寒さを防ぐためのグローブか、それとも運動性をある程度確保したグローブか。冬用バイク向けグローブは、なかなかチョイスが難しいところ。今回は操作性を重視した3製品を紹介しよう

PHOTO/井上演

暖かさをとるか、操作性をとるか……

人間の身体は寒いときに体中の血液を臓器付近に送ることで、大事な臓器の体温を保とうとする恒温性がある。手や足が冷えやすい原因は、この恒温性にあると言われているのだが、冬のオートバイ乗りなら手が冷たくなることが本当に辛いことはご存知のはず。最も風に曝され続けるにも関わらず、ジャケットのように枚数を重ねて厚着をすることもできない。冬のグローブは、単体でできるだけ暖かく保温性のあるものを選びたいと思うのがオートバイ乗りの常だろう。

グローブの形状を複雑な立体裁断にし、最も適した曲がりで成形している

グローブの保温性を高めるにはインサレーション(中綿)の量を多くするのが一般的な手法だが、中綿を大量に入れると操作性が著しく低くなってしまうところが冬用グローブを作るメーカーが苦心している点でもある。そもそもグリップを握ったまま、スロットルを開け、ブレーキやクラッチなどの繊細な操作をおこなう必要があるオートバイ用のグローブは、登山など他の様々な手袋と比較しても格段にモノ作りが難しいアイテムだ。グリップを握る、つまり手指が曲がっている時間が長いため、手の平が開いたままの通常のグローブ向け縫製では、常に手にストレスがかかることになる。だからオートバイ用のグローブはいい具合に全体が湾曲している必要があり、とても細かな立体裁断が求められる。他にも曲がり皺がストレス要因になったり、減速時に指がグローブ内で滑って指先に入ることで痛みを感じたり、無数のトラブルに対してとても細かな配慮が必要だ。

つまり冬のグローブ選びは、操作性と保温性がトレードオフの関係にある。スポーティな走行を楽しみたいライダーには、操作性を重視したグローブがオススメだ。あるいは、たくさんの距離を走ることがあまりないというライダーも、操作性を重視したモデルを選ぶとよりストレスのないバイクライフが送れるはず。たとえば関東に住んでいるなら、箱根までワインディングを楽しみにいって、日帰りする……そんな週末を送っている方であれば、この記事で紹介するモデルを選ぶのがいいハズ。

冬用グローブはボア内装で保温性の基礎を固めている

冬用グローブにはボアが内装されている

保温性を特に重視したモデルではプリマロフトなどの(保温性の高い機能性中綿)を使用するとともに、ロングツーリングなどで起きる天候の急変にも対応できるよう透湿防水性の高いゴアテックスを装備しているものもある。今回紹介するゴールドウインの冬用グローブはどちらかといえば操作性により重点を置いたモデルで、全モデルにボアの内装を仕込むことで保温性を高めている。また、グローブ自体の形状を保つための芯材もある程度の保温性を持っているし、内側に仕込まれたグローブインサートによって防風性もある。そのため操作性を重視したモデルであってもショートツーリングで指がかじかむようなことはない。単に操作性を重視するあまり、保温性をすべて捨ててしまうと、ちょっとした峠越えで指がかじかんでしまい、繊細なブレーキング操作などに支障をきたしてしまうからだ。これら操作性を重視したモデルでは必要十分な防寒性を持ちつつ、より指を曲げやすかったり、グローブ自体をスリムに作る工夫がなされている。

手を離しやすいクラッチ側左手の人差し指にワイパーを装備

また冬用に限らずゴールドウインがこれまで培ってきたノウハウが注ぎ込まれているのも特徴だ。たとえば左の人差し指内側についているウレタンはヘルメットのシールド用ワイパーだ。もしもの転倒時にしっかり手の甲を守ってくれるナックルガード、ジャケットの上から手首部分を巻いて冷たい空気がジャケット内へ侵入することを防ぐカーフ、目立たないように仕込まれたリフレクターなどなど、きめ細やかな仕立てが随所に散りばめられている。

GLOBE no.1 Nano Front Control Globe
グリップとの相性抜群なナノフロント素材が活きる

Goldwin
ナノフロント コントロール グローブ(Motorcycle/ユニセックス)
GB63384
¥17,600(税込)

