HondaのニューモデルCL250に試乗する機会を得た。このRebel250のような見た目のスクランブラー、CL250は果たしてオフロードを走れるのか……。オンロードのみの試乗会ではあったがOff1ではその部分を検証してみた

HondaのCLシリーズはバハカリフォルニア半島をノンストップで走り、その後のバハ1000の礎となった名車1962年式ドリームCL72に端を発した、スクランブラータイプのオートバイに付けられる称号だ。スクランブラーとは、アップマフラーや大径ブロックタイヤ、アップハンドルなどオフロード走行に適したカスタムを施したマシンを指しており、ドリームCL72もドリームCB72をベースに作られていた。それから1998年のCL400まで様々な排気量のCLシリーズが作られ、今回のCL250/500では実に25年ぶりの復活となった。

Rebel250に似て非なるスクランブラー

Honda
CL250
¥621,500(税込)
カラー:キャンディーエナジーオレンジ、パールカデットグレー、パールヒマラヤズホワイト

見た目は、本当にRebel250に似ている。それもそのはず、メインフレームをRebel250と共有しており、サブフレームのみCL専用に新設計している。これをRebel250 スクランブラーカスタムと言われても疑いもせず納得してしまうだろう。しかしCL250はスクランブラーであり、クルーザーモデルであるRebel250とは求められる性能が全く異なる。

Rebel250との違いはココ!
オフロード走行も考慮したエンジンとシャーシ

エンジンはかつてのCBR250Rや現行のCRF250L、Rebel250で採用されているものと同型で、味付け次第でオンロードからオフロードまでこなせることは証明されている。スクランブラーであるCL250のパワーユニットはオンロードとオフロードの中間を目指して作り込まれていった。まず排気系全体の長さと管の太さを変更したことで中速のパワーを向上。また、リアサスペンションのストローク長を確保したことでエアクリーナー周りの自由度が向上し、空いたスペースに専用の吸気ダクトを設け、長い吸気経路を確保することで低速のレスポンスを向上させている。

ボア×ストロークはRebel250と同じだが、オフロードモデルであるCRF250Lと同じカムシャフトを採用することでバルブタイミングを最適化し、より低回転域でのレスポンスを向上させている。さらにリアスプロケットを37丁(Rebel250は36丁)にすることで、若干ローギアードにセットアップされている。

メインフレームの設計はRebel250と共通部分が多いが、よりスクランブラーらしいハンドリング特性を得るためRebel250に比べてキャスター角を1°立てて27°としている。実はRebel250はクルーザーらしい優雅なスタイルを演出し、さらにロードバイクさながらのハンドリング特性を両立させるためにキャスター角に対してスラント角を設け、フロントフォークを2°寝かせて取り付けるという特殊な設計になっているのだが、CL250では通常の設計に戻し、結果的にCL250のフロントフォーク角はRebel250に対して3°立っている計算になる。このためトレール量はRebel250が110mmであるのに対しCL250は108mmとなっており、ニュートラルなハンドリング特性と小回りの良さを実現している。

フロントサスペンションはインナーパイプ径41mmの正立フォークを採用しており、ストローク量は150mm。リアショックはツインショックアブソーバーを採用し、145mmのストローク量を確保。オフロード走行を考慮し、足は前後とも長くなっている。これによって重心が高くなっていることも運動性能の向上に寄与している。

Rebel250が前後16インチタイヤだったのに対し、フロントタイヤは19インチ、リアタイヤは17インチとなっており、オフロード走行も楽しめる設定。溝の深いブロックパターンのDUNLOP TRAILMAX MIXTOURを純正タイヤに採用している。また、ブレーキはフロント310mm、リア240mm(Rebel250は前後とも240mm)。

Rebel250はクルーザーモデルということもあり、690mmという低さを持っていたが、CL250のシート高は790mm。ただしタンクとシートの繋ぎ目がかなり細身に作られており、足をまっすぐ地面に下ろすことができ、足つきは良好。

Rebel250に対してステップの高さも上がっており、バンク角が深く、小回りが効くようになっている。

高ギヤ+低〜中回転域のレスポンスが良い
オフロードバイクに似たエンジン特性

実際にライディングしてみると、本当に驚くほどスムーズな回転の上昇と、吹け上がりの早さに一瞬戸惑ってしまう。まるでオフロードバイクに乗っているような感覚で、僕らオフロードフリークにしてみれば嬉しい誤算とも言える。メーターにはタコメーターの表示がないため、詳細な回転数はわからないが、スペック上だと18kW[24PS]/8,500prmとなっていて、最高出力発生回転数はCRF250Lよりも500回転低くなっている。

