Off1編集部ではヤマハ発動機販売からYZ450FXをお借りして、1年間自由に乗り回すことができるというとてもとてもありがたいオハナシをいただき、日々ヨンゴーに振り回されている。これは不定期のYZ450FX連載である

恐ろしすぎるYZ450FXが、マイルドになる

もしかするとオフロードレーサー事情に明るい方々は「2023年の新しいモトクロッサーYZ450Fはめっちゃ乗りやすい」という口コミを聞いたことがあるかもしれない。そういった情報を流した者の一端として、素直にボクは謝りたい。実際、いつものヨンゴーよりはとても乗りやすいのだけれど、はっきりいってヨンゴーはヨンゴーである。ひとたびスロットルを開ければ地球をとてつもないトラクションで蹴っぽり、コブでもあろうものなら飛び出して宙へダイブするのは間違いないマシンである。草レースのノービスクラスでわいわいやっている、ボクのような人間は間違いなくお呼びでない。

そんなYZ450Fをベースに作られたクロスカントリーバイクだというのだから、乗りやすいことには乗りやすいのだが、やっぱりヨンゴーはヨンゴーである。2023年のOff1流行語大賞にしたいほどに、ヨンゴーはヨンゴーなのだ。軽い、スリム、出力が穏やか、これらの褒め言葉は確かだ。でも……しつこいのでもうやめておこう。調子に乗るとぶっ飛んでいくパワーを持っているのは変わらないし、ヨンゴーならではのパルス感の強さはボクらビギナーをびびらせるに十分だ。ともかく、編集部の伊井がWERIDE三宅島でこのYZ450FXを乗り回した話を聞いてから、ボクもおっかなびっくり乗り始めることにした。現在、OFF1編集部には、このヨンゴーをあわせて3台ものYZがある。22年式YZ125、20年式YZ250FX、そして24年式YZ450FXだ。これまでYZ125ですら持て余し気味でYZ250FXばかり乗っていたボクがYZ450FXなんて怪物を毎週引っ張り出すわけがないと思っていた。ヤマハのニ○ゼキさんには申し訳ないが、軽くて乗りやすいですよ、とX(旧Twitter)でつぶやいて終わりにしとこと思っていた。

とりあえず、最初はYZ450FXとYZ250FXを持ってホームコースのモトクロスビレッジへ参上。思った通りYZ450FXはめちゃくちゃにパワフルで全然開けられそうになかった。自己ベストタイム58秒のこのコースで、だいたい1分3秒くらいまでしかタイムが縮まっていかない。とにかく走りすぎるので、セッティングツールである「パワーチューナー」でどんどんパワーを削っていってみることにした。乗っては調整を繰り返した挙げ句の果てに、燃調だいぶ濃い目、点火時期オール-10までいってしまった。エンジンは「もっとちゃんとした燃料をおくれ!」とずっといい続けていてペチペチと音を立てて回るのだけど、とにかくここまで削るとレスポンスがだいぶ穏やかになってきて印象が変わってくる。あ、このヨンゴーならいけるかも、と思わせるに十分だった。

これがジャンキー稲垣の弱々セッティングです。回転数低め1000〜3000回転、開度30%までのとこを濃いめにしてあります。縦軸・横軸の数字もいじれるんですよ。実はすごくこまかくマッピングを楽しめる。ちなみに、単にマイルド−ストロングの2軸でセッティングできるわかりやすいモードも新型には搭載されるようになりました。トラクションコントロールは、全切り。なぜかというと、ヨンゴーのパワーでドーンと前に出すぎるのが最初怖すぎたから

その最弱ジャンキー稲垣セッティングで、栃木県の鹿沼木霊の森に行ってみたり、河川敷を走ってみたりいろいろしてみたのだけれど、エンストしやすくなるもののエンデューロっぽいところとも相性はいい。うん、割とアリだな。ハードなエンデューロじゃなければ、これで出てみてもいいだろう、と思えるくらいには調教できた。Xでそんなことを呟いていると、「稲垣マッピング、わりとすきです」とコースで話しかけられたりして、ちょっと鼻が高くなったりする。

稲垣的、ヨンゴーの解釈

鈴木健二さん曰く「2ストの250も、125も、4ストの250も、基本的には乗り方は同じ。でもヨンゴーだけは違うんですよ」とのこと。いろいろ乗り込んでみると、その意味は稲垣的に解釈できるようになってきた(編集部注:以下意味不明な箇所もありますがすべて個人の感想です)。

