モトクロッサーの発表やAMAへの参戦、アドベンチャーモデルTIGER1200/900など、オフロード業界でも話題のトライアンフが、今年も長野県富士見高原スキー場でミーティングイベント「トライアンフ・ナショナル・ラリー(TNR)2023」を開催した

贅沢すぎるデモランとスクールが開催

9月9日、今オフロードバイク業界で注目のメーカーであるトライアンフが毎年恒例のミーティングイベント「TNR」を開催した。場所は長野県の富士見高原スキー場。ツーリングに最適な立地と、オフロードコンテンツも楽しめるステージで、まさにこれ以上ないチョイスと言えるだろう。

オフロードバイクメディアであるOff1.jpではオフロードライダーに向けて、特に土系コンテンツに注目してイベントの様子をお伝えしていこう。

お昼休みには富士見高原スキー場のゲレンデを使ったデモランが行われた。ライダーは昨年に引き続き、石戸谷蓮が担当。エンデューロ国際A級ライダーであり、ハードエンデューロ世界選手権エルズベルグロデオに挑戦を続けるだけでなく、自身が主催するイベント「CROSS MISSION」などイベントまで手がけていることでも有名だ。昨年はゲレンデを駆け上って終わりだったデモランだが、今年は登って降りてを何度も繰り返し、たっぷりとそのスキルを堪能することができた。縦横無尽にゲレンデを駆け抜けるTIGER1200 RALLY PROと、激しく舞い上がる土煙に観客からは大きな感嘆のため息が漏れた。

石戸谷に続いてTIGER900 RALLYでデモランを行ったのは、藤原慎也。トライアルでは国際A級スーパークラスに参戦し、エルズベルグロデオにも挑戦するライダーだ。

藤原も石戸谷と同じく、ゲレンデを登ったり降りたりを繰り返していたが、一度転倒してしまった。しかもオフロード用語で言うところの「谷側(斜面の下向き)」に車体が倒れており、起こすのも一苦労……と思いきや。

「ひょい」と軽々バイクを起こした藤原に拍手が。後ほどこのデモを見ていた観客に話を聞くとデモランの迫力も去る事ながら、藤原が軽々とTIGER900を起こしたことに一番驚いた、という意見もあったほどだ。

デモランを終えると、たくさんの来場者が石戸谷と藤原の周りに集まり、ツーショット写真をリクエストした。普段はオフロードバイクに触れる機会の少ないトライアンフのファンたちに、エンデューロライダーのテクニックを深く印象つけたことだろう。

さらに希望者に対しては石戸谷・藤原によるオフロードレッスンも開催された。参加者たちは自分のTIGERシリーズやスクランブラーシリーズに乗り、会場近くの林間コースを使ってテクニックを教わることができた。

石戸谷が教えていたのは主にライディングフォーム。バイクのセンターを意識して乗ることで、オフロードでも安定して走ることができ、加えて上半身をリラックスさせることで長時間のツーリングでも疲労を軽減することができることなどを伝えていた。また、藤原は半クラッチを徹底指導しており、参加者はクラッチ操作の奥深さを感じることができていたようだ。

斉藤洋輔さん/東京都
「僕はTIGER800に乗っているのですが普段は舗装路のツーリングがメインで、舗装林道もほとんど入ったことがありませんでした。最初はレッスンに参加するつもりはなかったのですが、デモランを見て『こんなにすごい人が教えてくれるなら』と、参加を決意しました。初めてこういうレッスンを受講したのですが、とても楽しかったし、タメになりました。僕は最初スタンディングで腰を引いて乗ってしまうクセがあったのですが、石戸谷選手に教えていただき、直立して重心を意識して走ったらすごく曲がりやすくなったし、疲れにくくなって驚きました。せっかくアドベンチャーバイクに乗っていて、こういった機会をいただけたので、これまでは入らなかった林道とかにも少しずつ挑戦してみたいな、と思います」

石井蒼一郎さん/愛知県
「僕はバイク歴4年くらいなんですけど、高速道路が楽で林道も走れるという点に魅力を感じてスクランブラー1200を購入しました。以前もアドベンチャー・エクスペリエンスに参加させていただき、こういったレッスンを受けるのは2回目になります。友達と走っているだけでは教えてもらうことができないようなことをたくさん知ることができ、とても勉強になりました。実際にレッスンを受ける前と受けた後では自分でもわかるくらい楽に走ることができるようになりました。上半身をリラックスするために左手を離して林の中を走るのも、最初はちょっと怖かったのですが、教えてもらった通りに乗ってみたらバランスを崩すこともなく楽しく走ることができました。こんなレッスンを無料で受けることができるのは本当に贅沢なイベントだと思います」

もちろん、石戸谷×藤原トークショーも。トライアンフのモトクロスレース参戦の話からTIGERシリーズのオフロード性能の高さまで、オフロードに特化したトークが繰り広げられた。

藤原慎也
「僕らはバイクに乗った瞬間に『イケる』か『ちょっとしんどい』かわかるんです。ところがTIGER900は初めて乗らせてもらった瞬間に『このバイクは“イケる”バイクや』と思いました。そう思えたことが、僕にとってTIGER900の評価がめちゃくちゃ高いということなんです。僕の前に石戸谷選手がデモランを行ったのですが、実はその間ずっとステップの上でバランスを取って停まっていた(スタンディング・スティルをしていた)んです。そこですごく重心バランスが良いことがわかったので、早く走りたくてニヤニヤが止まりませんでした」

ツーリング途中にふらりと立ち寄れる
自由な空気が心地よい

TNRはトライアンフに限らず全てのメーカーのバイク乗りが参加できるイベントだ。今年は昨年よりも参加者が約15%増、943人の来場があった。事前に申し込みしておけばイベント自体の参加費は無料なこともあり、丸一日滞在するライダーだけでなくツーリング途中に立ち寄るライダーも多かった。

会場内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、イベントステージ。様々なゲストが参加するトークショーがひっきりなしに行われており、のんびり椅子に座ってステージを見ているだけでも十分に楽しめる。

様々な企業やクリエイターが出展しており、バイクアイテムの買い物も捗る。実際に商品を手に取り、メーカーの方から詳しい説明を聞くことができる貴重な機会だ。

飲食の出店もたくさんあってお昼ご飯は目移りしてしまう。やはりトライアンフの母国イングランドの料理「フィッシュ&チップス」が人気だった。

カスタムバイクコンテストも開催。たくさんの煌びやかなバイクの中には、なんと洗車されていないスクランブラー1200も展示されていた。モーターサイクルショーなどでもよく使われる展示方法だ。

最後にはカスタムコンテストに出品していた車両の投票結果が発表。石戸谷が特別賞に選んだのは、汚れたままの状態で展示されていたスクランブラー。オーナーは以前Off1.jpにも出演して頂いたことがあるYouTuber、BANZAIりょ〜ちゃんねるさん。

オンロードバイク勢にはケニー佐川によるライディングレッスンが開催。この時はフルブレーキによる急制動のレッスンが行われていた。

さらにトライアンフ現行モデルの試乗ツアーも開催。最高の天気に恵まれて、とっても気持ちよさそう。気になるモデルを体感できる貴重な機会となった。

一日中滞在してお腹いっぱい楽しむライダーから、ツーリング途中にふらりと立ち寄り、イベントの空気感を楽しんで次の目的地へ向かうライダー、さらにはそのままキャンプするライダーまで、様々なスタイルで楽しむことができるのが、TNRというイベントだ。

来年はモトクロスレースの参戦もあり、今から一年後のTNRが楽しみで仕方がない!