サイレンサーから奏でられる「ストトト……」と小気味良い排気音に吊られて、低ギヤのまま高回転を味わってみようとスロットルを捻っていくと、あっという間にレブリミットに当たってしまった。その代わり、3〜4速で低〜中回転域を使って国道を流している時の気持ちよさは、かなり秀逸だ。低い回転域なのにも関わらず、ほんのわずかにスロットルを開け閉めするだけで、車体がリニアに反応し、加減速を返してくる。レスポンスがめちゃくちゃいい。この乗り心地はCRF250Lにとても似ている。試乗後に開発担当者に話を聞くと、まさにこの低〜中回転域を使った走りの楽しさを狙って開発したのだという。

アップハンドルを装備しているため、ライディングポジションもオフロードバイク然としていて、スタンディングした時も実にナチュラルに乗れる。ブレーキペダルも一般的なロードモデルに比べて少し高めに設定されており、最初からスタンディングしてオフロード走行することを前提に作られていることがわかる。

全体的な見た目から受ける印象こそ過去のCLシリーズとはかけ離れているが、これはまさにスクランブラーモデルの乗り味そのものであり、これならばむしろオフロードバイクよりも気軽にフラットダートに入っていけるようにも思えた。

CL250のLPL代行を務める小数賀巧氏(二輪・パワープロダクツ事業本部 ものづくり統括部 商品開発部 商品開発課 スタッフエンジニア)は「開発した熊本のテストコースの中には起伏のある砂利のフラットダートがあり、そこで乗り込んでサスペンションのセッティングやスロットルレスポンスを煮詰めていきました。腹打ちさえしなければダートも楽しんでもらえるスクランブラーモデルに仕上がっています」とそのオフロード性能の高さを保証してくれた。

燃料タンク容量は12L。車体のカラーリングはタンクのみに反映しており、キャンディーエナジーオレンジ、パールカデットグレー、パールヒマラヤズホワイトの3色がある。

ヘッドライトは円形のレンズの中に4つの直射式LEDが並べられたシンプルかつ特徴的なデザイン。ロービームで上2つが、ハイビームで4つ全てが点灯する。

試乗は叶わなかったが、CL500も展示されていた。スペックを見るとエンジンのボア×ストロークは67.0×66.8mmとスクエアに近い特性だが、CL250で実現しているトコトコ感のあるエンジン特性は同様に備わっているという。

カスタムベース車としても優秀
豊富なカスタムパーツが同時発売

HondaはこのCL250/500をカスタムベース車として自身のライフスタイルに合わせて様々なカスタムを楽しんで欲しいと言う。その証拠に、純正カスタムパーツのほか、サードパーティのカスタムパーツが最初から贅沢に揃えられている。

試乗会では3つのカスタム車両が展示されていた。

なお、シートレールには最初からダミーボルトが装着されており、リアキャリアの装着など、カスタムを誘導する仕込みがなされている。

CLはバイクライフの入り口

「価値観はすでにそれぞれの若者自身が持っているんです。だから私たちは彼らの既存の価値観を変えず、自由に楽しめるバイクを作りました。CLの自由さや気軽さ、そしてそれによって得られる解放感を感じてもらえたらと思います」

試乗会の冒頭、LPL代行を務める小数賀巧氏(二輪・パワープロダクツ事業本部 ものづくり統括部 商品開発部 商品開発課 スタッフエンジニア)はCL250/500のコンセプトをこう説明した。

「僕らはスクランブラーを作りたかったんです。世の中ではキャンプやアウトドアが流行っていて、車ではSUV、バイクではアドベンチャーがブームになっていて、会社の方針がマッチして、プロジェクトが始まりました。

このCL250/500はバイクライフの入口だと思っています。もしCLに乗ってオフロードが楽しいと感じたらCRF250LやCRL1100L AfricaTwinなど、もっと走破力のあるバイクに乗り換えて楽しんでいって欲しいですし、ワインディングが楽しいと思うならCBR250RRに、クルージングが楽しければRebel250に、といったように今後の自分のバイクスタイルを選ぶための一台として考えていただきたいです」と小数賀氏は語る。