グローブの操作性を高めるにあたり、重要になるのが手の平面に使われている素材だ。直接スロットルに触れる部分が絶妙な感触でグリップに吸い付いてくれることが、スポーツライディングには欠かせない要素となる。このグローブの特徴である手の平部分のナノフロント素材は、究極の操作性が求められるトライアル競技でも活用されているほど、グリップとの相性がいい。

薬指〜小指にかけて、また手の平の一部の白い部分がナノフロント素材。2本指で操作系を握ることを想定して、人差し指と中指には通常のスウェード素材が配置されている。

教習所で教わる4本指でのレバー操作は、オートバイ操作の熟練とともに1〜2本指になっていくのが通例。それは、レバー操作する瞬間にもハンドルを握ってホールドする、あるいはスロットルを操作するための薬指と小指がとても重要だからである。その大事な薬指と小指に、ナノフロント素材でしっかりグリップに吸い付くようなフィーリングを持たせているのだ。なおかつ、ナノフロント素材はとても柔らかいために指の曲げやすさという点でも優れている。スポーツライディング向けのグローブ用素材として非常に優秀なのだ。

指の動きやすさはシャーリングの折数によっても確保。また、人差し指・中指の第二関節部分には、目立たないがリフレクターが仕込まれている。

手の平のパッドは必要最小限にとどめ、小指側の手首内側に振動を抑制してくれる吸収剤を仕込んである。

コントロール性を重視したモデルの指先は、共通でスマホ操作が可能になっている。

GLOBE no.2 GORE-TEX CE Control Globe
牛革でコントロール性だけでなく耐久性を向上

Goldwin
ゴアテックス シーイー コントロール グローブ(Motorcycle/ユニセックス)
GB63382
¥20,350(税込)

コントロールを重視した「コントロール」シリーズの中でも最上級グレードとなるのがこのゴアテックス シーイー コントロール グローブだ。名前にもあるとおりグローブインサートにゴアテックスを使うことで防水性、防風性、透湿性を高めたうえに、CE規格のナックルガードを装備したモデル。

最も特徴的なのはナノフロント素材を上回る耐久性を持った牛革を手の平全面に使っていることだ。一般的に認知されているように牛革は擦れや引っ張りに強く、長年使い続けられる耐久性を持ちながらも、グリップ力とコントロール性が高い。

人差し指・中指部分には高密度の中綿素材、薬指・小指部分は革の当て、手の平部分にはウレタンシートを仕込み、3種類の異素材によって衝撃や振動を吸収する設計だ。ウレタンがもっとも振動を吸収しやすいのだが、指の曲がる部分には違和感がないように素材を変えている。最も動きを重視しているのは薬指・小指の部分だという。主にエンジンの振動をシャットアウトすることで、疲労軽減を目指している。

ふんだんにシャーリングを設けているだけでなく、指先部分のシャーリングとボディ部分をフローティングさせており、動かしやすさを確保するための工夫が多く見受けられる。

手首部分のバンドは幅広く、しっかりフィット感を高めるタイプ。

人差し指側面と、親指先端でスマホ操作が可能。

GLOBE no.3 Boa Control Globe
リーズナブルでライトな装着感

Goldwin
ボア コントロール グローブ(Motorcycle/ユニセックス)
商品型番 GB63383
¥13,860(税込)

冬用のグローブとしてリーズナブルで手にしやすいモデルのボア コントロール グローブ。プロテクション性能は損なわず、保温性を保ちながらコントロール性を高めたモデルだ。防風、防水透湿素材であるモトランスをグローブインサートとして採用しており、降雨時の快適性など上位モデルと変わらない機能性を持っている。冬用グローブのスタンダード的な存在で、迷ったらこのモデルを選べば間違いはなさそうだ。

手の平部分は合成皮革で必要最低限の振動防止パッドが仕込まれている。柔らかい素材で曲げやすく、運動性能も高い。

ナックルガードはカーボン素材で、転倒時にも心強い。甲部分にはゴートレザーを採用していることで高級感や耐久性も確保。

手首のカーフはジャケットをしっかり包み込み、冷気をシャットアウトしてくれる。