いま、バイク業界はアドベンチャーブームがきている。国内外のメーカーから様々な小〜大排気量のアドベンチャーモデルがラインナップされていて、CRF1100L AfricaTwinやTenere700、KTMアドベンチャーシリーズなどを林道だけでなく、オフロードコースで走らせる遊び方をするユーザーが増えてきている。しかしそういった遊び方をしているユーザーはまだ少数派で、ほとんどのユーザーはアドベンチャーモデルをツアラーのように乗っている。
これは、アドベンチャーの世界に漠然とした憧れがあってアドベンチャーモデルを購入したものの、怪我のリスクや知識の少なさ、一緒に行く人に巡り会えないなどの理由から二の足を踏んでいるユーザーが多いことに起因するのだろう。
しかし「Tigerで一緒にオフロード遊びをしよう!」と言ってくれるお店が、トライアンフ浜松だ。そんなトライアンフ浜松がこの度、移転リニューアルを果たした。
スーパーカブでトレーラーを引っ張り
モトクロス場に通った林代表の少年時代
トライアンフ浜松を運営する株式会社モトフィールドハヤシ代表取締役社長・林忠司氏は
「私は三重の田舎で生まれ育ち、兄が高校の通学用に買ってもらった原付バイクを庭で乗り回して遊んでいるような子供でした。私が二輪の免許を取れる16歳になる頃、世間は三ない運動(高校生に二輪免許を「取らせない」「乗せない」「与えない」という社会運動)全盛期で普通の高校ではバイクに乗ることができなかったため、工業高専に進みました。スーパーカブに自作のトレーラーをつけて、それに中古で買ったRM125を積んでモトクロスコースに走りに行くくらいオフロードバイクに夢中でした。その後、CB750Fに憧れて大型免許をとって、ツーリングの楽しさも知り、大きな怪我も経験してバイクの危なさも知りました。
卒業後、バイクの仕事がしたくて浜松のメーカーに就職しましたが、希望の部署に行けず、5年ほど勤めて退職した後、バイク屋さんでの修行期間を経て、30歳の時に妻と二人で小さなバイクショップを立ち上げました。それからトライアンフと出会い、25年間が経ちました。
この移転リニューアルを機にこれまで以上にお客様に愛され、この浜松になくてはならないお店になれるよう頑張っていきたいと思います」
と自身の出自がオフロードバイクに深く繋がっていることを語ってくれた。
トライアンフ浜松の新店舗は、1階に車両展示エリア、2階にラウンジエリアを持つディーラーとして通常の機能を持つ本館のほかに、まるごとアドベンチャーモデル専用エリアとなる別館を用意。このことからもトライアンフ浜松がいかにTigerシリーズに力を入れているかがわかるだろう。もちろん、バイクだけでなくTigerシリーズや関連グッズも多数展示されている。浜松にはTigerファンが根付いているのだ。
トライアンフの3気筒エンジンと、新型Tiger1200の魅力
別館となるアドベンチャーモデル専用エリアには新型Tiger1200が展示されていた。
「トライアンフは今年で120周年を迎えるイギリスの老舗メーカーです。1983年に一度生産を中断しているのですが、1990年に日本のメーカーを視察し、その技術や設備を学んで復活。この時、それまで2気筒エンジンでやってきたトライアンフが3気筒で再スタートしたのには、ちゃんと理由があるんです。やっぱりイギリス人って内燃機関を自分たちで作ってきた人たちだから、どういうレイアウトが優れているのか、ちゃんとわかっているんですよね。
僕がずっとトライアンフを扱っている一番大きな理由は、トライアンフが気持ちの良いエンジンを作っているからなんです。例えばトライアンフの代名詞でもある3気筒の120度クランクはピストンの1つが上死点、下死点にいる時に、他の2つがほぼ真ん中に近いところに位置します。その結果、直列4気筒などと違ってクランクシャフトが抵抗少なくフリーに回転できるので、2000回転だろうと3000回転だろうとアクセルを開けた時のレスポンスがすごく心地良く、トルクも強力。しかもイヤなドンツキが超少ないと言うオマケ付き! 初めて3気筒のサンダーバードに乗った時に『なんでこんな気持ちよく回るの?』と驚いたことを今でも覚えています。
さらに現行型のTiger900から採用され、新型のTiger1200にも搭載されているTプレーンクランクは、またちょっと味付けが異なるのですが、トルクが更に強くなっていてダートでのトラクションはすごく良い。エンジン以外にもショーワの電子制御サスが本当に具合が良くダート走破性がアップ、ちょっと車高やシート高は高いですが大きく軽量化されていますし、ツインラジエーターでダクトが工夫されているおかげで、熱がまったくライダーに当たらない。これなら夏でも乗ろうという気持ちになりますね」
と林代表はトライアンフの3気筒エンジンとTiger1200の魅力を熱く語ってくれた。
また、リニューアルのプレオープンイベントに合わせてTiger1200の納車式が行われた。納車されたオーナーの一人、紅林和雄さんは
「Tigerとの出会いは僕が大型免許を取得して、『何かいいバイクないかな?』と探してショップ巡りをしているときに林店長にお会いしたことがキッカケでした。2008年式のTiger1050から2016年式のTiger EXP、そして今回のTiger1200と3台目のTigerです。今まで所有していたTigerは重くてなかなか気楽に林道に行けるものではなかったのですが、新型はTプレーンクランクのパルス感のある出力特性と、軽量化、そして排熱の良さなどの点から林道遊びができそうでワクワクしています!」
とのこと。FASTHOUSEのジャージを着ていることからもわかるとおり、250ccのバイクでオフロード遊びも楽しむライダーだ!
Tigerミーティングにジャンプ台を設置!
トライアンフ浜松ではTigerシリーズの魅力と可能性を伝えるべく、積極的にオフロード体験イベントを企画している。その代表的な事例が、Tiger800がデビューした2011年から3年連続で開催したタイガーミーティングだ。
静岡県の八木キャンプ場を使って、キャンプとアドベンチャーバイクを同時に楽しめるTigerシリーズのミーティングイベントを主催。その中で林代表は「タイガーを使ってジャンプ台を飛ぶ体験をしてほしい」という思いからホームセンターで足場板を購入、溶接して特設ジャンプ台を製作した。ジャンプ初体験の初心者でも楽しめるように高さを調整できるように設計し、多くのライダーに好評だったとのこと。
このタイガーミーティングはやがてトライアンフジャパンが主催するアドベンチャーミーティングへと姿を変え、ふもとっぱらキャンプ場でも開催。規模が大きくなるとともに、次第にオフ色が薄まっていったことから、トライアンフ浜松の活動はオフロード走行イベントやレースへと特化していった。
現在では全国規模のクロスカントリーレースWEXのワイルドクロスパークGAIAステージなど、比較的アドベンチャーバイクでも走りやすいレースを選んで有志でエントリーしている。