一番感じたのは、250&125=回転体に乗るスポーツ、450=上下運動のコンロッドに乗るスポーツ、ということだ。450はまったく開けられないから、ほとんど低〜中回転域で走ることになるのだけれど、つまりは回転数がほとんど上がらない。かなり極端な表現だけど、スロットルを開けた瞬間にピストンがドンっっと下にさがるタイミングを見計らって乗るようなイメージだ。250の場合はそういうわけにはいかない。高回転で回っているエンジンにクラッチを当ててギュンっとパワーを取り出すイメージだ。これを最も感じたのはジャンプ。ドンっっと一発ピストンの爆発で前にびょーんと飛びだしていく。コンロッドが地球を蹴っているような感触といったらいいのか……。どこでも、ドンっっとやれば飛んでいく。250では回転数やスピードを合わせる必要があったのに、ヨンゴーは大雑把で開けたら飛んでいくのだ。乗ったことはないが、馬が地面を蹴る感じに近いのかもしれない。まるでスロットルで鞭をくれてやるようなものか。

これがわかってくると、だんだんヨンゴーの乗り方が“自分なりに”理解できるようになった。3速でエンジンが回っていなくてもスロットルだけでドンっっと加速するし、コーナーでは唐突にパワーが出ないのでゆっくりスライドしてくれて、250よりもだいぶ楽に向きが変わる。む、これはいいぞ? と思っていたら、いつの間にか1分フラットくらいでモトクロスビレッジを回れるようになっていた。ヨンゴーだと楽できちゃうから運動にならなそうだな、と思っていたんだけどそれも余計な心配だった。鋭い加速に身体でついていこうとすると、むしろ250よりもどっしり疲れるし、心拍数も180〜190くらいまでしっかり上がる。手や腕の疲れるパーツもだいぶ変わった。だんだんお気に入りに変わっていくヨンゴー。マッピングもスタンダードのMXフィーリング(一番パワフルなモードで、結果的にクセもなく乗りやすい)に戻すことができた。これは、おなじみの草レースヒーローズに出てみねばなるまい。

モフビ、もといモトビにこんな組み合わせの人がいたら僕です。ぜひお声がください、Off1.jpステッカー差し上げます

これずるくね? ノービスにあるまじきマシンで人生初の表彰台ゲット

練習走行では一緒に走った僕(手前)と、友人A(奥)

というわけで参戦してきたのが、ホームコースのモトクロスビレッジで行われたモトクロスの草レース、2023年のヒーローズ最終戦だ。YZ250FXよりもタイムは悪いわけで、遠慮なくノービスにエントリーさせていただく。なお、バイクの才能がある友人Aと、バイクの才能がある友人梅田君を誘った。Aは「まぁ、モトクロスなんて出たこと無いし、ミドルで走るわ」と言って予選のスタートゲートにつくと、「これって1速で出るんだよね? どうやればホールショット獲れるの? 初めてなんだけど」とまっすぐバイクに座ったままのたまう。いや、2速ですよね普通。才能があるからといって、さすがにいきなりミドルクラスはしんどいだろうと思っていたのだけれど、さくっとホールショットを獲って、さくっと大差で1位だった。ヒーローズは予選で速すぎたら強制昇格のルール。「おい、カシオ(Aのニックネーム)速すぎだぞ! おまえジュニアな!」とクラスを格上げされてしまった。

ヨンゴーだからボクも速すぎだぞって言われちゃうかもなー、まいったなーと思いながらボクもノービスクラスの予選をスタートすると、ヨンゴーなのにスタートを出れない病(重傷です!)が発症して追い上げのレース展開に。もう何位だか忘れたけど、1年前とそう変わらない結果にがっかりすることになった。才能がある人に囲まれると、いいことがありませんね。たまげたのは、スタートでボクの右隣にならんだのが65歳のスズキさんで、左隣は74歳の廣瀬さんだったこと。モトクロスすげぇ……モトクロスし続けたら、70歳超えても元気でいられるんだ。みんな、モトクロスやろうぜ。

なんか乗れてる感ありますね! カメラマンの腕か…

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めちゃくちゃスタート出れてるボク

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決勝ヒート1で意を決してスロットルを開けてみたらしっかりスタート出れてびびった(あたりまえだろ)。8番手で1周目をまわったボクは、YZ250FXで出るよりもとてもレース運びが楽なのに気づく。なんせパワーがみんなの倍くらいあるから、パッシングが超絶楽なのだ。250でラインを変えながらパッシングしても、抜き切れないことが多いのだけど、ヨンゴーならあっさり抜ける。これはいいぞ! と2回ほど調子にのってエンストして14番手まで下がりながらも追い上げのレースで6位。65歳スズキさんは「だめだよ年寄りに負けちゃ!」と話しかけてくる。リザルトをみたらスズキさんは1位だった。どうなってんだよ。

ヒート2はさらによかった。4番手スタートから2番手へ、トップのshimichanと激し(く見えるだけ)いテールトゥノーズを繰り広げ、これまでにないほど楽しい10分を過ごしながら2位でゴール。総合で2位に入り、めでたく初表彰台をゲットしたのでした。80歳までヨンゴー乗るぞと思った。なお、友人Aことカシオはジュニアでも圧勝であった。はよエキスパートいけや。

友人Bはヘルニアで苦しんでいる真っ最中ですが、なんせ成長が早すぎてもう…