モトクロスやエンデューロをスポーツとして楽しんでいる僕らOff1編集部は、やっぱりツーリングに使うにもオフロードバイクを選んでしまうんですよね。だけどもうおじさんなので、250ccで長い時間高速道路を走ると疲れてしまいます。そこで今流行りのアドベンチャーモデルが欲しくなるわけです。ではどのメーカーを選ぶのか、となった時にやっぱり面白そうなバイクに惹かれてしまいます。そこで今回は3気筒エンジンを搭載しているトライアンフのTiger1200を借りて林道を走ってきました。
GT or RALLY?
林道メインでも敢えてGTを選ぶ理由
Tiger1200 GT PRO、Tiger1200 GT EXPLORER、Tiger1200 RALLY PRO、Tiger1200 RALLY EXPLORERの4つのラインナップの中から、僕らが選んだのはTiger1200 GT PRO。「え? Off1はオフロードバイクメディアなんだからフロント21インチ、リア18インチホイールのTiger1200 RALLY PRO/EXPLORERを選ぶんじゃないの?」と思った人もいるでしょう。
そう、Tiger1200 GT PROはフロント19インチ、リア18インチなのです。確かにタイヤサイズが21-18だとオフロードの走破力は確実に高くなるし、オフロード走行に適したタイヤの選択肢も増えます。さらにRALLY PROの方がサスペンションのストロークが長くなりますので、オフロードバイク好きがTiger1200を買うなら、普通はRALLY PRO一択でしょう。しかしGT PROの方が低重心のためオンロードでの快適性が高いし足つきも良いのです。さらに近年ではフロント19インチでもオフロード向けのタイヤが多数リリースされていて、タイヤ選びの幅も広がっています。僕らがTigerでやりたいのはオフロードコースでのスポーツ走行ではなく、高速道路を使ってサクッと林道へ行き、フラットダートを楽しんで帰ってくるような、そういう遊び方なんです。
もちろん僕らはオフロードバイクメディアなので、フロント21インチやサスペンションストロークが長いことによる恩恵はよく理解しています。例えば最近オープンしたKUSHITANIのONTAKE EXPLORER PARKに持ち込んで遊ぶのなら、Tiger1200 RALLY PRO一択でしょう。でもじゃあその遊びを年に何回できるのか……都内に住んでいる僕らにとって、メインで走るのはやっぱり関東のフラット林道になるわけです。
例えば21インチのRALLY PROで林道を走っていた時に丸太に遭遇したとします。避けて通れないように道幅全体に横たわっていて、動かすのも難しそうです。その時に果たして車両重量200kgを超え、メーカー希望小売価格約250万円のTiger1200 RALLY PROで丸太越えにチャレンジするでしょうか? 僕なら迷わずUターンします。もちろんそれはGT PROでも同じです。21インチだろうが19インチだろうが、リッターアドベンチャーで丸太を越えるのは一般人がやることではありません。
そしてこれは以前、試乗会で19インチのGT PROで走ってみてわかったのですが、タイヤサイズが小さく、サスペンションが短いことはデメリットばかりではなく、低重心というメリットもあるんです。そのあたりを再確認してみたくて、今回はGT PROを選んだというわけです。
PROとEXPLORERの違いは主にタンク容量。PROが20LでEXPLORERが30L。あとはEXPLORERにはブラインドスポットレーダー(斜め後方の死角に車両が接近すると点灯して教えてくれるセンサー)が搭載されています。僕らはそこまで長距離を走らないので30Lタンクは不要かな、というのと、20Lタンクの方が細身のため足が下ろしやすく(スペック上のシート高は同じ)、スタンディングフォームも取りやすかったので、PROを選びました。
足つきの良さが安心感に変わる
電子制御に支えられたライディング
とにかくそんなTiger1200 GT PROに乗って、やってきたのは奥多摩。都内から関越道→圏央道で青梅ICを降り、そこから下道。都心からでも約1時間でアクセスできるツーリングスポットです。高速道路に乗れない125cc以下だと到着するまでに時間がかかりすぎてしまうし、250ccのオフロードモデルでもちょっと疲れてしまいます。とにかく「早く、楽に」目的地に着くことができるのが、アドベンチャーバイクの醍醐味ですね。
例えば朝6時に起きて出発すれば、7時から1時間林道を走って、9時の出社に間に合わせることだって夢ではありません! トランポにレーサーを積んで河川敷に朝練に行くのは難しくても、この遊び方なら平日に朝練ができちゃうんですね。
高速道路を快適にするのはまず、大きなシールド。Tiger1200 GT PROは手動でシールドの高さを調整することができ、風の抵抗が大きい高速道路では高く、林道など視界を広く保ちたいところでは低くすることができます。
また、クルーズコントロールも搭載されています。任意の速度で固定してしまえば、右手をスロットルから離してもその速度を維持してくれて、±ボタンで微調整まで出来てしまうので、右手の疲れも軽減することができます。
