KTMの本社から、5月5日に強烈なプレスリリースがお披露目された。“Something is coming: are you ready to get serious?”と題され、SXシリーズ(モトクロッサー)に対しての新商品が予告されている。こちらティザー写真をみるに、FI搭載の2ストロークSXであることは、もはや明白。その背景などを紐解いていこう。

海外で盛り上がるT“B”I熱

インジェクターから噴霧される混合気は、キャブレターとは違う性質をもつとメーカーの開発者から受けたことがある。この話は、そのほかのメーカーにもっていくと「そんなことはない」と一蹴された経験があるので、本当か嘘かはわからない。ただ、4ストロークのFIにおいて、この混合気こそがキャブとの感触の違いを生んでいるのでは無いか、という意見を散々聞いている。スロットルボディの上から吹くより、下から吹くほうがいいとか(たとえば、CRFのモディファイで下吹きのKTM用スロットルボディを流用するなどが横行した)、一度なにか壁面にあてるべきだとか(スズキRM-Z250がとった施策がまさにコレ)、いろんな話がある。霧化性能が優れているのがキャブレターなのだ、という話もあったけど、さすがにこれは眉唾だろう。インジェクターは歩みをとめることなく進化し、霧化性能に関する研究論文も多く、日々進化を遂げている。

2ストロークの場合、まさにこの混合気の具合こそがライダーが感じるフィーリングを大きく左右される原因で、TPIはKTMが2ストのFI化を進めるにあたってみつけだしたこの「混合気の質」におけるブレイクスルーだったのだという。TPIのプロジェクトは、2004年からスタートされており、直噴や、加圧式など様々なタイプがテストされてきて、最終的に2010年代にたどり着けた答えがTPIだったのだ。

ところが、このTPIをキャンセルする動きが海外で存在している。

日本での販売実績はないが、正規代理店のアズテックでも購入が可能なTPI用GET。つまり、ECUなのだが、このECUはTPIの掃気ポートインジェクターをキャンセルして、スロットルボディとエンジンの間に赤いアルミブロックを挟み込み、ここから燃料を噴射するシステムが付属する。当初はECUだけ販売していたそうだが、現在はこのスロットルボディへの変換キット込みのみの販売にシフトしており、同社ではスロットルボディへのFI化へ確信をもっているようである。

同社がリリースするパワーグラフによると、特に中高速がなめらかにつながっているのがわかり、ピークパワーは1000回転ほど下へ移動。その上でパワーはだいぶ上回っているとの報。GETはイタリアの製品だが、北米でもやはりSURE SHOTという製品が出回っており、これらはユーザーの間で「TBI」T=Throttle、B=Body、I=Injectionと呼ばれている。言うなれば、4ストと同様のコンベンショナルなFIに回帰したということだ。散見されるその理由は、様々。焼き付きしづらくなる、レスポンスがよくなるなどなど。