優勝が決まるトリプルクラウン
・下田丈、レース1でクラッシュするもレース2・3で立て直す
・歴史的瞬間、トライアンフが初優勝を獲得
決勝レース×3回、トリプルクラウンで重要なのは
今大会はトリプルクラウンと呼ばれるレース形式で行われました。通常だと決勝となるメインイベントは1回しか行われませんが、トリプルクラウンではメインイベントが3回行われ、3つのレースで獲得した合計ポイントで総合順位が決まります。また、レース時間も変更され、250ccクラスは通常15分+1周のところ10分+1周、450ccクラスは20分+1周のところ12分+1周と短縮されます。ライダーには3レース走り切る体力と集中力が求められ、短時間のレースで優勝するためには、スタートでいかに前に出られるかが重要となりました。
なお、下田丈は第2戦で左手の小指と薬指を骨折し、第2戦・第3戦は怪我の様子を見つつ、テーピングをして決勝に挑みました。第4戦での怪我の状態について、実況では「彼の理学療法士によると痛みは先週の半分くらいだろうとのこと。プレーキング時にかかる小指への負担は大きく、腫れが引かないためグローブの小指部分を切る必要があったりとまだ処置は続いている様子です。平日はバイクに乗らず、怪我を直すことに専念しているとのことです」と情報を共有。引き続きクラッチ操作に影響がある中、どこまで結果を残すことができるのかが見どころとなりました。
レース1でクラッシュ、しかし好スタートで存在感を示す
レース1、下田はスタート6番手あたりから追い上げる展開となりました。しかし1周目でトップを走っていたジュリアン・ブーマーが転倒し、それを避けきれず転倒するライダーが続出。5台以上が絡む大クラッシュが発生しました。
下田もそれに巻き込まれ順位を大きく落としてしまいます。すぐに復帰しますが、その後メカニックエリアに入り、クラッシュ時にずれたタイヤの向きなどを直して再びコースへ。ピットインしたことで周回遅れとなりましたが、最後まで走り切り21位でフィニッシュを果たしました。
続くレース2、下田は好スタートを決めて2番手を走行します。後方から追い上げてきたライダーにパスされるも、5・6番手をキープし6位でゴールを果たします。さらにレース3でもスタートで良い反応を見せ、3番手を走行。ブーマーとヘイデン・ディーガンの追い上げによりポジションを落としますが、5位でチェッカーを受け、総合順位は10位を獲得しました。
怪我をしているにも関わらず、トップに絡むほどの良いスタートを見せた下田。この走りについて解説では「丈の走りは素晴らしいね。このコースの路面の硬さを考えればわかるけど、かなり手には負担がかかっていると思う。治療をしている中でレースに出続けるメンタルのタフさにも感心するよ」と賞賛の声が上がっていました。
タイトなコースレイアウト、トップライダーのディフェンス力が光る
今回のレースを振り返ると、トップを走っていたライダーがその座を守り切り優勝する、という展開が多く見られました。例えば250クラスレース1ではコール・デイビスの後方からジョードン・スミスが接近していましたが、相手を前に出させない巧妙なラインどりでデイビスが初優勝を獲得。
また、450クラスのレース1でも、トップを走るクーパー・ウェブに対してジェット・ローレンスがアタックし続けていましたが、ウェブはそのプレッシャーに動じることなくトップを守り切りゴールし、今季初優勝を獲得しました。ウェブの走りについて解説のリッキー・カーマイケルは「彼は本当にディフェンス力があるライダーなんだ」と評価します。短い時間の中でも、焦らずにライバルを抑えて勝つその実力の高さは後半戦のチャンピオン争いにも生かされてくるでしょう。
トライアンフが初優勝獲得。まだまだ混戦極まるトップ争い
今回の結果を見ると、250クラスでは2位・3位・1位と3レースとも3位以内でまとめたジョードン・スミスが総合優勝を獲得しています。2024年よりAMAスーパークロスに新規参入したトライアンフにとっては初めての優勝で、その歴史的瞬間に会場が沸きました。
また、レース1ではデイビスが自身初優勝を獲得し、レース2でも2勝目を飾りました。レース3は転倒によって8位フィニッシュとなり、総合順位は3位で終えましたが、ルーキーながらトリプルクラウンを制するかという勢いと実力は目を見張るものがあります。
なお、デイビスはニュージーランド出身のライダー。スターレーシングヤマハに所属し、ベン・タウンリーやジョシュア・コピンズの指導のもとで実力を磨いてきました。ニュージーランドからアメリカに拠点を移し、ますます勢いづく彼の活躍に今後も注目が集まります。
一方、450クラスではチェイス・セクストンが今季2回目の総合優勝を果たしています。しかし、各レースの結果を見るとレース1はウェブ、レース2はケン・ロクスン、レース3はイーライ・トマックと各レースで優勝者が替わっており、混戦を極めるチャンピオン争いの行方に今後も目が離せません。
250SX WESTは2週間のインターバルが空き、次戦は2月23日に開催されます。下田にとってはこのインターバルが怪我を回復させるチャンス。次戦での走りにも期待したいところです。