Tiger1200シリーズには、不等間隔に爆発するTプレーンクランクを搭載した3気筒エンジンが採用されています。一般的に、エンジンの気筒数は少ないほど低回転型、加速重視の性能になり、多いほど高回転型、最高速重視の性能になります。そのため小排気量のアドベンチャーモデルでは単気筒が主流となっており、多くの大型モデルは2気筒を採用しています。
トライアンフのお家芸とも言える3気筒エンジンも、2気筒に比べて低速トルクが不足しがちなのは否めません。そこで開発されたのが、このTプレーンクランクなのです。これにより低回転時は2気筒のようなリニアなレスポンスを、中〜高回転時では3気筒独特のエキサイティングな出力を発揮します。
まずは奥多摩の代名詞とも言える奥多摩周遊道路を走ってみました。以前ここを走ったのは125ccだったので、ずっとアクセル全開のままで、それはそれで楽しかったのですが、少し物足りなさも感じていました。しかし今日は1158cc……。正直オンロードでの走行があまり得意ではない僕は、どれだけアクセルが開けられるのか、少し不安もありました。
ところが実際に走ってみると、乗り慣れている単気筒のオフロードバイクにかなり近い低速の扱いやすさを感じることができました。高速道路ではROADにしていたライディングモードをSPORTにすると、より中〜高回転域のパワーが感じられるようになり、さらにサスペンションも硬めになるため、走行が安定します。ブレーキングした時やスロットルを開けた時に車体がピッチングする動きが小さくなり、恐怖心を感じないため、安心して寝かすことができました。これにはフロント19インチの恩恵が大きいと感じました。
奥多摩はほとんどの林道がピストンで、さらにこの日は数日前の雨の影響で通行止めも多かったのですが、無事に通行できる林道不老線を発見。ライディングモードをOFFROADにすると極低速のピックアップが良くなり、細かいアクセル操作にマシンがしっかり反応を返してくれるようになります。おかげでスロットル操作だけでマシンの挙動をコントロールすることが可能になり、ライディングに集中できました。
逆に中〜高回転域での出力は少し弱くなるのですが、林道は一般の道よりも道幅が狭く、ブラインドコーナーも多いため、そんな回転数で走ることはありません。万が一クローズドのコースに行って思い切り走れる場合でも、1158ccのエンジンに物足りなさを感じる人はいないでしょう。
オンロードタイヤでも抜群の安定感
Tプレーンクランク+サスペンション
さらにライディングモードで変化するのはエンジン出力だけではありません。まずはサスペンション。SPORTモードの時は8レベル/9段階でしたが、OFFROADモードでは3レベル。どんな初心者でもわかるくらいに動きが変わります。おかげでちょっとした段差を乗り越える時も衝撃を感じにくいし、小石や枝がゴロゴロ転がるダートでもタイヤがしっかりグリップしてくれます。
スタンディングしてまず感じたのは、シートの両脇を膝の内側でしっかり挟むことで、体がすごく安定するということ。シートが全然滑らないため、好きな位置で下半身を固定することができ、有り余るパワーに体が遅れてしまうことはありませんし、スロットルワークに合わせて上半身を自在にコントロールできるんです。
実際にダートを走ってみると、このTiger1200 GT PRO、めちゃくちゃ安定しています。以前某メーカーの同クラスアドベンチャーに乗った時はリアタイヤがかなり滑ってすごく高い頻度でトラコンが介入していたのを覚えているのですが、今回はほとんどトラコンの出番がなく、もちろんタイヤが滑ることもありませんでした。あんまりグリップするものだからわざとコーナー出口でアクセルを多めに開けてみたり、滑りそうな路面を選んで走ってみたりしたのですが、全然滑りません。
これはTプレーンクランクによるトルク特性だけでなく、サスペンションの優秀さゆえではないかと思います。オフロードモードにしてダートを走っていると、前後ともにほとんど跳ねず、常にタイヤがしっかりと接地している感触がよくわかり、とても安心できるんです。
また、今回お借りした車体には純正オプションの「ヒーター付きライダーシート(低シート高)」(-20mm)が装備されていたのですが、なんと身長175cmの僕でもこれだけ足がしっかり着きました。この安心感は他のモデルでは味わえません。深い轍ができている時や、下り坂、大きめの石が落ちている時など、スピードが出しづらい時に足がしっかり地面に着くと本当に安心感が違います。
シートは取り付け方法で2段階に高さを変えることができます。これによってリッターアドベンチャーモデルとは思えないほど低いシート高を実現。跨ったまま足で地面を蹴ってバックする、なんていう芸当もできたりします。
やはりTiger1200 GT PROはオンロードとオフロードのバランスが最適で、どちらも楽しんで走ることができました。
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