2010年、熊本県御所オートランドで伝説のハードエンデューロレースが開催された。当時まだハードエンデューロを知らなかった人でも名前だけは聞いたことがあるだろう、「G-IMPACT」だ。優勝は日本人唯一のエルズベルグロデオ・フィニッシャー、田中太一。準優勝は水上泰佑。現在の全日本ハードエンデューロ選手権G-NETの歴史はここから始まった。そして、それから12年を迎えようとする2021年12月、特別選抜戦として行われた「BIKEMAN Presents Ultimate Enduro Cup」は、このG-IMPACTのコンセプトを受け継ぐ記念すべきレースだったのだ。

任せられるのはこの男しかいない
九州男塾・塾長 藤田貴敏

G-NET事務局代表を務める栗田武は、かねてから藤田に「九州でG-NETレースをやってほしい」とアプローチをしていた。藤田はISDEにも出場経験をもつ、Wonet(ウォネット)の時代から西日本のハードエンデューロ文化を牽引してきたライダーで、2011年、2013年のG-NETチャンピオンだ。2019年にはHIDAKA ROCKSで優勝も掴んでおり、現在でもトップライダーとしての実力を持っている。

この藤田こそ、2010年のG-IMPACTのコースを作った中心人物。そして、当時一緒にコースを作り上げたダカールライダー・池町佳生も藤田を支え、2012年G-NETチャンピオンの金子岳も協力し、今大会のコースは作られた。

デッキーランド駐車スペースからの眺め。愛媛の内子町の山奥、最後はGoogleマップでも道がなくなるような林道を通って、たどり着く。

会場となったのは四国、愛媛県喜多郡内子町の山コース、通称「デッキーランド」。藤田はこのレースの開催が決まった2021年2月から10ヶ月の間に30回以上、自宅のある北九州からこの地に通い、開拓を進めてきた。西日本のボランティアスタッフも多数が開拓を手伝い、決して広くはない敷地の中に超難関コースが完成した。

「昔やったG-IMPACTのような一発のお祭りレースをやりたいな、とずっと思ってました。ちょうどこのデッキーランドなら開拓すればすごく面白いコースができそうだったので、上位20名だけのレースならできるよ、と栗田さんと話を進めていきました。100台のライダーが一斉に走るレースも大切なのですが、そうするとどうしてもコースに愛を込めないといけなくなる(設定が甘くなる)んです。ですが、トップ20台の一周レースで、しかも招待にしてしまえば、本当に実力勝負が見られるんですよね」と藤田。