大学生たちのオフロードレース「キャンパスオフロードミーティング(キャンオフ)」の東日本シリーズ第一戦が山梨県クロスパーク勝沼で開催された。クロスパーク勝沼は雨が降ると路面が氷のようにスリッパリーになり、難易度が上がることで有名だ。ところが梅雨時期の開催にも関わらず、レースウィークは奇跡的に金・土・日と晴れ。ほぼベストコンディションでのレースとなった。
ここ数年、キャンオフ東日本は5時間耐久エンデューロレースを基本フォーマットとしている。1人で5時間走り切ってもいいし、バイクが1台あれば2人、ないし3人でチームを組んで参加してもいい。もちろん同じチームでバラバラのマシンでもOKだ。同じ大学の仲間、OB同士、会社の同僚と、さらには全日本選手権を走るライバル同士など、バラエティに富んだエントラントが集まった。
コロナ禍が続いていたここ2〜3年は大学側からサークル活動が制限されており、なかなか新入生に恵まれなかったが、今年は待望の一年生が各校にたくさん入部していた。中にはバイクに乗るのが2回目という超初心者もいて、そんなライダーが一生懸命にコースを一周する姿に、かつての自分の姿を重ねて胸を打たれたライダーも多かったのではないだろうか。参加した主な大学は信州大学、トヨタ東京自動車大学校、東京都市大学、東京工芸大学、工学院大学、金沢工業大学、そして日本大学OB、芝浦工業大学OBなどなど……。
各大学の新一年生たち。初めて会う他校の生徒とは、まだ打ち解けていない。部活に受け継がれてきたお下がりのウエアやブーツに身を包み、車両も部活所有のマシンやキャンオフが用意しているレンタル車両を使う。レース後には「楽しかった!」と笑顔を見ることができた。きっと10月に開催される全国大会では、見違えるほど成長した走りを見せてくれるだろう。
花火と共にレーススタート。スタート方式はル・マン式で、モトクロスコースのホームストレートの端から端までダッシュ! コースの奥の方が走る距離が長いとか、そういうツッコミは野暮というものだ。
コースはモトクロスコースを半周してエンデューロコースに入り、またモトクロスコースに戻ってきて一周というレイアウト。
エンデューロコースの後半の登り坂では一周目から渋滞が発生。斜度は大したことないが、土がスリッパリーで加速が十分でないと登りきれず、再発進にもテクニックが求められるのだ。なお、上級者のライダーはこのラインを使わず、右側のウッズの中を根っこを乗り越えて登っていく。
エンデューロIAの齋藤祐太朗もレースに参加。土曜日にはスクールも開催しており、学生たちにとっては日本トップレベルのライダーと触れ合える貴重な機会となった。
クロスパーク勝沼の名物ヒルクライム「フレアラインヒル」も開放され、登頂すると周回数が一周加算のボーナスラインとされた。なお、中腹から路面がウェット気味になっていたこともあって、登頂に成功したライダーはわずか5人のみだった。
お揃いのド派手な蛍光イエロージャージにYZという組み合わせの#87は馬庭隼人、森慎太郎、増田健太のチームRidge Cycle。3人とも全日本エンデューロ選手権に参戦するIBライダーだ。
5時間で33周を走り、総合優勝したのはソロ参加のRICK。なんとマシンはトリッカーだ。
レース中盤からはエンデューロコース奥の大坂のショートカットが塞がれ、コース難易度が上昇。上級者は斜度の急な右側の坂を楽々登るが、初心者は斜度の緩い左側の坂が登れず、スタッフに引き上げられた。
若さあふれる表彰台
「キャンオフを支える大人たち」第二回:Pulse 木村さん
昨年9月の信州大会レポートから始めた連載「キャンオフを支える大人たち」。第二回は横浜市泉区でバイクショップ「モトファクトリーPulse(パルス)」を営む木村良実さんを紹介する。MOTULやブリヂストン、ベスラなど二輪メーカーとのパイプを築き、キャンオフの協賛品が信じられないほど豪華なのは、木村さんがいたからこそなのだ。
木村良実
「僕は若い頃にMCFAJのモトクロスレースに出ていたのですが、その頃キャンオフは大学生しか出られなかったんですよ。僕は大学に行ってなかったので、当時友人がキャンオフに出ているのを羨ましく見ていたのですが、まさか30年経って自分がキャンオフに出場でき、こんなに深く関わることになるなんて思ってもいませんでした。
