2024年にAMA スーパーモトクロスシリーズ250クラスに参戦すると宣言しているトライアンフ。いよいよそのマシンの姿が見えてきた

遙かスペインで聞いた

つい先日、編集部がとある関係者を取材しているときに聞いた話だ。トライアンフのオフロード車に関するテストが10年以上前にスペインで頻繁におこなわれていたという。その頃は旧タイガーシリーズがまだ発表されていない時期で、トライアンフブランドのオフロードラインそのものが存在していなかったのだが、その関係者は「トライアンフの連中は、その頃から口々に言ってたんだよ。俺たちはいずれモトクロスバイクを作って、オフロードの世界を席巻する。今はこのタイガーの開発からやってるけど、そのうちにコアなオフロードマシンを作るんだって」と話してくれた。

思い返してみればトライアンフというブランドは、オフロードに対して真剣で積極的だ。たとえばスクランブラー1200は、ヴィンテージマシンのような姿をしていながら、倒立サスペンションに支えられる強靱な足回りを持ち、オフロードバイクとしてもしっかり成立するレベルにまで高められている。ガワだけのスクランブラーではないのだ。

タイガーシリーズのオフロード性能も目を見張るものがある。以前、Off1でインプレッションしたタイガー1200ラリーは、3気筒という大きな心臓を抱きながらも軽量感に溢れ、ドライバビリティに優れた車体を実現している。やや上級者向けなきらいは否めないが、だからこそ玄人も満足できるアドベンチャーバイクが、タイガー1200ラリーだ。

トライアンフがモトクロスやエンデューロに進出するという話が出てきたとき、そんな馬鹿なと思った。だが、よくよく思い出してみれば、トライアンフの開発陣たちは真剣で実直なオフロードエンスージアストなのかもしれない。

少しずつ明らかにされる、トライアンフのモトクロッサー

このたびトライアンフのYoutube公式チャンネルで公開されたのは、Vision to Reality: The Development of Triumph's Motocross Chassisという題の映像。なかなか詳細が発表されないトライアンフのモトクロッサーに対して、オフロードバイクファン達がやきもきしているのをよくわかって付けているタイトルである。

Vision to Reality: The Development of Triumph's Motocross Chassis

youtu.be

残念ながらそのすべての姿を見ることは適わず(SNSを賑わせ始めたトライアンフのモトクロッサー車体画像は、オーストラリアのメディアがAIを使って生成した予想画像だ)、発表されたのはフレームだけである。

トライアンフモトクロスのアンバサダーで、開発にも大きく関わっているリッキー・カーマイケルが最初に登場し、チームオーナーのボビー・ヒューイットらがプロジェクトの概要を説明していく。

アルミの塊から削り出されるプロトタイプらしきフレーム…。

48秒あたりでいよいよ、今回のYoutubeの目玉であるフレームがお目見え。

材質はアルミだが、日本の国内4メーカーに共通しているツインスパー型ではなく、あくまでクロモリのフレームで多く用いられてきた“一般的な”セミダブルクレードルの形をとるようだ(※ツインスパー型もまさにセミダブルクレードルの一種だけど、ここでは便宜上、コンベンショナルなセミダブルクレードルのことを指す)。アルミを選択した理由は映像の中でも語られている通り、安定感とトラクションを稼ぎやすく、さらに車体の反応はクイックだからという理由からだ。ヒューイットは「他社の真似ではなくアイデンティティを持ったフレームを目指した」と言う。

映像のラストには、エンジンらしきカットが。ということで、次回はついにエンジンがお披露目されるとのこと。