ダカールラリーへの参戦権を得るために、モロッコラリー(10月4〜11日)に参戦している藤原慎也をリアルタイムでレポート。初のFIMラリーレイド世界選手権、完走なるか否か!

余裕など無い! ラリーの厳しい世界へ

2026年にダカールラリー完走を目指すプロジェクトを発表した、トライアルIAスーパーの藤原慎也。9月の日高2デイズエンデューロには、重たいバイクとスピード慣れするためにGASGASのES700(しかもラリータワーつき!)で参戦し、IAクラスでポイントを獲得するほどのトレーニングの成果を見せた。そしていよいよ臨むのが、このモロッコラリーだ。ダカールラリーの参戦権を得るためには、規定のFIMラリーレイド世界選手権を完走する必要があり、このたびのモロッコラリー参戦はその条件を満たすため。北海道4デイズラリーやコマ図のイベントなどに積極的に顔を出してきた藤原だが、本格ラリーレイドは初めて。

事業家ならではの豪胆さで、大舞台でも余裕を持った態度で臨んできた藤原だが、モロッコラリーでは勝手が違ったようである。「予定通り進むことがほとんど無くて、しかもモロッコの環境がだいぶ僕に合わないなと感じています。交通事情なんて最悪で、ラリーの準備で移動していた僕らの目の前で歩行者がひかれて亡くなってしまったんです。国際ラリーの先輩方は、SSよりもリエゾンが怖いんだって教えてくれたんですが、本当にその通りだと思いました。気温も変化が激しいし、空気は埃っぽいんです。乾燥もしてますしね。だいぶ慣れてきましたけど、空気がしんどかったですね。街はゴミが多くて治安もよくないんです。好きな環境ではないです。

あとは段取も悪かったため、渡航してすぐに準備が進まず、直前になって慌てたり、受付車検でもいくつか指摘を受けたり。経験を積まないとどうにもならないな、とも思いました。事前に先輩方からいろいろ教えてもらってはいたんですが、想定外のことが多いんですよね。海外遠征ではあるある話ではあるんですけどね」とレース前にナーバスになっているとのこと。

空気が悪く、交通事情もよくない……と藤原が言うモロッコの街並み

今回はFANTICのファクトリーバイクで参戦。ファクトリーのテントから出走になる

いきなり好リザルト、プロローグを33位で終える

10月6日、74kmのプロローグからいよいよモロッコラリーがスタート。藤原はこれまでトレーニングで培ってきたスピードを、しっかり抑え気味に乗ってマージンをとってプロローグに臨んだと言う。

「SSの走り出しはかなり好調でした。マージンとりながらもプッシュして走れていたのですが、SSの途中でタブレットの画面が真っ黒に落ちてしまったんです(編注:モロッコラリーだけでなく昨今のラリーレイド世界選手権では、紙のマップホルダーからタブレットの電子マップに変換が進みつつある)。チェックポイントやスピード制限区域に入る時などの音は聞こえるんですが、画面が見えないことで何で音がなっているのか理解しづらいんです。で、前のライダーについていったら停止しなくてはいけないチェックポイントを見逃してしまったんですよ」

本来マップがこのように出るハズが

真っ黒にブラックアウトしてしまった。ラリーは前のライダーに追走することもできるので、知恵とアイデアでなんとかなる(?)

どうやらこのタブレットの故障は多くのライダーに起きたようで、藤原の所属するFANTICのチームが抗議するまでもなく主催者からミーティングの要請があったとのこと。

「リザルトはそういったタブレットの故障に起因するペナルティを加味しなければ33位でした。それから変更もアナウンスされていないので、おそらくペナルティはつかないことでしょう。リザルトはチームメイトのサンドラ・ゴメスよりもだいぶ良くて、チームの面々にもお前走れるじゃないか! って驚かれました。トレーニングの成果が出ましたね」

プロローグを終えた藤原たちは一路、ステージ1のビバークへトランスポーターで向かうのだが、ここでもまたトラブルに。大雨の影響で川が増水していて、ラリーが進まない状況になったという。藤原らがビバークへほうほうのていでたどり着いたのは、現地時間23時ごろ。いよいよ明日から本編がスタートする。

23:00、ようやくビバークに到着。プロローグから洗礼を受けた