いつも強力な高圧洗車機を使う必要はない。晴れの日ならちょっと水をかければいいハズ。だったらこんなアイテムもある……
洗車は億劫
オフロードバイクについて考えた時、憂鬱なのは洗車だ。新車をおろしたての頃には嬉々として洗車に励むが、だんだん億劫になってくる。遊んだり練習するのはいいが、毎回洗車しないといけないのはしんどい。だんだん「今日は洗車しなくてもいいか」と土や泥だらけのバイクをトランポに積み込むことが多くなる。どうせすぐ汚れるのだから、しなくてもいい。でも、そしたらいつ俺のバイクはキレイになるのか。キレイな状態はいつであるべきなのか。答えはいつもキレイであるべきである。洗車をすることでバイクの傷みを知り、メンテナンスもはかどる。
ただ、洗車は億劫だ。エンジン式の重たい高圧洗車機を引っ張り出して、水道につなぐ、あるいは水おけを用意する、汚れが飛び散る場所ではできないから場所も選ぶ。僕の場合は、ホームコースの近所にマル秘洗車場(なんせモトクロスバイク専用!)があって、いつもそこにこそこそと行くのだけれど、それでも雨が降っていたり、トイレに行きたかったり、早くアイスが食べたくて仕方なかったりすると、トランポから荷物とバイクをもう一度下ろして積み込むのが面倒くさすぎて、スルーして汚れたままバイクを持ち帰ってしまうことしばしば。ああ、今日も洗車が憂鬱である。
ある日、バイク用品を扱うサイン・ハウス社のSPICERRという充電式で水栓いらずでどこでも使える高圧洗浄機があると聞いた。 なんでも、非常にコンパクトな新商品であるという。洗車か。面倒だな、と思いつつもモノを見てみると想像を遥かにこえて小さく、サイズは500mlのペットボトルほどしかなかった。こんなドライヤーみたいなので洗車なんて出来るのか!? 情報によると、大型の業務用洗浄機のような水圧ではないけれど必要にして十分。充電式のため、水の入ったボトルを装着するだけで電源コードなどは不要。スタンドアローンで洗車ができるだけでなく、水桶などから水を吸い上げて噴射することも可能だそうだ。噴射も5つの可変ノズル(高圧の0°、20°、20°傾斜、40°、シャワー)の切替ができて、洗剤を噴霧するアタッチメントもある。これで洗車が完了できれば夢のような話だが、そう簡単にいくだろうか。僕はその次の週末早速ホームコースに向かったのだった。
SPICERR
ポケッタブル高圧洗浄機 SWU-1
¥12,980(税込)
ポケッタブルジェットファン SJU-1
¥9,900(税込)
考えてみれば、そんなに汚れるほど走ってなかった(汗)
その日は気温も15度前後で晴れた日曜日。これぞモトクロス日和って感じでコースはベスコンだった。タイヤも少しハードな路面にマッチして気持ちいいグリップ感。すっかりいい気になって15分のヒートを4回ほどこなしてGarminの腕時計も「運動しましたね!」のサインを出している。いつもより少しタイムを短縮できたくらいだから、結構乗り込んだ一日だった。
帰り際にふとバイクを見ると、あまり汚れていなかった。よく考えたら、ベスコンのコースを走って泥がたくさんついてしまうなんてことはあまりない。特にハードパックのコースなら、土埃がつく程度だったりする。その日は、少しだけぬかるんでいる場所があったから、わずかながらフェンダー裏に泥がついていたのだけれど、まぁ、たいした量ではなかった。トランポにそのまま積み込むのはちょっと嫌だな、という程度のものだ。
これならサインハウスから借りたSPICERRでも汚れを落とせそうだと思った。さっそく、ペットボトルに水を入れて、洗剤ボトルに泥用洗剤を水で希釈して洗浄タンクキットへ注入。もし住宅街で使ったとしてもまったく問題ないであろう静かな音でSPICERRは洗剤水を吹き出す。これが思っていたより便利だ。手で握るタイプのスプレー式洗剤を拭きかけていると結構手が疲れるけど(そもそもコースを走ったあとで握力が低下している)、これならモーター任せでぱーっと終わってしまうし、わずらわしいコードがないからバイクの周りを素早く回って完了できる。その後はブラシでささっと擦ってから、アタッチメントを変えて高圧洗浄機として使用。ちょっとした泥なら必要十分な性能だった。ざっと土埃を落として、フェンダー裏も流して、チェーンなんかも念入りに掃除して、とやっていたら4Lの水を使った。ちょっとしたポリタンクからホースで水を吸い上げながら使えば、もっと入念に洗車できるだろう。
よく考えたら、土の上のモトクロスとは言えそんなに汚れないことも多い。もちろんコースにもよるけれど、日本の場合はたいていがドライコンディションだし、そもそもマディの時に進んで練習にいくなんてこと、今まであっただろうか? ほとんどのオフロードバイク遊びの汚れを、このSPICERRでカバーできるんじゃないだろうか。
仕上げもSPICERRのブロワーで
僕にはこだわりの洗車メニューがあって、水で洗剤を流した後はシリコンスプレーを車体に吹き付けていく。その後、ざっとウエスでシリコンと水を拭き上げたら、細かいところに残った水滴をブロワーで吹き飛ばすのだ。この3行程はとても大事だ。いつもは、マキタの大きなブロワーで吹き飛ばしているのだけれど、これも洗車機と一緒に借りたSPICERRのポケッタブルジェットファンで吹き飛ばすことにした。
こちらはポケッタブル高圧洗浄機のように、能力は小さいけど必要十分、というわけではなく、しっかりブロワーとして優秀だった。それこそライターより一回り大きいくらいなのに、マキタと遜色ないほど水滴を吹き飛ばしてくれる。
仕上げてみると、大きなエンジン洗車機を持ち込んで60Lくらいの大量の水で洗うのと同じレベルでキレイになった。まったく気づいていなかったが、モトクロスの汚れというのはだいたいこのくらいのものなのだ。時折ひどいマディで、農機具用の強力な洗車機でぶちかましたくもなるけれど、だいたいそこまで必要にはならない。SPICERRのポケッタブル高圧洗浄機とポケッタブルジェットファンは、トランポのちょっとした隙間に忍ばせておけるくらい小さいから、とりあえず車内のダッシュボードなのか、バックシートのポケットなのか、どこかに常備しておけばいい。あとは、コースのコンディションや汚れの程度でエンジン洗車機を使うかSPICERRを使うか決めればいい。
これなら、億劫な洗車も毎回こなせそうである。だいたい、マディで練習しないライダーだったら、8割方このSPICERRで解決できそうだ。なんなら、ツーリング先に持っていってバイクを洗うなんて荒技もできてしまいそう。能力ではなく、洗車の機会・習慣を作るという観点で、この洗車機は画期的だと思う。なお、物欲に動かされてAmazonをのぞいたら洗浄機とジェットファンのセットで2万900円。ぽちっとする日はもうすぐそこだ。