トライアンフのミドル・アドベンチャーモデル、TIGER 900シリーズにARAGON EDITIONが発表された。オフロードライディングに適したミドルタイガーの、今シーズン限定モデルをお見逃しなく!

BAJA ESPAÑA ARAGONでクラス優勝

2022年7月22〜24日、スペインのアラゴン州で開催されたラリーレイド「BAJA ESPAÑA ARAGON 2022」に、エンデューロ世界チャンピオンのイヴァン・セルバンテスが参戦した。マシンはTRIUMPHのTIGER 900 RALLY PRO。セルバンテスはこの年から新設されたトレール部門において、2位に1時間以上の圧倒的な差をつけて優勝し、レーサーマシンを含んだ総合順位でも11位に入る快挙を成し遂げた。

イヴァン・セルバンテス
「私たちは明確な目標を持ってバハ・アラゴンに参戦しました。その目標とは、Tiger 900 RALLY PROで、新設されたトレールカテゴリーを制覇することでした。しかし、それ以上に大きな私たちの目標は、総合でも可能な限り高い順位でレースを終えることでした。みんな私たちの出したタイムに驚いています。私たちは素晴らしい仕事をしたことを誇りに思い、センセーションを巻き起こすことができたと確信しています。オフロードレースでトライアンフの存在をアピールし、その地位を確固たるものにしていることをもう一度証明したのです。このレースを選んだ理由としては、将来的にエンデューロプロジェクトでこのカテゴリーに参入する計画があるためです。もちろん、そこでも成功を収める予定です!
長い年月を経てバハ・アラゴンに戻ってくることができ、トライアンフと共にカテゴリーチャンピオンとしてホームに帰ってこれたことをとても嬉しく思います」

RALLY or GT
2つのARAGON

そんなセルバンテスの快挙から1年、ARAGONの名を冠したTIGER 900が満を持して発表された。

TRIUMPH
TIGER 900 RALLY ARAGON EDITION
¥1,905,000(税込)
予約開始:2023年7月20日、店頭販売:2023年8月以降

RALLYはマットファントムブラック、マットグラファイト、クリスタルホワイトの3色に彩られ、やはりセルバンテスがライドしたマシンからディティールを受け継いだグラフィック。燃料タンクとフロントフェンダーに配置されたレーシングイエローと、ツインカラーのシートがアクセントになっている。基本性能はTIGER 900 RALLY PROと同様だが、フロントサスペンションのみ、オフロード性能を向上させたSHOWA製チューニングサスを採用。また、エンジンプロテクションバーと燃料タンクプロテクションバーが標準装備されている。

TRIUMPH
TIGER 900 GT ARAGON EDITION
¥1,865,000(税込)
予約開始:2023年7月20日、店頭販売:2023年8月以降

GTはディアブロレッド、マットファントムブラック、クリスタルホワイトの3色をベースにセルバンテスのバハ・アラゴン優勝マシンのディティールを受け継ぎつつ赤を基調に仕上げられている。基本性能はTIGER 900 GT PROと同様だが、フルアジャスタブル45mmUSDマルゾッキ製カートリッジフォークと、リアショックには電子調整式RSUを採用。エンジンプロテクションバーを標準装備している。

ベースとなったTIGER900
トライアンフ伝統のトリプルエンジンを大幅刷新!

TRIUMPH
TIGER 900 GT
¥1,655,000(税込)

TIGER 900は2019年12月に発表され、2020年モデルとしてトライアンフのラインナップに加わった。旧モデルであるTIGER 800の登場から実に11年ぶりとなる待望のフルモデルチェンジであり、排気量が増え、電子制御が充実しているにも関わらず大幅な軽量化が行われていた。

特に注目したいのは、新開発のトリプルエンジンに搭載された新機構、Tプレーンクランクだ。

TIGER 900以前のトライアンフ・トリプルは原則としてクランクピンを120度ずつ等間隔に配置しており、ピストンが2回上下する720度の回転運動の中で240度に一回爆発を起こしていた。しかしTIGER 900のエンジンではクランクピンを0度、90度、180度という間隔で配置し、点火順序を1番→3番→2番とすることで180度、270度、270度という不等間隔の爆発を作り出すことに成功している。

通常のトリプルエンジンとTプレーンクランクの比較イメージ図

そう言われてもピンと来ない人も多いだろうが、実際にタイヤが回る仕組みを思い浮かべてみると、実にわかりやすい。エンジンはピストンの上下運動をクランクシャフトによって回転運動に変換し、タイヤを回している。つまり、エンジンの爆発(ピストンが上下)が不等間隔であれば、タイヤもまた不等間隔で回る。そのためグリップの悪いオフロードでもトラクションをかけるタイミングが掴みやすく、コントロール性を向上させているのだ。

このTプレーンクランクは2022年発売のTIGER 1200シリーズにも採用されて好評を博しており、今後のTIGERシリーズには欠かせないトライアンフの新世代トリプルエンジンとして定着していくことだろう。

TIGERをこよなく愛するショップ・トライアンフ浜松
林代表がTIGER900の魅力を語る

全国31店舗のトライアンフ・ディーラーの中でも、歴代のTIGERシリーズを乗り継いできたトライアンフ浜松代表の林忠司氏に、TIGER 900の魅力を伺った。

「TIGER 800から900にモデルチェンジした時に、排気量が上がったにも関わらず車重が減って重心も下がっていて、跨った瞬間に軽くなったことが実感できました。エンジンにもTプレーンクランクが採用されてダートでのトラクションが乗せやすくなってますし、他社のミドルアドベンチャーと比べてもとてもクオリティの高い仕上がりになっています。

また、TIGER 800ではサスペンションがWPだったのですが、900ではSHOWAになっていて、これが本当に良いデキなんです。SHOWAの二輪開発センターの人たちともよく話すのですが、本当に何度も何度もやり取りを重ねて、苦労して開発したそうです。その甲斐あって本当に性能が良くて、これならダートも楽しめるな、と思いました。

イギリスはマン島TTをやってますからね。イギリス人はあんな速度域の高い危ないレースを100年以上前からやってる人たちなんです。そういう人たちが仕上げると、ハンドリングってこんなに正確なものができるんだって驚きますよ。

うちでも若いお客様が大型免許を取ってすぐにTIGER 900 RALLY PROを買ってくれて、2〜3ヶ月後に10,000km点検に持ってきて驚いたことがありました。そのくらい面白いバイクなんです」

80年以上の歴史を持つTIGERシリーズの源流に迫る

トライアンフは1902年に設立された、世界で最も長い歴史を持つモーターサイクルブランドの一つだ。その中でもTIGERの歴史は80年以上前から始まっている。現在でこそ、TIGERはアドベンチャーモデルとしてその名が知られているが、1936年のISDT(インターナショナル・シックス・デイズ・トライアル。現在のISDE)では、3つのゴールドメダルを獲得しているモデルなのだ。

その後も様々なモデルにTIGERの名が使われたが、現在のアドベンチャーモデルの原型ができたのは1993年のこと。TIGER 900、TIGER 955i、TIGER 1050、TIGER 800など、排気量・車種名を変えつつも脈々と生産が続けられ、2022年には最新のTIGER 1200シリーズが発売している。

また、トライアンフは2024年からAMAスーパークロス/プロモトクロス、FIMモトクロス世界選手権に参戦することを表明しており、今後はアドベンチャーモデルであるTIGERシリーズにもレースシーンからのフィードバックが反映されるようになってくるだろう。