トライアンフモーターサイクルズジャパンが主催するアドベンチャーモデルを対象としたライディングレッスンイベント「TAX(TRIUMPH ADVENTURE EXPERIENCE)」。今年は東日本(7/17)と西日本(7/23)に分けて開催。今回は東日本会場をの様子をお届け

東日本の会場に選ばれたのは現役の採石場である人の森株式会社 華厳工場。オフロードレースファンの間では「ケゴンベルグ」と言った方が馴染みがあるだろう。今回の講師の一人である石戸谷蓮が主催するハードエンデューロレースCROSS MISSION〜ケゴンベルグ〜が開催された場所だ。

都心から1時間ほどでアクセスできる神奈川県厚木市内とは思えない最高なロケーションで、思う存分トライアンフのアドベンチャーモデルを堪能できる貴重な機会となった。

なお、西日本会場は三重県いなべモータースポーツランドで、こちらも名古屋駅から1時間圏内。全日本エンデューロ選手権やモトクロスレースで使われるだけでなく、広大なフラット広場や林間コースを内包していることからアドベンチャーモデルでの走行にも適している。

初心者から上級者まで満足できる
納得の講師陣

東日本会場で講師として登場したのは、石戸谷蓮、和泉拓、木村吏の3名。石戸谷はエンデューロIAライセンスをもち、オーストリアのハードエンデューロレース・エルズベルグロデオに挑戦している。トライアンフでは林道ツーリングイベントのコースをプロデュースするなど、タイガーの扱いにも長けている。また、和泉は自身でもさまざまなアドベンチャーバイクを所有し、テネレ700でハードエンデューロレースを完走するなど、大型オフロードモデルを扱うスキルには定評がある。木村は現在ハードエンデューロG-NETに参戦しているが、過去にはBMWの世界大会GSトロフィに出場したこともある。

いずれもエンデューロを中心に活動してはいるが、ツーリングやアドベンチャーモデルの経験も豊富なライダーたちだ。

和泉のデモ走行。まるで250ccのオフロードバイクのようにリアをスライドさせて迫力満点のデモを見せてくれた。ではそんな百戦錬磨のライダーたちを講師に迎えて、どんなスクールが行われたかと言うと、実に基本的かつ実際的な内容だった。

参加者のレベルはさまざまで、普段からダート走行に慣れている人から、ほとんど初めてな人まで。まずはどんなライダーでもしっかりマスターすべきだが、やってみるとなかなか難しいブレーキングのレッスンが行われた。直線で指定された速度まで加速してからブレーキをかけてABSを利かせて停まる練習だ。普段のツーリングだと余裕をもって停まるため、ABSの介入自体なかなか体感することはないが、オフロードで意図的にフルブレーキングして、ABSが介入する感覚を知っておくことで、オンロードツーリングをする際でもさまざまなアクシデントに対応することができるようになり、安全性がグッと高まるのだ。

上級者の中にはスタンディングのままフルブレーキングして停まる練習をする人も。

同会場でフリー走行イベントを行った際のYouTube動画が話題になり、その中に登場したヒルクライムに「ぜひチャレンジしたい」という意見が上がり、下見へ。実際に下から見上げて「うん、今日はやめておこうかな……」。

アドベンチャーバイクで林道に入った時に一番心配なUターンの練習。ちょっとしたバンクを使うことで道幅の狭いところでもバイクの向きを変えることができる。人がたくさんいるレッスンの場でテストできれば本番でも安心だ。

タイガーシリーズは転倒した際にリアタイヤが浮いてしまい、引き起こしに少しコツがいる。しかし腕の力だけに頼らず、腰を使って起こせば腕力や握力のない人でも一人で引き起こしができる、という木村の実践的レッスン。

絶景のケゴンベルグ会場内をちょろっとツーリング。滅多に走ることができない貴重な機会を存分に楽しんだ。

冷房にペットボトルにアイス
ホスピタリティ溢れるトライアンフのイベント

今回のイベントは基本的にトライアンフのタイガー、もしくはスクランブラーオーナーが対象だったが、トライアンフオーナーでなくとも各会場抽選で4名まで最新モデルであるタイガー1200の試乗車を借りて参加することができた。

トライアンフモーターサイクルズジャパン社長の大貫陽介氏も来場し、トライアンフのアドベンチャーシリーズにかける熱意が感じられた。

講師として参加した石戸谷蓮。ライダーだけでなくイベンターとしても活躍しており、会場となった株式会社人の森 華厳工場とのパイプ役も担った。

実際にライドする前に石戸谷からオフロード走行時の注意事項を座学で学ぶ。スタンディング時のフォームなどをちゃんと理由を交えて説明してくれる。

ほとんどの参加者が自走で参加するこのイベントでは至れり尽くせり。タイヤについても「空気圧を落としてください」ではなく、「空気圧を落とさせてもらいます」というスタンス。スタッフが手分けして参加者の車両の空気圧を1.6kgfまで下げていく。もちろん終了後には元に戻してくれる。

トライアンフはアドベンチャーモデルのタイガーだけでなく、スクランブラーでもオフロードを楽しむことができる。前日まで雨が降っていたが、会場となった人の森株式会社のスタッフが水溜りを吸い取り、砂利を撒いて重機で道を仕上げてくれたおかげですっかりベストコンディションに。

ちょっとくらいの水溜りは気にならない! だってオフロードライダーだから!

お昼休みに美味しいお弁当が出るのは、もはやアタリマエ。でもスクール会場に冷房をガンガンに効かせたハイエースが待機していたり、氷水が詰まったクーラーボックスにペットボトルが浮かんでフリードリンクだったり、コース脇で休憩中に「よろしければアイスをどうぞ」と凍らせたチューペットが出てくるバイクイベントが、かつてあっただろうか……。

参加された植木さん(写真左)と清水さん(写真右)に感想を伺った。

植木孝圭さん
「僕はタイガーエクススプローラーとトリッカーの2台持ちでオフロードバイクを楽しんでいて、トリッカーではコースでフリー走行やちょっとしたイベント、タイガーでは林道を含んだツーリングがメインです。これだけ都心からもアクセスの良い立地でイベントをやってくれるというのが、本当にありがたいですね。僕は前回のTAX(2018年 山梨県イーハトーブの森)や長野のTAC(2020年 TRIUMPH ADVENTURE CHALLENGE)にも参加しているんですけど、それだと現地まで行くのが一つのイベントになっちゃうので……。この会場も初めて来たのですが、ロケーションも最高ですし、雨続きだったのにとても走りやすくて良かったです」

清水延幸さん
「僕は普段は他メーカーのアドベンチャーモデルに乗っていて、今回は新型タイガー1200をレンタルさせていただき、イベントに参加しました。旧型にも乗らせていただいたことがあったのですが、それに比べてかなり軽くなっていてヒラヒラ感を感じられました。あとライディングモードが選べるのが面白いですね」

このように、トライアンフがオフロードにかける温度は、とても高い。今年モデルチェンジした新型タイガー1200と合わせて、引き続き注目していきたい。