例年開幕と言えばサンフランシスコ近郊のハングタウンが定番だったが、今年はフォックスレースウェイで開催。下田にとっては地元であり勝手知ったるレーストラックである。天候は20度前後の過ごしやすい晴天、サンド質の路面はこれ以上ないベストコンディションに整えられた。
下田は今年前半のスーパークロスにおける不調を持ち込まないように、丹念に調整を行ってきた。さらに、今シーズンはこのタイミングでコーチも変更、元トップライダーのニック・ウェイを迎え入れている。アマチュア時代から苦楽を共にしてきたカーベラ・ヤニングコーチとのタッグはおなじみだったが、下田はさらに上を目指すために、変化を欲していた。
9番手、らしくないタイムドクオリファイ
AMAプロモトクロスは、まずプラクティスから始まるのだが、そのラップタイムが予選の結果を兼ねている。「タイムドクオリファイ」方式だ。ベストラップ順にグリッドの優先権が決まるのだが、プラクティスということもあり、なかなかベストタイムを狙えるものでないところに厄介さがある。わずか15分を2本、だいたいこのフォックスレースウェイでトップ陣が2分15秒程度だから、6ラップ×2。特にこのフォックスレースウェイはタイムを狙いづらかったのか、昨年のチャンピオンであるジェット・ローレンスもトップのセス・ハマカーから1秒落ち。下田にいたっては、2秒落ちで9番手での通過。
この結果を受けて下田は9番目にグリッドをチョイス。センターからイン側へ寄ったところを選び、奇しくもライバルであり最大の敵ジェットと隣り合わせとなった。
強い下田が帰ってきた
いよいよ迎えたモト1。下田丈の表情は心持ち硬く、周りのライダーよりも早めにヘルメットをかぶり自分の世界に入っているように見えた。懸案のスタートは集団に飲み込まれてしまい、オープニングラップで10番手と中盤より後の追い上げ展開となる。パッシングに手間取る姿が見られた前半だったが、中盤の加速は凄まじく、この追い上げ中にで下田はファステストラップを刻んでいる。終盤までに4番手まで順位を上げ、前を走るRJ・ハンプシャーが見え始めたところでレースは終了。ホンダのローレンス兄弟が1位2位を分け合う結果になった。
続くモト2、スタート2コーナーあたりで激しく周囲のライダーとぶつかりながらも7番手あたりでスタートを死守。ハンター・ローレンスを従えながら、2番手まで浮上。激しく二人は争うものの、このヒートは下田に分があるように思われた。安定感のある走りでハンターを退け続けていたが、ラストラップに周回遅れが下田のラインをふさいでしまい、この隙にハンターが下田をパス。レース後、いらだちを隠せない表情を浮かべた。実に惜しい流れではあるものの、4-3で総合順位は3位。開幕からポディウムの一角をゲットしたのだった。
下田は「まぁまぁ、よかったレースだったと思います。出遅れてしまって中盤からペースを掴んで追い上げるというのは去年のシナリオと同じで課題が残ります。やはり、スタートでしっかり前にでることが大事だし、タイムドクオリファイが悪いのもよくないところです。これでは1位には届かないので。
モト2は、ラッパー(周回遅れ)に絡んでしまって惜しかったのですが、あれもハンターを遠ざけられていれば、問題なかったはずです。
ジェットは、このレースも飛び抜けて速かったですね。ハンターも速いですが、勝負できるスピードだと感じました」とコメント。自身「テリブル」と表現するスーパークロスシーズンの悪結果から、AMAのコメンテーターは「下田がカムバックした」と表現する。不調のスーパークロスは完全に振り切れたといっていいだろう。1週間後のハングタウンに向けて、調整に磨きをかける。