きっかけは、2015年に長男が東京都市大学のモーターサイクル部に入部したことでした。息子がオフロードバイクに乗るのなら僕も久しぶりにモトクロスがやりたいな、と思って友達からYZ125を借りてきたんです。そしたらそれを息子に取られてしまいまして(笑)、僕は他の友人からKX250Fを購入して乗り始めたんです。
当時はちょうどキャンオフを運営していたビッグクルーが解散してしまって、学生が自分たちでレース運営を始めたタイミングだったんです。今でこそWebikeさんをはじめ様々な会社がキャンオフを支援してくれていますが、最初は中古タイヤや中古ウエアなどが景品になっているような大会だったので、僕がPulseとしてブリヂストンさんのタイヤを2〜3セット提供していたんです。また、取引先のMOTULさんやベスラさんにお願いしたら快く協賛品を出してくださり、それが今でも続いています。
実は息子が大学を卒業したタイミングで手を引くことも考えました。当時のキャンオフは大学3〜4年生が代表を務めていて、一年で代替わりしていたんです。するとどうしても運営することで手いっぱいになり『協賛品はもらって当たり前』みたいな風潮になってしまったんですね。これは潮時かな、と思っていたところ、現代表の渡部くん(芝浦工業大学OB)が代表に就任して『これからは僕がしっかりやりますので、よろしくお願いします』と挨拶に来てくれて、それならば乗りかかった船なのでやれるところまでやろうかな、と思い直したんです。
そうして改めて『僕にできることはなんだろう』と考えた時に、やっぱり協賛企業を募ることだと思いました。レース活動を続けるのにはとてもお金がかかりますし、自分たちが子供の頃って、こうした助けってあまりなかったんですよ。そこでまずブリヂストンさんに声をかけたところ、僕が出していた協賛品のタイヤをブリヂストンさんから出してくれることになり、さらに大会に齋藤祐太朗選手を派遣してくださるようになりました。前日スクールの開催やレースへの参加を通して、学生たちにとても喜んでもらっていると思います。また、僕の店が加入している神奈川オートバイ事業協同組合と提携しているLAVENさんにもお願いして協賛してくださることになりました。これからも僕の持ってる限りの人脈を使って少しづつ協賛してくれる企業を探していこうと思っています。
正直親心的なものはありますよね。東京都市大学の学生たちはお店にも遊びに来てくれて、若い子達がバイクに乗っていたら応援してあげたくなります。キャンオフを存続していきたいという彼らの気持ちを、大人として支えてあげたいと思っています」
木村さんの長男・亮太くんは今大会も計測係・カメラマンとして参加しており、その写真はここで見ることができる。
なお、Off1撮影の全写真はこちら!
「キャンオフを支える大人たち」の第一回に出演してくれたデッシーさん、今回もマーシャルとして参加し、たくさんの学生を助けていた。
ブリヂストンの齋藤祐太朗は土曜日のスクールだけでなく前夜祭にも参加し、JNCCに参戦する学生たちにアドバイスを送っていた。
救護として関西から駆けつけるJOMSのkojimitu(コジミツ)さん。西日本代表の丹羽さんと相乗りで山梨まで遠征してきた。バイクに慣れていない大学生も彼らがいるから安心してレースに参加できている。
ラフアンドロードの小野里さん。今回は特にX-GRIPのタイヤが好評で土曜日に売り切れてしまったため、一度会社に戻って補充してくれたのだとか。
ライダーとして参加したWebikeの梅津さん。Webikeは今大会にも合計10万ポイントを提供してくれており、学生たちのオフロードバイク活動を支えている。
スタントライダー小川裕之も林道部の仲間を率いて参加。自身のYouTubeチャンネル「OGAチャンネル」で楽しく配信してくれる予定だ。
豪華すぎる景品をゲット!
さらにキャンオフでは参加者有志による協賛品の持ち込みも行われていて、誰でも協賛可能。TシャツやAmazonギフト券、カップ麺などなんでもOKだ。なんと今回はエルズベルグロデオに観戦に行ったスタッフから「エルズベルグの石」が協賛され、会場にどよめきが起こった。
キャンパスオフロードミーティング東日本、次戦は9月3日、長野県信州マウンテンパークにて5時間耐久レースが開催される。